〈川俳会〉ブログ

俳句を愛する人、この指とまれ。
四季の変遷を俳句で楽しんでいます。「吟行」もしていますよ。

拾い読み備忘録(17)(16の続き)

2016年01月15日 20時19分40秒 | mini essay
グレアム・グリーンはわたしの好きな作家なので、さっそくH氏訳の『権力と栄光』(新潮文庫昭和34)を買って調べてみた。この訳がどんなものか、各行について調べるまでもない。次の一例だけではっきりするであろう。
「彼らは即座に彼を銃殺するであろうか?もしかしたら無事にすむかもしれないという当てにならない見込みが彼を誘惑した。」(119ぺ)
原文をウィリアム・ハイネマン(William Heinemann)社版(1949)から引用しよう。
Would they shoot him out of hand? A delusive promise of peace tempted him.(p95)
彼を誘惑したのは「死による平和」であって、「生きて無事にすむ」ことではない。「死によるごまかしの平和が彼を誘惑した。」が正しい意味だから、訳文の意味はちょうど正反対である。これが「へたくそな原文を直して訳した」結果だろうか。
「誤訳」W.A.グロータース/柴田武 著 三省堂
                                    富翁
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