続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

伸合いと的付けは表裏一体

2010年10月27日 | 積み重ね
私は会に入ったとき、的を満月につける。

これは師匠から受け継いだ的付けの方法で、「その方が弓手を押し開く余力が残るから」というのが理由である。

したがって、そこで終わりではなく、そこから弓手をさらに押し開き、ちょうど的が新月になる頃に離れが出ると、弓手に誘われて離れが生じたことになり、弦に矢が乗って矢勢が大変よい。

ちなみに、この方法で引くと会に入って離れまでが7秒くらい。会の長さとしてもちょうどよいように思う。

しかし、実際にはこのように的をつける人は少ないらしく、ほとんどの人は、会に入った瞬間から新月に入り、そこから弓手を動かさずに伸合い、離れまで至る。

あるいは、半月か満月につけ、そのまま伸合い、離れの瞬間に的の後ろ側に弓手を振り込むことで矢を直進させる。

いずれにしろ、的付けと伸合いの関係は深く、どちらか一方だけ研究しても中りは出ないものである。

※矢どころの高さを、矢摺り籐などを目安にして調整することを的付けと呼ぶ節があるが、これは間違いである。矢の高さはあくまで矢の水平具合で見るべきであり、極言すれば身体で覚えるのがよい。(修正してもキリがないため)

風船のごとく

2010年10月21日 | 積み重ね
弓で使う筋肉が伸筋(しんきん)であることはよく知られたことだが、伸筋を実際に使って引いている人というのは意外に少ない。

私が思うに、これはイメージの問題だろうと思う。つまり、弓を引くイメージを頭で思い浮かべたときに、弓を「引っ張ってくる」イメージなのか、それとも、弓を「押し開く」イメージなのか、という違いである。

伸筋のイメージは、明らかに「押し開く」イメージである。

言葉にしてしまうと、弓手を押すのか?胸を開くのか?というように、部分的なイメージを思い浮かべてしまうが、正しくは「身体(からだ)で押し開く」というイメージを持つことが重要である。

これを説明するときによく言っているのが、「自分の身体を風船と思って引く」ということだ。

「身体風船」に空気を入れていくように打起す。さらに空気を入れて大三を取る。さらに膨らませて爆発させるというのが引分けである、と。

このイメージは、呼吸法と相まって、本当に自分が風船になったかのように感じられるくらい、しっくりくるイメージと思う。

特に、会に入ってから伸び続けるということはなかなか実感しづらいが、この風船のイメージであれば、容易に実感できる。

一点、気をつけるとすれば、このイメージだけで引くと、どうしても妻手(利き手)が強くなってしまうので、そこは弓手に強く空気を入れるつもりで、あくまで弓手先行を意識することが重要である。

伸筋だけで行う伸合いは、本当に四方八方に飛び出さんばかりの張り詰め感を感じることができ、そこから生じる離れは本当に鋭く、何とも力強いものである。

正しい角見の利かせ方③

2010年10月16日 | 積み重ね
角見シリーズの最後として、次のことを考える。

「大三で柔らかい手の内に蓄えられた圧を、保ちながら会まで引分けるにはどうすればよいか?」

結論から言ってしまえば、身体の詰合いが緩まなければ、手の内の圧も抜けることはない。

したがって、大三で圧を蓄えたのち、手の内を意識するのではなく、身体の詰合いを意識して引分ければよいのである。

これを詳しく見ていこう。

まず、前回の復習であるが、なぜ柔らかい手の内で圧が蓄えられるのか?というと、大三に向かう際に手の内の角見(親指付け根の腹)が弓の角見に引っかかり、さらに大三に向けて握りが回るからであった。

このときに大事なことは、角見にひっかかった後、「さらに握りが回ること(接点は動かずに)」である。

ところが、手先で角見を利かせる人は、ここで「角見に力を入れていく」あるいは「親指をさらに突っ込み、手の内を固める」ことで、角見に圧がかかったような状態に持っていく。

これはまさに手先で角見を利かせているに過ぎない。

そうではなくて、前回、弦で握りを回して圧を感じてもらったように、「握りを回すこと」=「弦を弓手の角度まで引き倒すこと」が重要なのである。

これを大三で行うならば、「弦道をしっかりと身体に近づける」ということになる。

では、大三で蓄えられた圧をどのようにして抜けないようにするのか?

それは「さらに握りを回す(接点は動かずに)」ことによって、である。

このために、引分けは弓手を「押す」のではなく、「開いていく」のである。弓手を開いていくことで、弓手と弦の角度がより小さくなり、会に入るときにはほぼ並行(感覚的に)になる。

このように、角見を動かさずに(ねっとりと)、握りを大三から会に向かって回していくことで、いわゆるネジレが生じ、それが角見の圧となるのである。

これこそ自然の角見であり、決して手首や手指の力によって角見を利かせるのではない。

正しい角見の利かせ方②

2010年10月03日 | 積み重ね
では、手先ではなく身体で角見を利かせるにはどうしたらよいのだろうか?

身体で角見を利かせるポイントは二つある。手の内を柔らかく保つこと、そして大三から引分けにかけて手の内の圧を高めていくことである。

なぜ圧が重要かといえば、圧が感じられないから手先に力を入れる必要が出るのであって、圧が感じられていれば手先に力を込めずとも自然に力が掛かっている(角見が利いている)ことになるからである。

具体的に見ていこう。

まず、手の内を柔らかく保つには、イメージを変えることが重要である。

そこでちょっと弓の握りに手の内を合わせて、右手で弦を持って、手の内の中で握りをくるくる回してみてほしい。

完全に手の内を脱力したならば、当然、握りはくるくると簡単に回るだろう。また、手の内を固めて角見に力をこめて握りを持つと、握りは回らなくなるはずである。

そこで、今度は手の内を柔らかく保ち、ねっとりと弓の握りに巻きつくようなイメージで握りを持ち、回してみてほしい。

このとき、打起しの角度(手のひらに対し弦が90度に立つ感じ)から、ゆっくりと会の角度(手のひらに対し弦が0度に寝る感じ)になるまでまわしていくと、自然に角見に引っかかりそれ以上回らなくなる角度が見つかるはずである。

そこからさらに弦が会の角度になるように回していくに従い、角見のひっかかりに任せるように、ねっとりと圧を掛けていく感覚を感じられればOKである。

このイメージで大三を取ろうとすると、大三の段階で結構な圧が手の内にかかるはずである。

あとは、この結構な圧に負けないように、詰合いを維持したまま引分けてくればいいわけだが、この詳しい話は次回に譲ることにしよう。