山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

ライブドア騒動と朝鮮支配

2005年04月28日 | 日本の外交
きのう(27日)放送のCS朝日ニュースターの番組に東海大の小倉紀蔵助教授が出演し、日韓関係についてユニークな視点で解説していた。小倉さんのことは、この番組で初めて知ったが、電通マン時代に韓国文化に興味を持ち、ついに専門家にまでなってしまったという"変わり者"らしい。

その小倉さんが、日韓対立の歴史を「ライブドアのニッポン放送買収騒動」になぞらえて説明していた。「韓国人にすれば朝鮮支配が目的ならまだしも、その先の中国大陸が目的で朝鮮は足掛かりだと言われ、プライドを傷つけられた。しかも日本はアングロサクソンから借金してその資金を調達した」と。(実際には、朝鮮支配のきっかけとなった日露戦争の資金はユダヤ系財閥から調達したとされるので、「アングロサクソン」云々は主にライブドアとリーマンブラザーズの関係が念頭にあったのだと思う)

録画していたわけではないので、表現は正確でないかも知れないが、そのような趣旨だった。実に分かりやすいたとえだと思う。わたし自身、「韓国『過剰反応』の心理を読み解く」と題した記事のコメント欄で、竹島問題をライブドア騒動にたとえていたから、番組を見てハッとした。我が意を得たり、とはこのことだ。

小倉さんの話で特に興味深かったのは、当時の朝鮮半島に「帝国主義というグローバルスタンダードを敢えて受け入れ、自らの近代化に利用しようとした勢力がいた」という指摘だ。韓国人がそうした人々を、今なお「親日派」と呼んで糾弾していることは、よく知られている。

一方で、土足で上がり込んで来て「仲良くやろうや」と言った日本人に対して、とことん抵抗した勢力もいた。現在の韓国史はそうした「レジスタンス」を重視し、「親日派」を全否定した上に成り立っているのだと。

そこまで聞いて、わたしの頭の中で以前から気になっていた一つの疑問が、再び持ちあがった。それは「朝鮮総督府の弾圧は、朝鮮の近代化、民主化を阻害した」という通説に対する疑問だ。

「弾圧はなかった」と主張するつもりはないし、もちろん、弾圧行為を肯定するつもりもない。ただ、韓国で(日本国内でも)よく言われるような、日本の弾圧が「朝鮮の近代化、民主化を阻んだ」という定説には、「そう簡単に言い切っていいものだろうか」という素朴な疑問を抱いてしまうのだ。

朝鮮総督府が、朝鮮の知識人や民衆を弾圧したのは事実だと思う。英仏を含む帝国主義国は18世紀以降、世界中の出先機関を通じて植民地の住民を弾圧してきた。ただ、その目的は多くが「秩序の維持」ではなかったか。この場合の「秩序」は支配者側にとっての「秩序」であって、早い話が彼らの弾圧の対象は「独立運動」だったと思うのだ。

では、日帝支配下の朝鮮で独立運動を担った人々は、本当に「近代化」や「民主化」を望んだ人々だったのだろうか。おそらく日本の支配に最も抵抗したのは、旧大韓帝国(李朝)時代に既得権を有していた支配層、インテリ層だったろうと思う。彼らは儒教思想や、それに基づく華夷秩序を何より重視したはずだ。(光復後の初代大統領・李承晩氏を思い浮かべてほしい。李朝の血を引く彼が民主派だったかどうかは疑わしい)

ということは、日本の植民地支配に抵抗した最大のエネルギーは、かつての野蛮国からの「一方的な近代の押し付け」に対する反発だったとは考えられないだろうか。無論、独立運動の第一の目的は「祖国の解放」であるから、それを弾圧した日本の行為は非民主的暴挙であることは言うまでもない。「民主主義」がしばしば、非民主的手段によって押し付けられることは、先のイラク戦争によって現代社会に生きる我々も目にしたばかりだ。

とはいえ、「独立運動=近代化・民主化運動」であったことを証明しない限り、「独立運動の弾圧=近代化・民主化の阻害」という結論は出て来ないのではないか。

ライブドアのやり方がたとえ非民主的であっても、その手法自体は合法的で、かつ「ネットと放送の融合」という「近代化」を大義名分にしていたことも事実だ。一方、そのライブドアに必死で抵抗したニッポン放送やフジ・サンケイグループの動機が、彼ら自身の「近代化」=「変化」にあったとは、必ずしも言い切れない。同じように、「日本の植民地支配のせいで、韓国の近代化、民主化が遅れた」という広く信じられた主張も、さほど確かな論理的裏付けを持たないようにも思うのだが、どうだろう。(了)

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