続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

どの方向に伸び合えばよいか?①

2009年04月27日 | Q&A
以前、「伸合いの感覚」の中で、以下のようなことを書いた。

「・・・伸合いは手先を伸ばすことではなく、引き分ける(下ろしてくる)力を背中に連動させ、縦線を効かせつつ胸を開いていくこと・・・」

今回は、上記について少し詳しく説明したい。

ここで最も重要なことは、2点である。それは「背中と連動させる」ということと「胸を開いていく」ということだ。

まず「背中との連動」について説明していこう。

言葉で説明するより、実際に経験してもらった方が早いと思うので、以下のことをやってみてほしい。

立っても座ってもよいので、腕をだらんと下げた状態で肩だけを後ろに回してみよう。いわゆる準備体操で行われる「肩回し(後ろ)」である。

そして、肩が後ろに回って、一番下がったところで止めよう。つまり、二巡目の回しに移行する直前で止める(要は、一番肩が後ろであり、下がったところで止める)。

このとき、胸を張らずあくまで自然体で、背筋、首筋を伸ばし、顎(あご)を引く。ちょうど、肩の下がりを背筋、首筋の縦線で支えるようなイメージがよい。

どうだろう?背中の肩甲骨の辺りにある筋肉が張られている感覚があるだろうか。もし、背中の張りが感じられるようであれば、そのまま力を入れずに(入っていればリラックスして)、両腕をゆっくり上げ、徒手で会の形をとってみよう。

おそらく、初めて経験する方は、えらく腕が下の方から伸びている感じがするだろう。しかし、これこそが正しい会の形である。

この形で会に入るためには、大三で既に背中と連動していなければならない。打起しから徐々に弓を身体に近づけるとともに、弓手を詰合い、両肩根を落とす。

このとき、肩回しの感覚を思い出しながら、背中の筋肉を意識し、その張りを確認するのである。

大三で背中と連動できれば、そこからの引分けは背中を意識しながら、下ろしてくることができるはずである。徐々に会に入るにつれて、背中、両腕下筋(二の腕の下部)、手首、手の内が一本になっていくのをぜひ体験してもらいたい。

注意)
背中の筋肉は普段あまり使われていない、いわゆる深層筋である。したがって、稽古をする場合は、細心の注意を払いながら行うことはもちろん、決して強い弓では稽古をしないようにお願いしたい。私は過去二度も無理な稽古で背中の筋を痛め、半年以上の休止を強いられている。(最初にやったときは1年半以上、まともに弓を引けなかった)

自灯明、法灯明

2009年04月20日 | 極意探求
会に入り伸び合っていると、いろいろと雑念が沸いてくる。

「もう離した方がいいだろうか?」「もっと押した方がいいだろうか?」「本当に当るだろうか?」と。

初級者の方であれば、先生に習ったことが頭でめぐり、不安と後悔の中で伸びあうことが多いのではないだろうか?

どうすれば、こうした雑念を取り払い、一意専心、伸合いだけに集中できるだろうか?

それにはまず「自分」に意識を向けることが重要である。これは、以前から説明している、「意識を向け、ただただ観る」ということである。

前記の「なんとかしなければ」というのと何が違うかといえば、頭の中にある「考え」に意識を向けるのではなく、実際の「身体」に意識を向けるというところが全く違う点である。

身体をただただ観察するのであって、それに対し批評したり(頭)、良し悪しの評価をしたり(頭)する必要は全くない。

そうではなく、自分の身体をまるで他人の身体であるかのように、ただただ観るのである。

初めのうちは、身体全体に意識を向けるのは難しいだろう。なので、例えば物見を入れて定まった胴造りなど、ポイントを決めて観るようにするとよい。

胴造りなどは、物見を入れてから打起して離れるまで、三重十文字の規矩(きく:形)が不動かどうかを観察するとよい。(悪くても後悔はせず、観察し続ける)

これに慣れてくると、段々自分の身体が、まるでオートメーションで動いているような感覚にすらなってくる。

さらに慣れてきたら意識の範囲を広げていこう。

例えば、前後の立ちの射や審査員、あるいは観衆や射場に飛んでくる鳥など、段々と「自分」から外の世界(これを「法」(ほう)と呼ぶ)へとその意識の範囲を広げていく。

このような稽古を実践することで、弓道がただの武術から立禅へと昇華されるのである。

伸合いの感覚

2009年04月16日 | 極意探求
それでは具体的な伸合いの方法について考えてみよう。

これまでの話で、伸合いは手先を伸ばすことではなく、引き分ける(下ろしてくる)力を背中に連動させ、縦線を効かせつつ胸を開いていくことだということを説明した。

これは動作として、とても重要な流れであるので、ぜひ何度も稽古を繰り返してほしい。

実は、もう一つ重要な点がある。それは「圧」を逃がさないということだ。これは動作というよりは、完全に内側の世界、感覚の世界の話である。

逃がさないというより、むしろ「圧」を高めていくといった方がよいかもしれない。いずれにしろ、大三から会、会から離れにかけて、一寸たりとも「圧」を逃がしてはならない。

「圧」を逃がさないようにするにはどうすればよいだろうか。

まず、常に「圧」に意識を向け、それを感じている(モニターしている)ことが重要である。これは当然のことで、「圧」が感じられなければ、それが抜けてもわからないからだ。

そして、もう一つ。動作をとめない、ということである。つまり、背中と縦線の効かせによる胸の開き、肩の落とし、これを残身に永遠と向けて続けていく、ということだ。

これは以外にできていない人が多い。初心者であれば手先の伸びが限界に来ることにより、伸びが止まってしまうこともあるだろうが、中上段者であっても、会に入るとぴたりと伸びが止まってしまう人を多く見る。

動作にばかり意識が向けられると、こうなることが多い。なぜなら、動作としては会で完全に止まったように見えるからだ。

しかし、実際には伸び続けている。それが手の内に蓄えられる「圧」の高まりとして表現されるのである。

会に入ったら、この「圧」にこそ意識を向け、離れが発動するまで「圧」を高めていくことが重要である。

縦線で支える

2009年04月14日 | 極意探求
前回、重いものを持ったとき「肩の力まで抜くと、支える力はどこに移動するか?」という問いを投げかけた。

答えは「背中に移動する」である。

ぜひこの感覚、つまり「重いものを背中で持つ感覚」を味わってほしい。これこそが勁力の体現である。

これは弓道においては、大変大事なことを意味している。つまり、手先の力を抜き、腕の力を抜き(何度もいうが、詰合いは抜けないように)、さらに肩を落としきると、それらにかかる力は、背中に集約する、ということだ。

このことは、これまで説明してきた「下ろす引分け」と大変相性がよく、下ろす引分けを正しく行えば、自然に背中と連動するということになる。

ここから、さらに深く考えてみよう。

では、背中を支えているのはどこか?

答えは、下半身であり、背骨であり、首筋である。このいわゆる「縦線」がしっかりと伸びて(詰め合って)いることによって、背中ががっちりと支えられるのである。

こう考えていくと、勁力を使っているかどうかで、見える姿は同じであっても、その中身は全くの別モノになってしまうということがよくわかるのではないだろうか。