■日本国民が使う言葉をどうするか? その7 <その1 その2 その3 その4 その5 その6>
・前提:日本国が地球上で将来も安定的に存続できるように、かつ、今以上の国際的貢献・世界的役割を果たすことをめざす場合。
4.日本語(国語)教育と外国語教育について考える その3
前回までの考察で、
(1)今よりも大幅に「国際化」を進めるとしても、英語などの外国語が使える国民は100万人(約1%/人口)もいればよいだろう。
(2)《すべての子供:国民が英語を使えるようにしようとする》のは、膨大な無駄や子どもへの過度なストレス、日本文明の大変質をまねくなど、あまりにも弊害が大きい。
という考えに至りました。(英語産業やアメリカなどの英語使用諸国は大喜びでしょうが…)
そこで、目標を《国際化を推進するために、外国語が使える日本国民を100万人にする》として、今後の外国語教育のあり方を考えてみます。~以上前掲~
(3)小中学校での「日本語教育」と、「日本語を使ってする教育」を大幅に改善する。その2
B.日本語を使ってする教育=授業・学習に日本語を使ってする教育。その1
※日本のほとんどの小・中・高・大学校などで行われているほとんどの授業はこれ。実は「英語授業」でさえ、日本語を使って教えていればこれ。これより「日本語使用教育(授業・学習など)」と表す。
<日本語使用授業の現状(※主に小学校について)>
一部の「研究熱心な教師」を除いておしなべて言えば、すべての日本語使用授業において、《日本語のよき使い手を育てる》という観点から評価する場合は、ほとんどの教師に?がつくような気がします。
※その原因が教師個人にある度合いは少なく、おおむね「戦後の国語教育」と「教員養成教育」の不備・不足にあると思います。簡単に言えば「日本の伝統と日本語についての軽視政策・傾向」が犯人です。
(ですから、日本語軽視の根は深く広く、「改善」の道のりはかなり長期にわたるのではないでしょうか。ただし、国策しだいで改善のスピードはかなり上がるかも…。例えば「TOSS」などの有力な民間教育団体との積極的な連携などを工夫して、「官制研修」の不備・不足を補っていけば…)
<国語科の現状と改善策> その1
●現状(1)
・小(中)学校の国語授業の80%ほどは日本語使用教育(※日本語教育は20%ほど)
教育業界外の方のために、昨年度から実施されている、最新の「小学校学習指導要領」について簡単に紹介します。
1 目標
(1) 目的や意図に応じ,考えたことや伝えたいことなどについて,的確に話す能力,相手の意図をつかみながら聞く能力,計画的に話し合う能力を身に付けさせるとともに,適切に話したり聞いたりしようとする態度を育てる。
(2) 目的や意図に応じ、考えたことなどを文章全体の構成を考えて文章に書く能力を身に付けさせるとともに、適切に書こうとする態度を育てる。
(3) 目的に応じ、内容や要旨をとらえながら読む能力を身に付けさせるとともに、読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。
実は、現役小学校教員の時代から、この指導要領の文章はとても苦手でしたが、最近その理由がわかったような気がします。
《あたりまえのことを、きちんと(≒まわりくどく)書いている》ので、かえってわかりにくくなっているようです。例えば…
・目標(1)の「的確に話す能力」・・・人が話すのは《話す目的や意図があるからにきまっている》し、《話の内容は「考えたこと」や「伝えたいこと」にきまっている》のだから、一般的にはわざわざ書く必要はない。などなど… したがって、(1)を分かりやすく書きなおせば…
⇒ 「的確に話す能力」と「聞く能力」、「話し合う能力」を身に付けさせる。
として、それぞれの能力を身につけるための具体的技能を、低・中・高学年の各段階に振り分ければいい、のではと…
脱線はこのぐらいにして、本筋にもどって、指導内容のなかの「日本語教育」の部分を赤字でしめすと…
【内容の領域】
・A話すこと・聞くこと
・B書くこと
・C読むこと ~以上詳細は略す~
・〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕
「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」及び「C読むこと」の指導を通して,次の事項について指導する。
- ア 伝統的な言語文化に関する事項
- (ア) 親しみやすい古文や漢文,近代以降の文語調の文章について,内容の大体を知り,音読すること。
- (イ) 古典について解説した文章を読み,昔の人のものの見方や感じ方を知ること。
- イ 言葉の特徴やきまりに関する事項
- (ア) 話し言葉と書き言葉との違いに気付くこと。
- (イ) 時間の経過による言葉の変化や世代による言葉の違いに気付くこと。
- (ウ) 送り仮名や仮名遣いに注意して正しく書くこと。
- (エ) 語句の構成,変化などについての理解を深め,また,語句の由来などに関心をもつこと。
- (オ) 文章の中での語句と語句との関係を理解すること。
- (カ) 語感,言葉の使い方に対する感覚などについて関心をもつこと。
- (キ) 文や文章にはいろいろな構成があることについて理解すること。
- (ク) 日常よく使われる敬語の使い方に慣れること。
- (ケ) 比喩(ゆ)や反復などの表現の工夫に気付くこと。
- ウ 文字に関する事項
- (ア) 第5学年及び第6学年の各学年においては,学年別漢字配当表の当該学年までに配当されている漢字を読むこと。また,当該学年の前の学年までに配当されている漢字を書き,文や文章の中で使うとともに,当該学年に配当されている漢字を漸次書き,文や文章の中で使うこと。
- (イ) 仮名及び漢字の由来,特質などについて理解すること。
つまり、日本語教育は3つのABC領域には入っておらず、領域横断型の〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕のなかの「イ」と「ウ」が「日本語教育」の部分となっていまるということです。
しかも《ABCの指導を通して指導する》となっているので、実際の現場では、《きちんとした日本語(についての)教育》はほとんどされていないようです。
(※繰り返しますが、小学校で「きちんとした日本語教育」がなくても、子供の音声言語は《身の周りの言語環境のレベルに応じて》発達していきます。ヒトの脳はそのようにできているのですから)
~次回、日本語を使ってする教育~
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