山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

韓国「過剰反応」の心理を読み解く

2005年03月18日 | 日本の外交
島根県議会が「竹島の日」条例を可決したことに、韓国の官民が猛反発している。わたしは、いわゆる右翼や民族派ナショナリストの類には属さないと自負しているが、それでも韓国側の反応は異常だと思う。おそらく、ごく一般の日本国民が同じ感情を抱いているのではないだろうか。

「植民地化は合意の上だった」などの閣僚の失言に韓国政府が抗議してくることは過去にもあったし、その憤りは理解できた。しかし、一地方議会の、何ら拘束力のない意思表明に対して「第二の侵略」とは明らかに過剰反応だ。これでは、日本各地で制定されている「北方領土の日」もロシア侵略になってしまうではないか。

韓国政府の反応を理解しようと努力しても、どうしても合理的な説明が思いつかない。強いて言えば、「今年が戦後60年の微妙な時期にあたるため、ことさら感情を刺激した」ということだろうか。それならば日本側にも反省すべき点はあろう。しかし、そうでないなら、別の「政治的」な思惑を推理しなくてはならない。

第一に考えられるのは、「ノ・ムヒョン大統領が政権浮揚の道具として対日批判を利用した」ということである。「IMF占領」後の、韓国内の世代間対立は激しさを増しており、それを反映した与野党対立も熾烈を極めている。「国民統合」を掲げたキム・デジュン前大統領も地域間対立を解消することはできなかったが、ノ政権はむしろ世代間対立を煽ってきた側面もある。

行き過ぎた世代間対立が、国内の統合を後退させつつあることに危機感を抱いたノ政権が、「対日批判による団結」という韓国政治の伝統的手法に頼り始めたのではないか、といういことは容易に想像できる。

第二に考えられる背景は、「日本が国連安保理常任理事国入りする可能性が出てきたこと」ではないか。多くの韓国人は、日本の常任理入りに「反対」である。その表向きの理由は「日本の反省が十分でない」ことであるが、本音は自国の近隣に政治大国が出現することに対する潜在的恐怖感であろう。韓国政府が、ことさらに「ドイツは反省しているが、日本は…」と繰り返していることが、国連改革を意識している証左のようにも思われる。

韓国としては「歴史問題を外交上の争点にしない」との方針は、日本の過去の行為を「許す」という意味でなく、日本がおとなしく現状を維持している限り「問題にしない」という意味だったのだろう。一方、東西冷戦の「戦勝国」となった日本は、国連安保理常任理事国入りという悲願の実現に向け歩みを進めている。韓国としてここでもう一度、「過去を許したつもりはない」と明確に意思表明する必要に迫られたのではないか。「懲役50年」の刑期を終えて出所したつもりの日本人と、日本を「終身刑」に処したつもりの韓国人。両者の認識ギャップが顕在化しつつあるような気がしてならない。

第三の可能性は、「北朝鮮へのシンパシー」である。ノ大統領は先の演説で「過去の植民地支配」を持ち出して「北朝鮮による拉致への日本国民の怒り」に反論したが、これは北朝鮮が用いていたロジックそのものである。韓国をよく知る人は「韓国人は、日本人が北朝鮮を罵っているのを見ると、出来の悪い親戚の悪口を言われているようで居心地が悪いのだ」と指摘する。

2002年9月の小泉訪朝で、北による拉致が明らかになって以来、日本国民は戦後、初めて「被害者」の立場に立った。それからの3年間、北朝鮮に対して声高に批判する日本人の姿を見せられ続けた韓国人の心理に鬱積した感情が、戦後60年という節目に、島根県議会の件を契機に噴出したのではないだろうか。対日批判の欲求が最初からあって、島根県議会は「飛んで火に入る夏の虫」だったのではないか、と思うのだ。

以上、推測できる合理的な説明を、思いつくままに書き連ねたが、このうちのどれが最も真相に近いのかは判断のしようがない。あるいは、これらすべてが背景にあるのかも知れないし、ここに書いた以外にもっと重要な要因が隠れているのかも知れない。いずれにしても、韓国側の感情的な行動に対し、日本国民としては、まずは冷静にその主張に耳を傾けるべきだろう。産経新聞が17日付社説に書いたように「竹島問題」を国際司法手続きに委ねるよう、政府は改めて韓国側に打診してみてはどうだろうか。

(了)




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2 コメント

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Unknown (wnm)
2005-04-03 00:28:47
こんばんは。TB有り難うございます。韓国人とは米国留学以来様々なつきあいがありますが、世代間での温度差は確実にあると思います。ただ、韓国内では「公=反日・克日」ですから、それに反対する意見は内心持っていても公然と述べることは出来ないだろうと思います。96年にカナダでの学会で出会った韓国人留学生はあっけらかんとしていて、別に「日帝」時代のことは何とも思っていないといわれて面食らってしまったことを思い出します。韓国に言いたいのは、批判は基本的に今後ともそれなりに好意ある隣人としてつきあうという前提があって初めて効果があるということです。日本人が韓国政府が何を言おうが全く気にもしなくなったのは、おそらくそのような前提を韓国人が持ち合わせていないということが大多数の日本人に分かってしまったからだと思うのです。今までの靖国神社公式参拝批判や教科書批判を受けても、それを受けて改善していけば、批判が止むだろうと思ったのですが、おさまるどころか拡大していますから、これでは韓国政府は日本と将来戦争をする可能性も考えているのだと考えなくてはならなくなります。となると、たとえば、日本海に浮かんでいる日本のイージス艦にトマホークミサイルを配備して、ソウルを平壌と並んでターゲットの一つにするという事態に(非常に残念ですが)なってしまうでしょう。韓国人はあまりに幼いのです。日韓併合も韓国が自分で自分の国を守れなかったことが最大の原因ではないでしょうか。それを日本人に言われたくないという気持ちはアメリカに「民主主義」を教えられたことになっている日本人にはよく分かりますが、いいかげん甘ったれた反日感情は卒業してもらわないと困るのですが、韓国メディアも大統領もそろって馬鹿揃いのようでほとほと参りました。目の前にいる韓国人留学生は、日本の国旗を焼いたりはしないだろうと思うのですが、あのようなことをいくらやっても、何にも咎めがないと考えるのは誤りであるということを何らかの形で分からせる必要があるでしょう。中韓は実に厄介な隣人です。
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ありがとうございます (山川草一郎)
2005-04-03 01:59:34
示唆に富むコメントをありがとうございました。

わたし自身は、どうも今回の騒動は「国連」要素が大きいように思い始めています。日本の常任理入り阻止のために、いったん封印した「歴史問題」を持ち出したのではないかと。しかし、そもそも日本とドイツでは「罪質」が違いますし、満州事変以降の武力侵攻ならともかく、「韓国併合への反省と謝罪と賠償が足りないから駄目」というのでは、インドやアイルランドに謝罪もしていない英国は常任理事国の資格がないことになります。



一方で、竹島問題を国際司法プロセスで解決することに同意しない韓国側の事情は、実は少し理解できるのです。島根県の竹島編入は当時の国際法に照らして確かに合法だったのでしょうが、それはちょうど、ライブドアのニッポン放送株取得が「合法」であったのと同じようなもの。「保護国化されたくなければ、外交権を差し出しちゃ駄目ですよ」と開き直られても素直に受け入れられないでしょう。産経新聞もその辺をもう少し斟酌してあげるべきかと思っております。
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