仮説4 外国人による強盗が増えたから。 〈検証作業2〉
■法務省と警察庁は、日本にいる外国人の犯罪についてどのような情報を公開しているか?
〈その2〉 法務省(サイト内)の「犯罪白書」(昭和35(1960)年版~21(2009)年版が公開)を使った分析作業
◎まず、戦後2回目の強盗犯罪認知数ピークになった平成15(2003)年の状況が掲載されている「16年版」で、外国人の強盗について調べてみよう。
「1-2-2-4図 来日外国人による事件の主要罪名別検挙件数の推移」の強盗のグラフを見ると、平成6年の約100件から255件に増えている。なんと、約2.6倍!
◆「来日外国人」=警察庁の統計の定義により,我が国にいる外国人のうち,いわゆる定着居住者(永住権を有する者等),在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者をいう。〈犯罪白書より引用〉
※ 「来日外国人」とは要するに短期滞在者のことであり、ほとんどが「観光目的」、その他は「研修」などになっている。それ以外の外国人をこの白書では「その他の外国人」と呼んでいるが、とてもあいまいな呼称なので、ここではそれを「在日外国人」と呼ぶことにする。
しかし、なぜか、在日外国人の主要罪名別検挙件数については、犯罪白書に書いてない。
そこで、「1-2-2-2図 外国人による一般刑法犯の検挙件数の推移(来日・その他別)」を使って推測作業をしてみると…
・在日外国人の一般刑法犯の検挙件数は、昭和60年ごろの約1万7000件をピークに、平成6年には約1万1000件、15年には1万277件までゆるやかに減っている。
・来日外国人では、昭和60年の約2000件から、(平成6年約1万3000件を経て、)2万7258件になり、14倍近くにまで増えている。
・両者を合わせると、外国人の一般刑法犯検挙件数は、約1万9000から3万7535件になり、約2倍に増えている。(一方、日本人でも約41万3000件から約61万1000件になり、約1.5倍に増えている。)
~そこで、強引に、《在日外国人でも来日外国人でも、その年の一般刑法犯検挙件数に対する強盗検挙件数の割合が同じ》と仮定すると~
・来日外国人の強盗の割合・・・平成6年:100/13000×100=0.76% / 平成15年:255/27258×100=0.93%。
⇒在日外国人の強盗犯検挙件数の推定値・・・平成6年:11000×0.0076≒84件 / 平成15年:10277×0.0093≒約96件
・在日外国人の強盗犯検挙件数は、平成6年の84件から、15年には96件になり、約1.1倍に微増している、と推測できる。
「犯罪白書」からの推定・・・外国人(来日:確定+在日:推定)の強盗犯検挙件数(推定)は、平成6年は184(100+84)、平成15年は351(255+96)件となり、約1.9倍に増えている、と推定できる。
※同時期の日本人の検挙件数も、1916件(2100-184)から、3504件(3855-351)となり、約1.8倍に増えている、と推定できる。
なお、日本人の強盗検挙件数に対する外国人の割合は、6年:約9.6%、15年:約10.0%で微増。
平成15年の日本の人口に対する外国人登録者数の割合は、約1.50%(191万5030人/1億2761万9000人×100)。この割合からみれば、15年の強盗件数の外国人率10%は約6.7倍高いとは言えるが、時系列での増加の原因とは関係ない。
外国人も日本人も《ほぼ同じ割合で増えている》のだから、この段階ではとりあえず、《「外国人による強盗が増えたから」という仮説は一部採用(=他の要因に加えて、増加の一因にはなった)》とすべき推定データになったが・・・
・残る検証課題1:未検挙強盗犯の国籍の不明・・・上記は「検挙件数」による推定であり、「認知件数(≒発生件数)」ではないことに注意する必要がある。つまり、強盗が発生・認知した時点では犯人が日本人なのか外国人なのかは確定できないという点である。
強盗の検挙率は平成6年には約80%あったものが、平成15年にはなんと約50%に落ちている。つまり、単純化して言えば、平成15年におきた(=認知できた)7664件の強盗事件のうち、半数ほどはその年には犯人が検挙されていないということ。(詳しく言えば、15年に検挙された強盗犯は、《15年の実行犯の一部+14年以前の実行犯のうち未検挙だった者の一部》だと思うので、実際は、《15年に認知された強盗犯の15年内の検挙率は50%よりもかなり低い》と思う。) 残りの未検挙の約3800件の強盗の犯人が日本人なのか外国人なのかはこの犯罪白書ではわからない。
これより主観的推理 ⇒ おそらく、安定住所のある犯人の場合よりも、《住所不定の犯人》のほうがほうが検挙されにくいだろう。
そうすると、まず、統計上「その他の外国人」(筆者は「在日外国人」と呼び変えている)に入っている「在留資格不明の者」(不法入国者や不法滞在者のことと解釈するが?)については、《犯罪率は高く、検挙率は低い》 のではないかと推測する。
次に短期滞在の外国人の場合も検挙されにくいだろう。「家」がないし、強盗した後すぐに出国すればいいのだから(実際にあっている)。当然、住所不定の日本人も検挙されにくいだろう。 さらに言えば、「永住外国人」でさえ、複数の住所を使い分けられると言われてたり(筆者は未確認)、通名を次々に変える外国人がいることを知ると、《検挙されにくい人たち》に入れざるをえなくなる。(※ですから、治安に関しての観点からは、疑われやすい「通名」使用はないほうがいいと思いますが・・・。)
~次回は、警察庁の公開資料なども調べながら、「残る検証課題」を追求してみる~
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