ロレンスの精神分析に対する反応を心にとめて、忘れないようにしておこう。ロレンスの場合、少くとも、かれが精神分析に対してためらいを抱いていたのは、性欲の発見を前にしてこれに恐怖したことに由来するのではない。そうではなくて、かれは精神分析に対して次のような印象を抱いていたのである。つまり、端的にいうと、精神分析が性欲をブルジョアの飾りのついた奇妙な箱の中に、きわめていやらしい一種の人工的な三角形の中に閉じこめつつあるといった印象を。この三角形は、欲望としての一切の性欲を窒息させ、新しい様式においてこうした性欲を「汚れた小さな秘密」《家庭の小さな秘密》に作りかえるものであったからである。つまり、それは、≪自然≫と≪生産≫という途方もない工場を内輪の私的な劇場にかえてしまうものであったからである。ロレンスは、性欲がもっと多くの力を、あるいは、もっと多くの潜在力をもっているという印象をもっていた。そして恐らく、精神分析は、この「汚れた小さな秘密を消毒する」ことになったのであるが、……・
「アンチ・オイディプス」G.ドゥルーズ/F.ガタリ著 市倉宏祐訳 河出書房新社 1986年
富翁
「アンチ・オイディプス」G.ドゥルーズ/F.ガタリ著 市倉宏祐訳 河出書房新社 1986年
富翁
D.H.ロレンスの作品でお勧めはなんでしょうか。とりあえず「チャタレイ夫人の恋人」、「息子と恋人」、「恋する女たち」、「虹」、「翼ある蛇」、あとは短編集を2つほど持っているのですが(すべて文庫)、どの作品から読み始めたらいいのか迷っております。知名度から言えば断然「チャタレイ夫人」だと思いますが、まずはこれから読んだ方がいいというものがあればご教示お願いいたします。
富翁