ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「ぬか喜び」

2024-02-12 | エッセイ
2024年2月12日(月)

建国記念日の振り替え休日。といっても、部屋でゴロゴロ過ごしただけ
なので、今日は、先日書いたエッセイを・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ぬか喜び」

 私の住んでいるマンションは、左隣のマンションと向かい側のマンションと、
共通の地下駐車場で繋がっている。そして、私がここへ引っ越ししてきた際に
割り当てられた駐車スペースは、向かい側のマンションの地下駐車場への
出入り口の前だった。私は、この九年、車を使うたびに、うちのマンションの
地下出入り口から私の駐車スペースまでの間、二百メートル以上を往復しつつ、
(遠いなあ。もっと近くのスペースだったら良かったのにー。)
と、心の中でぼやいていた。
 十月中旬、この三棟を管理する不動産会社の営業の方が、年に一度の
定期巡回に来てくれた。
「何か問題は、ありますか?」
「特に不便は無いです。」
(あ、いや、あった。)
「駐車スペースの移動は出来ませんか?」
「ここの管理人さんが管轄しているので、空きがあれば、移動できますよ。」
営業さんの返事に、私は、聞いてみるものだと嬉しくなった。
 その翌日、一階の管理人室で管理人さんに相談すると、
「丁度、うちのマンションの出入り口の真ん前のスペースが、空きます。
十月末日からなので、あと十日ほどです。十一月からですが、十月三十一日に、
引っ越しであちらが車を出したら、そのまま使っていいですよ。」
と、思いがけない答えがかえってきた。
(特等席だわ。なんてよいタイミング。)
 私は、うきうきとその日を待ち、十月末日、午前中には、移動先のスペースに
止めてあった前の契約者の車が夕方には無かったので、早速、そこへ、
私の車を止め、管理事務所へ行って、新しい駐車スペースの利用申込書を提出した。
(これから、車を使うたび、歩かなくて済むわ。)
私は、明日からの車での外出を楽しみにしていた。
ところが、その夜の九時ごろ、不動産会社の係員の方から電話が来た。
「お宅の車が止めてあるスペースの本来の持ち主が戻って来たので、
車をどけてください。」
(は? 意味が分からない。)
お風呂から出てパジャマで寛いでいたのに、急いで着替えて行くと、
高齢のご夫婦とその車と、係員がいた。出先から戻って来たらしいご夫婦は、
ちょっと怖い顔をしていた。
ご主人が、少し顔を前に出して、何か言おうとした。
「すみません。」
私は、遮るように小声で言い、すぐ内心、
(これは、“ごめんなさい”じゃなくて、“もしもし”って意味よ。)
と、自分に言い聞かせる。すると、気持ちが少し落ち着く。
「この場所、今日から使ってよいと、管理人さんの許可をもらって停めたんです」
駐車スペースの私の車を指差しながら、はっきりと言えた。
ご主人が、顔を引き、驚いたように、首をふって、
「いやいや。」
と、言うので、さらに付け加えた。
「私、管理人さんに、使用許可申請書も出したんですが…。」
 自分が無断駐車をしたわけではないと言いたかったのだ。
「何か、行き違いがあったんでしょう。」
係り員が声をかけて間に入り、私が、いったん私の車を元の駐車スペースに
戻すことになった。
「すみません。」
 一言、謝ってしまったのは、相手の方も、夜、疲れて帰って来たら車を
停められないというトラブルに巻き込まれたと分かったからだ。もちろん、
私は、一方の当事者ではある。
(大変でしょう。)
と、お相手への挨拶のつもりだった。
 車を移動して、マンションの出入り口まで戻ってくると、一人残って待っていた
係員さんから声をかけられた。
「大変でしたね。」
 そして、明日、管理人から、連絡を寄越すと説明を受けた。
 翌朝、管理人さんから電話があって、ようやく訳が分かった。
 向こうのご夫婦は、管理会社に、
「引っ越しをするので、十月いっぱいで、駐車場の使用契約も止めます。」
と、連絡し、管理人さんにもその連絡がいっていた。ところが、その後、変更があった。
「事情が変わって、マンションに住み続けるので、駐車場も使い続けます。」
その新たな連絡が、管理人さんには届いておらず、今回の騒動になってしまったという。
 そういうことなら、あちらにもご迷惑をかけてしまったと素直に思えた。
けれど、私も特等席のような駐車場が契約できるとぬか喜びさせられたわけで、
がっかりした。
 それでも、管理人さんが、
「次回、空きが出来たら、すぐに連絡します。」
と言うので、期待して待つことにしたが、それだけではない。
(怒っている知らない男性に、しっかり事情を説明できた。)
実は、私自身は、こういった初めての経験への達成感のような手ごたえも感じていた。
今日も車で外出しようと駐車場への扉を出ると、先日問題になった駐車スペースに
停めてある車に、つい目が行く。
(これが、あちらの車か。こんなによい場所だったのに、残念だなあ。
ここになっていたらなあ。)
 私は、手からするりと逃げて行ったスペースを未練がましく横目で見ては、
私の車の場所への二百メートルを急ぐのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一日、ゴロゴロしていると、どうしても、頂いたお菓子に目がいく・・。
困ったなあ、体重が上昇傾向なのに・・・。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 公募ガイド | トップ | 会場探し »

コメントを投稿

エッセイ」カテゴリの最新記事