電力会社を九つに割った男―民営化の鬼、松永安左ヱ門 (講談社文庫) | |
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17日の「教育学文献講読」。本日は松永安左エ門だった。電力の鬼と呼ばれた男だ。担当は森脇君。講談を語るように実に楽しく説明してくれた。学びとは楽しくなくてはならない。そして自伝に書かれている以上のこともいっぱい調べてきた。だからおもしろくなっているのだ。松永もまた高橋是清同様に波乱万丈の人生を送っている。
何より愉快だったのは松永安左ヱ門が人生訓として語ることはみな自分がしなかったことばかりだということだ。自分でしてきたことを自慢する奴は多いが、自分のようにしてはいけないという教訓を遺したところにこの人の人間としての楽しさを感じた。
また、彼が慶應義塾に行きたいと言った時に親は「後を継げ」と反対したと言うこと。あの時代には学校に行くことは親の願いではなかったことは知っておかなくてはならない。それから彼が就職先を探している時に福沢諭吉は「うどん屋になれ」「風呂屋になれ」「呉服屋になれ」と本人の想定していないことばかり言ったそうな。そうした職業観というのもおもしろい。福沢はあらゆるビジネスチャンスを画策したかったのだろうが、松永安左ヱ門との思惑のずれが可笑しかった。
福沢桃介との関係も興味深い。実におかしなコンビなのだろう。そして、松永が「電力の鬼」で、福沢桃介が「電力王」と呼ばれる妙。
まあ、ご時世にあった人物の紹介でもあったし、福岡と縁のある人間であったこともいい収穫だったね。