アルバニトハルネ紀年図書館

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『朝がまたくるから』/羅川真里茂

2010-04-29 | 少女漫画
 
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『別冊 花とゆめ』2月号に『冬霞』が載った時(2009年12月末)、「この一作だけのために520円出しても惜しくない」と思ったほど心動かされた作品です。

『葦の穂綿(あしのほわた)』 平成17年 花とゆめプラス4月25日号
『半夏生(はんげしょう)』 平成19年 別冊花とゆめ10月号
『冬霞(ふゆがすみ)』 平成22年 別冊花とゆめ2月号
の3編を採録。


『葦の穂綿』。
地元に戻り隣町の和菓子屋で働いている20歳の新田鈴(あらたすず)は、自転車のパンクを直してもらったのがきっかけで「孝ちゃん」と呼ばれるバイク屋の男に一目惚れする。鈴は自分の好意を拒否する男が家族を亡くしていること、人を殺したこと、そして噂話でずっと知りたかった彼の本名と歳を知る。孝要(こうよう)の叔父から聞かされた話で、幸せを放棄する彼の言葉の意味を知る鈴。
店を辞めた孝要は、決して命を断たないと約束して叔父に別れを告げ、あなたの人生の一部になりたかったと言う鈴に「もう ……一部ですよ」と答えて去って行く。
鈴は彼の歩む道がただ穏やかに、穏やかであればと祈るような涙で送り出す。


『半夏生』。
念願だったカメラマン事務所に入った江塚リオ(こうづかりお)24歳は、情熱だけが空回りする日々の中で、同じマンションの15歳の少年、平成珪碁(ひらなりけいご)の成長ぶりに驚いて思わず呼び止めてしまう。撮影現場でケイゴの女装趣味を知るリオ。秘密を共有し、二人の間に交渉が成立する。珪碁の姿をおさめた写真のディスクが何枚もたまり、秘め事に情事も加わるようになる。リオは快楽の中で撮りたい物をハッキリと持つようになる。
二人で会っている処を珪碁の母にヒステリックに咎められ、犯した罪が想像以上に重かったと、リオは関係を解消する。
「君が「自分」を持った時 どんなカッコいい男になってるか 私は見てみたかったよ」。
そう言いながら自分の足でしっかり立てていなかったリオに、珪碁は作品は彼女のモノだと解放の言葉をくれる。
仕事を辞めたリオの連作ブースを見て、嘘の人生を歩みたくないと、両親と話し合うようになる珪碁。
そして4年経ってようやく、珪碁は実家に戻ったリオを迎えに来る。


『冬霞』。
荒れ果てた家、げんかんがあくのを怖れている幼い双子、チカとリキ。やみしかしらない二人に手を差し出しさらっていく男、恭一(きょういち)。おにいさんにガマンづよいと褒められたリキは、そのことばのいみがわからず、弱い自分の代わりにチカを守って欲しいと願う。
季節を教えられ、字を教えられ、初めて海を見る双子は、「じゃあ 来年の夏 泳ぐか」と言った恭一の何気ない一言を忘れず、二人を連れて逃げる恭一は次の夏を迎える前に、雪の中、倒れてしまう。
運び込まれた村の診療所で恭一が打ち明ける、無差別殺人を犯すつもりだった彼が誘拐犯になった理由。
置き去りにされたリキは、我慢しなくていいんだという声を聞き、泣き崩れる。「チカが リキをまもるよ」と支え合うようになる双子。
祖父母に引き取られ、やがて小学校を卒業する二人。あの時おにいさんはどんなエンディングを望んでいたんだろうと今でも考えるリキ。卒業式からの帰路、二人を呼び止める声に振り返る双子。


『冬霞』見開きカラー(『別冊 花とゆめ』2010年2月号)


『別冊 花とゆめ』2010年2月号表紙。




お薦め度:★★★★☆
胸を打たれました。『冬霞』は雑誌で既に読んでいましたが、3編がこうして一冊にまとまって、羅川真里茂が描いてきたテーマを知って、買って良かったという感銘のため息をついています。
漫画というメディアの、まだ秘めている可能性を示されたような嬉しさも感じます。私の漫画の読み方は明らかに少女漫画に偏っていますが、こういう名作に巡り会えた時にはそれを善しとできます。
男が少女漫画を読むことへの根拠のない抵抗が、優れた作品に触れる機会を逃す大きな損失を生んでいるように思います。



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