山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

近頃の政治記者

2005年11月12日 | メディア論
自民党圧勝に終った9月の衆院選については、各種メディアでさまざまな評価・分析がなされている。中でも多いのが、自民党は広報戦略、メディア対策で民主党を引き離したというような分析だ。

私個人は、今回の自民大勝は、「小泉おろし」の動きに対する国民の反発を正確に読み取った首相が、逆境を逆手に取ってうっちゃりを決めた結果だとみているが、それはそれとして、自民党が選挙戦でメディア戦略を重視していたことも事実だろう。

とりわけ、インターネットを巧みに活用した世耕弘成参院議員(広報本部長代理)の“功績”は、ネットのみならず、既存の出版メディアなどでも高く評価された。それだけに、選挙戦を勝利に導いた功労者として、世耕氏が選挙後の内閣・党役員人事で異例の大抜擢をされる可能性があると密かに注目していた。

結果は、残念ながら入閣も果たせず、党役職も大きな変化はなかった(もちろん参院総務委員長というポストも、当選回数にしては要職ではあるが)。小泉流サプライズ人事の定着は、周囲の期待値を必要以上に引き上げていたのかもしれない。

だからという訳でもないだろうが、温厚な性格で知られ、大手メディア記者とも良好な関係を維持している世耕氏が、珍しく自身のブログで特定の社名を挙げて記者を批判している。

組閣人事の4日後、官邸を訪れた世耕氏を官邸番の記者たちが取り囲み、そのうちの一人が社名を名乗って「あなたのお名前は?」と聞いてきたというのだ。

官邸への入退館の際には官邸番の記者に取り囲まれて「誰に会いに行くんですか」、「総理には会いましたか」、「どんな話でしたか」という質問を矢継ぎ早に浴びせかけられる。今日も同様だったが、いきなり「時事通信ですが、あなたのお名前は?」と聞いてきた記者がいて呆れた。

「俺の名前も知らないとは失礼な!」と威張るつもりは毛頭ない。まだまだ一般に認知されていないのだろう。しかし私は若手の中ではよく官邸に出入りしている方である。首相とその周辺が誰と会っているかをチェックする任務を帯びて、官邸を拠点に活動をする以上、誰がよく出入りするかを過去の首相日程や前任者の取材メモ等で確認して、その人物の顔と名前くらいは頭に叩き込んでおくのが基本中の基本ではないか。

お怒りはごもっとも。まったく不躾(ぶしつけ)な質問だし、テレビにもよく出演している世耕氏の顔を知らないというのも、政治記者として不勉強極まりないと思う。

おそらく、昔の政治家なら「無礼者!」と一喝し、記者の所属する社の編集幹部あたりに雷が落ちたことだろう。幸運にして(?)今の政治家はおとなしいから、ブログで失態をばらされて、ブロガーたちの失笑を買うだけですんだようだ。

「名前聞かれたぐらいで」「政権党の議員のくせに大人げない」と言われればそれまでかもしれない。でも世耕氏のおかんむりも理解できる。記者も記者で、政治家のプライドをつぶさないよう最低限の勉強はしておくべきだろう。全国会議員の顔と名前を暗記しろとは言わないけれど。〔了〕


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1 コメント

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蛇足 (山川草一郎)
2005-11-24 12:29:06
言わずもがなのことなので敢えて本文中で触れなかったが、世耕氏といえば、かつて首相官邸の総理執務室前に記者団が陣取り、出てきた首相に取材する慣行を「普通の企業ではありえない」と問題視し、首相取材を制限するよう主張した張本人である。彼がブログで「議員の名前も知らないで権力監視が聞いてあきれる」と番記者を批判した背景には当然、そうした皮肉も込められている。



一般市民の既存メディア不信に同調するかのような巧妙な書き振りではあるが、権力の側が説くメディア批判に対しては市民の側も一定の距離を置く姿勢が必要だろう。新聞記者を辞めたブロガーが、世耕氏のメディア批判に便乗するのもあまり誉められたことではない。
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