「自民党:メルマガ、ブログ発信者と懇談 武部幹事長」(毎日新聞)・・・自民党の武部勤幹事長が25日夜、メールマガジンやブログで情報発信している人たち約30人と「懇談」した、というニュース。招待されたのは、おなじみGripBlogさんのほか、【ミナログ】製造業社長の逆襲さんなど(※1)。安倍晋三幹事長代理も出席予定の懇談なのに、自民党幹部が「取材拒否」中のはずのA新聞社に所属するブロガーにも声かけしているのはご愛嬌か。
「ミナログ」さんが公開している自民党の案内メールを読むと、同党がブログの影響力を意識していることがうかがえる。「予約申込み方法」の欄に、明記事項として 「貴方のメルマガまたはブログの名称」「懇談会で質問してみたいこと」と並んで、「月間平均アクセス数」が挙げられているのだ。
「ブロガーが首相に質問する日」というエントリーでも書いたが、新興メディアの力は、背後の読者数、視聴者数に比例する。かつて新聞やテレビがたどったのと同じように、ブログも読む人が増えるに従って、メディアとしての地位を確立するのではないか。
これまで政治家の「懇談」といえば、特定の影響力の大きなメディアを対象とした悪名高い「記者懇」を指した。今回、自民党が記者クラブに属さない市民ブロガーとの「懇談」をセッティングしたことは、素直に評価したいと思う。
特定のブロガーを選別して声をかけたことに対し、対象外とされたブロガーからは「取り込もうとしている」「薄ら寒い」といった批判的な反応も散見される。記者クラブに入れないフリージャーナリストや、「権力によるメディア選別」に過敏に反応する記者クラブの姿を見るようで興味深い。
大手マスコミは嫉妬の渦巻く業界だが、市民ジャーナリズムはそうした嫉妬を超えた存在であってほしい。ブロガーの仲間がメディアとして認められる突破口を開いたことを、素直に喜ぼうではないか。相手の思惑さえ冷静に見据えていれば、取り込まれる心配など些細なことだ。
取材の機会が与えられるかどうかは、その取材を相手が必要と認めるかどうかにかかっている。自民党は、今回の選挙でブログの影響力に目を付け、取材を受けることに意義を見出したから「ブロガー懇談」の門を開いたのだ。
自民党担当記者がこの懇談を阻止しようと動いたなら当然、非難されるべきだ。今のところ、そうした話は聞かない(※2)。GripBlogでは衆院選を前に政界有力者への単独インタビューに次々と成功している。記者クラブによる取材妨害を問題にしてきた同ブログが、自らの能動的な努力によって図らずもフリージャーナリストらの「記者クラブ批判」が「記者クラブ制度への過大評価」だったことを明らかにしつつある。
組織に属さないブロガーが、記者クラブの頭越しに、有力者に取材する。そんな時代が本格的にやって来れば、記者クラブ制度は骨抜きにされ、やがて解消されるだろう。武部氏とブロガーの懇談は、そんな未来へ向けた「小さな一歩」となるかもしれない。(了)
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※1)GripBlogの報告によると、同ブログの主宰者である泉あいさんは正式招待リストに入っていなかったようだ。党総裁である小泉首相へのインタビューを断られた後、粘り強い交渉で参加権を勝ち取ったという。その積極姿勢には本当に頭が下がる。(記者クラブ制度に不平をいうフリージャーナリストたちにこれだけの熱意があれば、裁判所も傍聴席や判決文を用意すると思うのだが…)
※2)前項注で触れたように、GripBlogは当初、「駄目元で」小泉首相へのインタビューを申し込んでいたが、断られたようだ。首相への「単独」インタビューというのは官邸記者クラブ加盟社でも難しいと聞くから、これは致し方ない。
ただ、自民党が説明した取材拒否の理由の中に「『記者クラブからの圧力』という言葉」があったというのがいただけない。本当だろうか。どうもマユツバだ。これを読んだ多くの読者が「カドが立たないよう、記者クラブを理由にして婉曲に断ったのだろう」と感じたのではないか。
GripBlogが反発したように、自民党が記者クラブという「既得権益」を理由にしたことはかえって「改革者」としての小泉総裁のイメージを損ねている気がする。その「圧力」は「独裁者」といわれる首相にも排除できないほど大きいのだろうか。自民党は「圧力」の中身をもっと具体的に説明すべきではないか。
【追記】事実関係について読者の方からご指摘を受けたので、注釈を加えました。(8月26日)
