続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

勁力を扱うコツ②

2009年03月22日 | 極意探求
今度は重いものを持つ場合を考えよう。

この場合も前回同様、物を持つ手と物との間に感じられる「圧」に意識を集中させる。これも、手先、腕の力を抜くほどに「圧」が感じられるはずだ。

このとき、もう一つ大事な感覚に意識を向けて欲しい。それは、「力が移動する感覚」である。

例えば、重いかばんを片手で持つ場合、当然その力は物を持つ手とかばんとの間に感じられる。そこで、順次、手先、腕と力を抜いていってみよう。

すると、どうだろう?初め、手先にあった力が、手先の力を抜くと腕に、腕の力を抜くと肩に、移動するのがわかろうだろうか。

このとき、当然手先と物との間にある「圧」は残っているのだが、それを支えている場所が、手先、腕、肩へと移動するのである。そして最終的には肩で、物を持つ感覚が得られるはずである。

ここでさらに実験をしてほしい。

では、肩の力も抜くと、その支える力はどこに移動するのだろうか?

解答は、次回にゆずることにしよう。

勁力を扱うコツ①

2009年03月20日 | 極意探求
勁力は実はとても身近な力である。したがって、誰でもすぐにそのコツさえつかめば扱えるようになる。そのコツをご紹介しよう。

勁力を扱うコツ。それは「圧」を意識する、ということだ。

「圧」とはそのまま「圧力」のことであるが、勁力は自分が「圧」を感じることでうまくコントロールすることができる。

たとえば、重い物を横に押す場合を考えよう。周りに何もなければ壁でもかまわない。

重い物を横に押す場合、もちろん両手で物を支え、足を踏ん張り、それを押す。このとき、手に感じられる「圧」を高めるようにするにはどうすればよいだろうか?

もちろん、そのまま力任せに押していっても「圧」の高まりは感じられる。しかし、この場合、実際には腕の「力み」の感覚も相応に強くなり、純粋に手と物との間に生じる「圧」の感覚はにごってしまう。(これをぜひ感じて欲しい)

そこで、今度は腕の力を抜き、手はリラックスした状態で物を支えてみよう。そして、足の踏ん張りと物に体重をかけていく事で「圧」を高めるようにしてみる。

するとどうだろう?さっきよりも「圧」の高まる感覚が鋭く感じられるのではないだろうか?

このとき、腕は、足の踏ん張る力や体重による力を伝える道具に過ぎず、実際に物を押しているのはそれらの力(勁力)である。

当然、腕よりも圧倒的に足の踏ん張りや体重による力の方が大きいので、腕で押すときよりも大きな力で物を押すことができる。

このように、「圧」に意識を向け、「圧」の感覚を鋭く、大きくするようにすると、自然に全身の力、勁力を用いることになるのである。

弓道の勁力は背中で発する

2009年03月11日 | 極意探求
弓道における勁力(総合力)は、背中を中心に発せられる。

これは腕で引き分けることをやめ、肩根から先をリラックスによってしなやかに固め、腕(うで)の重さと胸(むね)の開きによって引き分けることで、初めて得られる力である。

こうして会に入ることで、弓と腕(特に下筋:二の腕の下の部分)、腕と背中が一体になる感覚が得られる。

そして、そこから離れがでるまで、つまり残身に至るまで、背中を使って胸を開いていけば、徐々に勁力が弓(手の内)に蓄えられていく。

このプロセスを「伸合い」と呼ぶのである。

つまり、伸合いのときに生じる「無限に伸びていく感覚」は、腕が無限に伸びているのではなく、肩根が落ち、胸が開き、そこからさらに残身に向かって、弓を押し開こうとする圧がたまることによる感覚なのだ。

これで初心者がしばしば抱える疑問が一つ解消する。

それは「伸び合うほどに緩むリスクが増すのではないか?」ということだ。

腕だけで引分け、会に入り、伸び合えば、当然、腕が伸びきってしまった時点で圧は抜けてしまう。これがいわゆる「ゆるむ」という現象である。

しかし、これまで見てきたように、下ろす引分けにより、勁力を蓄えるようにすれば、会に入ってから残身に至るまで、十分な余力を残すことができる(たとえ腕は伸びきっていたとしても!)

腕ではなく、身体で弓を引くことにより、緩むことを初めて回避できるのである。