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**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

「明日」の重さ

2006年04月29日 | 病棟
和田さんの心電図の波形が、急に悪くなりました。
期外収縮が頻発、それでも数回づつで正常に戻っていたのが
2時間後には ずっと途切れなく期外収縮です。
調子が悪いとSpo2が70%まで急激に下がる患者さんであり
90歳も間近なので 予断を許しません。
「・・・蓬団子とイチゴ、食べたい」
家族の了承があれば、患者さんの希望はなるべく叶える、
小さな病院の強みです。
院長のOKが出たので、家族に連絡して買ってきてもらい
少しづつ食べさせます。
食べるたびSpo2が80%を割りますが、酸素をフラッシュしながら
少しづつ、少しづつ。
「もういいよ。明日食べる。冷蔵庫に入れといて。ありがと」
・・・彼女の生きる気力が 明日につながったような気がしました。

日勤が終わり挨拶にいきました。
「2日休んだら来るからね」と伝えると
和田さんが目を閉じたまま「・・・明日・・・」と言いました。
仕事に来るわけにはいかないと言っても、
首を振り、明日、と繰り返すのです。
「じゃあ、明日はお見舞いに来るよ。」
やっと ちょっと笑ってくれました。
次の日、庭のパンジーを持って訪室すると、
和田さんは持ち直してすやすや寝ていました。

私の「明日」は99%確実にやってきます。
多分いつもと変わらない平和な「明日」です。
でも病室の患者さんの「明日」は、とても遠い。
「今日をがんばろう」「明日までがんばろう」
そうやって乗り越えていく時間は、とても重い。
子供に気軽に「また今度ね」と言うのとは違います。
どうやって生きる気力を支えていけるのか
いつも考えていたい。



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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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はじめまして。 (Naomi)
2006-05-01 15:41:33
こんにちは。今年からバラに挑戦しようと思い、いろいろとページを見ているうちにこのブログにたどり着きました。

病院での一コマについてのこのエントリを読み、3年前に母を看取ったときのことを思い出しました。病院の看護婦さんたちや他の患者さんに優しくしてもらい、幸せに逝きました。

母もバラが好きで、うちにはいつもバラが咲いていました。いろいろと思い出して、じんとしてしまいました。



また、よらせていただきます。ありがとうございました。

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Naomiさんへ (マム)
2006-05-08 14:59:24
ふとした瞬間に思い出して

ココロをじんとしてくれるひとがいるなんて

天国でおばあちゃん うれしくて笑っていますね、きっと。

Naomiさん、優しいんですね。

一生を生ききるって、簡単じゃないと思います。

80年、90年と生きてくる間の

喜びや苦しみや苦労を思うと

何の肩書きもなくても

立派な人生だったと いつも思います。



ありゃ、ちょっと支離滅裂な文でごめんね。
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ごめんなさい (マム)
2006-05-08 15:03:37
あっ、お母さんを看取ってでしたね。

Naomiさんのイメージが とっても若いかたでしたので、ついおばあちゃんなんて書いてしまいました。

ごめんなさい。

お母様を看取るって、大変でしたね。

私はまだ親を看取るココロの準備ができていません。

「元気で長生き」

永遠にそれが続くような気持ちです。
返信する
ありがとうございます (Naomi)
2006-05-13 01:07:39
マムさん、コメントありがとうございます。

若いイメージといわれて喜んでますが(笑)。。

母が生きてる間に、薔薇のことを教わりたかったなぁと思います。



お祖母ちゃんも、母も看取った今は、大仕事を終えたな~、という実感があります。



もちろん、看病は辛く悲しかったけど、

最後まで身を持っていろいろなことを教えてくれた彼女たちに、

今では感謝でいっぱいです。本当に良い別れだったので、家族みんなで清々しい思いになったほどです。



でも病院では、別れや闘病が毎日のことですものね。。。

本当に頭が下がります。

入院されてる方、また患者さんのご家族、職員の皆さんが少しでも安らかに過ごすことが出来るようお祈りしています。



長文、失礼しました!
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