**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

与ひょうさんの脱走

2007年03月13日 | 病棟
与ひょうさん 94歳。発熱と脱水で入院。
WBCは正常値だけどCRPが二ケタ、た、高い!
高齢なので、白血球の生産が炎症反応に追いつかないんだろう。

呼びかけにも反応が鈍く
御歳を考えると もしかしたら逝っちゃうかも・・状態。
点滴しても抗生剤使っても 意識レベルは変わらない。

それがやっと全介助で食事が取れるところまで回復。
口元に持っていくと口を開ける。
雛鳥の反射のように。 
でも、相変わらず発語もないし ただ天井を見てじっとしている。

その与ひょうさんが、夕食時ベッドにいない!!!
・・ド、ド、どういうこと?!
誘拐?まさか 神隠し?!
スタッフ一同パニックになり、捜索開始。
ここは2階、非常階段には重い鉄のドアがついている。
エレベーターは動いていない。
大体、歩けるはずが無い!!!

1階で厨房のおばちゃんが教えてくれた。
なんだか電気治療室に人影があった様な気がする、って。
慌てて走った私たちの見たものは・・・・。

おむつ一丁でマッサージベッドに横になってる 与ひょうさん。
私たちに気付くと 手を挙げて
「おう」だって。
初めて聞いたよ、与ひょうさんの肉声。
あまりのことに同僚の紀ちゃん、笑いが止まらず訊ねる。
「どうやってきたのよ、ここに」

「階段下りてきたぞ。
 いろいろボタン押したけど ちゃんと動かないぞ、このベッド」

ちゃんと回復のステップ順に踏んでよね。
一足飛びに健康になられると あたしたち附いていけないよ。