角川書店の『コミック怪』Vol.1(2007年8月)から毎号よみきり形式で掲載された、楠桂のホラー作品8本をまとめた単行本です。
どの作品も美しく悲しい物語で、粒揃いです。その土地(主に東北地方)に古くからある伝承や民俗学的な要素を絡めた、「ホラー」としても完成度の高い作品ですが、「恐い」というより「胸が痛む」という読後感です。
座敷童や神隠しという物が単なる作り話ではなく、古代人の風習と信仰から生まれた伝承であり、霊や神々を信じなくなった現代人の価値観がそれらを軽んじることにより悲劇が訪れるという、正統派の「怪談」です。安直な「恐怖」ではなく、民話の背景にある「悲しみ」を掘り下げた、悲恋物仕立ての作品集に仕上がっていて私はとても好きです。ラブストーリーの語り手(つまり少女漫画家)であると同時に、少女漫画で「鬼」を初めてきちんと描いた(『鬼切丸』)存在でもある楠桂。この二つの要素が絶妙のバランスで絡み合った、珠玉の作品集です。
お薦め度:★★★★☆
小泉八雲が女性で漫画家だったらこんな本も残したかもしれないと言ったら褒め過ぎでしょうか。
確かな知識に裏打ちされたホラーは恐ろしくはなく、むしろ美しい。怪談を読んで感動する私は変態ですか(笑)?
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【検索用】恐ろし語り 楠桂 1
一作一作はページ数が少ないんですが、楠桂らしい正統派のホラーでお薦めですよ。
これは要チェックだ!
切ない系がすきなのです。