「ミナログ」さんが公開している自民党の案内メールを読むと、同党がブログの影響力を意識していることがうかがえる。「予約申込み方法」の欄に、明記事項として 「貴方のメルマガまたはブログの名称」「懇談会で質問してみたいこと」と並んで、「月間平均アクセス数」が挙げられているのだ。
「ブロガーが首相に質問する日」というエントリーでも書いたが、新興メディアの力は、背後の読者数、視聴者数に比例する。かつて新聞やテレビがたどったのと同じように、ブログも読む人が増えるに従って、メディアとしての地位を確立するのではないか。
これまで政治家の「懇談」といえば、特定の影響力の大きなメディアを対象とした悪名高い「記者懇」を指した。今回、自民党が記者クラブに属さない市民ブロガーとの「懇談」をセッティングしたことは、素直に評価したいと思う。
特定のブロガーを選別して声をかけたことに対し、対象外とされたブロガーからは「取り込もうとしている」「薄ら寒い」といった批判的な反応も散見される。記者クラブに入れないフリージャーナリストや、「権力によるメディア選別」に過敏に反応する記者クラブの姿を見るようで興味深い。
大手マスコミは嫉妬の渦巻く業界だが、市民ジャーナリズムはそうした嫉妬を超えた存在であってほしい。ブロガーの仲間がメディアとして認められる突破口を開いたことを、素直に喜ぼうではないか。相手の思惑さえ冷静に見据えていれば、取り込まれる心配など些細なことだ。
取材の機会が与えられるかどうかは、その取材を相手が必要と認めるかどうかにかかっている。自民党は、今回の選挙でブログの影響力に目を付け、取材を受けることに意義を見出したから「ブロガー懇談」の門を開いたのだ。
自民党担当記者がこの懇談を阻止しようと動いたなら当然、非難されるべきだ。今のところ、そうした話は聞かない(※2)。GripBlogでは衆院選を前に政界有力者への単独インタビューに次々と成功している。記者クラブによる取材妨害を問題にしてきた同ブログが、自らの能動的な努力によって図らずもフリージャーナリストらの「記者クラブ批判」が「記者クラブ制度への過大評価」だったことを明らかにしつつある。
組織に属さないブロガーが、記者クラブの頭越しに、有力者に取材する。そんな時代が本格的にやって来れば、記者クラブ制度は骨抜きにされ、やがて解消されるだろう。武部氏とブロガーの懇談は、そんな未来へ向けた「小さな一歩」となるかもしれない。(了)
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※1)GripBlogの報告によると、同ブログの主宰者である泉あいさんは正式招待リストに入っていなかったようだ。党総裁である小泉首相へのインタビューを断られた後、粘り強い交渉で参加権を勝ち取ったという。その積極姿勢には本当に頭が下がる。(記者クラブ制度に不平をいうフリージャーナリストたちにこれだけの熱意があれば、裁判所も傍聴席や判決文を用意すると思うのだが…)
※2)前項注で触れたように、GripBlogは当初、「駄目元で」小泉首相へのインタビューを申し込んでいたが、断られたようだ。首相への「単独」インタビューというのは官邸記者クラブ加盟社でも難しいと聞くから、これは致し方ない。
ただ、自民党が説明した取材拒否の理由の中に「『記者クラブからの圧力』という言葉」があったというのがいただけない。本当だろうか。どうもマユツバだ。これを読んだ多くの読者が「カドが立たないよう、記者クラブを理由にして婉曲に断ったのだろう」と感じたのではないか。
GripBlogが反発したように、自民党が記者クラブという「既得権益」を理由にしたことはかえって「改革者」としての小泉総裁のイメージを損ねている気がする。その「圧力」は「独裁者」といわれる首相にも排除できないほど大きいのだろうか。自民党は「圧力」の中身をもっと具体的に説明すべきではないか。
【追記】事実関係について読者の方からご指摘を受けたので、注釈を加えました。(8月26日)
もうTBされていますが、Grip Blogさん、招待されたわけではない、と経過説明がありましたね。
>対象外とされたブロガーからは「取り込もうとしている」「薄ら寒い」といった批判的な反応も散見される。
文句や愚痴を言うのでなく、諦めず門を開かせた泉さんの行動力、私は単純に「すごい!」と思いました。
我が身に引き換えてみても、感心しました。快挙、ではないですか?
