アルバニトハルネ紀年図書館

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『かむろば村へ』第4巻(完結)/いがらしみきお

2009-04-25 | 青年漫画
 


人は必ず死ぐもんだす、
村だっていづがなぐなってすまう。
オレはね、
その日までみんなどご見守って行げればいいど思ったの。


第4巻は最終巻です。
全財産を燃やしてやっと「無一文」になれた高見。しかし村中が作物の盗難に悩まされます。
数年ぶりの臨時議会、「スミレーション」では17年で村の人口は半分に減り、32年で村はなくなるという…。かむろば村は青石市と合併するのか? 合併したら青石は村にダムを作るのか? ダムが作られればかむろば村の三分の一は沈みます。与三郎村長はまるで、過疎で滅び行く村の最期を看取る、ホスピスのよう。

畑も荒らされ、家にも放火されてしまう高見。隣の斎藤さんのところに泊めてもらっているが、オカネから逃げるために銀行員を辞めて農業やりに来て、だけどスーパーでアルバイトしたり時に便利屋、この前まで金貸しをやっていたり、今度は墓守。自分は一体何なんだろう?

村長の妻の亜希子さんに付きまとう、ヤクザの多治見。家を燃やしたのも畑を荒らしたのも多治見ではないかと疑う高見。
与三郎村長は、自分を嫌う青砥に指名手配されているのがバレて、村長選挙に出ないと言います。それを聞いた、神を自称するなかぬっさんは
「人間はなにがやるすかねぇさ。なにもすねえではいられねえのが人間だべ。」と答えます。

多治見に連れ去られたのか、亜希子さんの行方不明で物語は急展開。「絶対亜希子さんを捜すんだよ、それがオレの義務だろ。亜希子さんを連れて帰れなきゃかむろば村にはもう戻れないぞ。」、自分の責任だと感じた高見は、コンビニでゴミを漁っていて二人のホームレス、メリーとアンナに出会います。「ようやくわかったよ、オレかむろば村出ちゃうとただのホームレスなんだよ。」、メリーに食わないかと差し出されたその桃は、かむろば村の畑からの盗品…。
年輩ホームレスのパドさんの言葉は高見の行く末を示すヒントのよう。
「高見さん、あなだの夢はなんでぃすか?」
「ただオカネ稼ぐのがいやで、オカネ使うのもいやなだけなんで。」、自分はそれだけのだめな人間だと答える高見にパドさんはそれがあなたの夢だと指摘します。
「オカネ稼がなくてもオカネ使わなくても生きていけるところ、いつかそこに住むこと--それがあなたの夢でぃすよ」。

亜希子さんは無事救出されたものの(しかし高見の家に閉じ込められていたのを発見された)、青石警察署で被疑者として取り調べを受けている与三郎村長。覚醒剤絡みで元同僚の刑事と元愛人の2名の殺人容疑。
「警察はな、ほんとの犯人わがってんのさ。ヨサブロ、ほんとの犯人教えでやっから。あどで釈放すてやる。村長選挙さ出ねって約束すればな」。
村の政策を巡ってそれぞれの思惑が交錯する中、与三郎村長は、もうかむろば村へは帰れないと言う高見に自分の代わりに村長選挙に出て恩を返せと持ちかけます。
出来上がったポスターには
なにも買わない
なにも売らない
ただ生きて行く
と。それは高見が全財産を使って名付けた中古のマイクロバスに書かれた物と同じメッセージ。

与三郎は村長になっても何もやらないと言う、高見の対抗馬の佐藤伊吉=いぎっつぁんは青石と合併して農地を住宅地にするつもり。圧倒的に不利な高見は神にすがるしかありません。神を自称するなかぬっさん。村人はなかぬっさんの支持した人に皆入れる。

なにも買わない
なにも売らない
ただ生きて行く
高見を応援に来たホームレス達はこの言葉に感動したと言います。

神様であるはずのなかぬっさんがただ年老いて何もせずに死に、村は喪に服すために選挙を中断し1か月延長させる。そして高見は負けて、いぎっつぁんが新しい村長となる。しかしなかぬっさんの死がショックだったのか、いぎっつぁんは就任2週間後に突然辞職し、もう一度選挙をすることになります。

かむろば村でしか生きていけない高見が与三郎に「村長選に出るんスか。」と訊くと「出る。」
「おめは?」
「出ます」。初めて堂々とした顔で、目で、そう答える高見。

かむろば村へ来て2年、一切カネを使わずに生きてきた高見。第17話の「みんなテレビとか雑誌とかインターネットとかやめればいいんだよ。そしたら欲しいものなんかなくなるから、はははは。」という高見の言葉を最後に思い出しました。
私は人間の欲望には「優先順位」があると聞いたことがあります。「食欲>物欲>性欲」の順番です。ヒトは個体を維持するための食欲が最優先され、種を保存するための性欲が一番後回しにされるそうです。農業をやって自給自足しながらモグリの食堂でタダ飯を食っていた高見、何も買わず何も売らず何も欲しがらず、「ただ生きて行く」。そんな高見のような生き方をしようとは思いませんが、住民票もなくどこにも所属せず、警察も病院もない村で何ものにも囚われず踊らされず翻弄されない、それでもなんとか生きていける、そんな生き様にいつか憧れる日も来るのかもしれません。それは恐らく年老いてからのことになるのではないでしょうか。

なかぬっさんの言っていた言葉が忘れられない。
必ずなんとかなる。
思った通りではないけども。


そしてその次の年、与三郎と妻の亜希子さんの間に子どもが生まれます。その子はなかぬっさんの生まれ変わりなのか?

お薦め度:★★★★☆

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