>文句や愚痴を言うのでなく、諦めず門を開かせた
>泉さんの行動力、私は単純に「すごい!」と思い
>ました。
まったく同感です。職業記者でも、ここまでのバイタリティを持った人は少数ではないでしょうか。フリーも含めて。多くは既存の取材の機会に乗っかろうとしているように思います。
泉さんが「ブロガーを集めたという感じではなかった」と書いているように、今回の懇談はどうやら、ブロガーの取材を受けるというよりは、インターネットで情報発信している人達に自民党を売り込もうという趣旨だったようですね。
コメント欄で、「あいさんのおかげで、ただの懇談会が日本初の政党のブロガー会見になった」と書いた人がいましたが、その通りだと思います。
多くの人が既に指摘しているように、最大の収穫は、世耕議員が「メディアとして、無視できない存在になっていると私たちは実感している」と語ったことではないでしょうか。党首が有権者とチャットしたりというPR手法は、もともと民主党の「お家芸」ですから、自民党が「ネットを重視してます」というと、すぐに「選挙目当てだ」とか否定的な反応をする人がいますが、変わろうとしている組織があれば、従来のイメージにとらわれず、積極的に評価してやることも重要だと、私個人は考えています。
泉さんに関していえば、やはりまだ「八方美人」的なところが見え隠れします。これまでのインタビュー記事の記述を読めば、明らかに「弱者に手を差し伸べる政治」を求めておられ、小泉自民党には否定的な考えが伝わってきます。
逆に民主党や社民党には好意的ですよね。そうした政治的姿勢を明確にすると、離れて行く人もいるでしょうが、応援する人はそれ以上に増えるはずです。そこはもっと自分の考えを明確にしてもいいのではないかと思っています。
「記者クラブが閉鎖的だとは思わずに取材してます」というのもそうですが、ヘンに中立を装うと、かえってアンフェアになり、結果として信頼を失うことになりはしないか、と勝手に心配しています。私自身は政治的立場に関係なく、遠い場所からGripBlogの応援を続けますが。
また厳しいことを書いてしまいました。泉さんの「サポーター読者」の気分を害したらすみません。
http://blog.goo.ne.jp/election2005/e/d76483b63c4d1ddd189711abdb45776b
>各政党のトップへ単独インタビューのお願いの企画
>書を提出し、毎日のように電話をかけました。
>もちろん、自民党へも総裁の小泉さんへこだわって
>お願いしました。でも(と言うかやはり)答えは
>NO。総裁であって総理であるわけですから、当然と
>言えば当然です。
>ところが、その断わりの理由が、「忙しい」なら納
>得できる。でも「記者クラブが・・・」では、黙っ
>ていられません。私の取材を受ければ「なぜ泉だ
>け。うちも」と各社が言い出し収拾がつかないとい
>うことらしいのですが、大手メディアには官邸の記
>者クラブがあるじゃない。今から記者クラブへ入れ
>てもらえるように手続きしようたって公示日までと
>いう短期決戦で、時間がない。直接お願いするしか
>ないんです。
これを読む限りでは、自民党側は「記者クラブから圧力がかかった」とは言っていないようだ。一人に単独インタビューを認めれば、他の社も申しれてきて、収拾が付かなくなるんじゃないか、と心配しているだけだろう。
記者クラブを持ち出したのは泉さんへの配慮だと思う。「ブログで活動しているジャーナリストです」と称する人の取材を受け入れると、日本に住む一般市民のほとんどが「僕もジャーナリストです」「私も」と取材を申し込めることになる。それはちょっと…というのが本音ではなかろうか。
http://www.surusuru.com/news/archives/Entry/2005/08/30_1657.php
「ブロガーの取材機会を定例化する考えはないか」と聞かれた世耕氏は、「それはやはり記者クラブ制度があって…」と言いかけて、「記者クラブとは別に機会を設けましょう」と修正した。「記者クラブ」という聞き飽きた逃げ口上を排した心意気を信じたい。
今回の懇談で分かったように、ブロガーの質問はユニークだ。少なくとも記者クラブに在籍する報道機関の関心事とは異なっている。「記者クラブの定例会見に参加しないと意味がない」と冷ややかに言う人もいるが、私はそうは思わない。
ブロガーはブロガーで、定例懇談の実績を積み上げ、既成事実化するのが先決だ。ゆくゆくはフリージャーナリストにも間口を広げてもいい。影響力が増せば
既存メディアから「参加させてくれないか」と言ってくるかも知れない。そんな時は「虫のいい話だ」と蹴るのでなく、寛容の精神で受け入れようではないか。
そうやってブロガー懇の権威が増せば、記者クラブ制度はやがて骨抜きにされる。今回の自民党ブロガー懇が、たとえ選挙目当てだったとしても、これをきっかけに記者クラブ制度という既得権益の壁を崩す「蟻の一穴」になれば。そう願っている。