時計屋さん

長年使っている腕時計の電池が切れた。ところが電池の交換がややこしい。仕事の帰りにどの量販店を回ってもその場では電池交換が出来ず店からメーカーへ送って交換するため２～３週間かかるという。預けるのは別にかまわないが急いでない分また取りに行くのも煩わしい。

ちょっと前のことになるが20年以上使った目覚まし時計を直して貰った店が近くにあることを思い出す。それは10歳の頃父親に貰った電動のタイムスイッチ付きのモノであった。買い換えればそれまでだが、20年も使っていてどうにも愛着があったためダメ元でその時計屋に持ち込んだところあっさり修理してくれたのであった。店主のオヤジ曰く既に部品は手に入らなかったため自分でパーツを加工して修理してくれたそうだ。

どう考えても趣味で営んでいるとしか思えないこの時計屋、久々に行くと店主のオヤジが片目に『キズ見』と呼ばれる独特のルーペをまぶたで挟み込んで時計を修理していた。持ち込んだプロトレックを見てオヤジはあっさり言った。
「１０分ほどかかるけど待てるかい．．．。」

待っている間店内を見渡すと地元商工会が認定した職人さんという商標があった。それによるとこのオヤジこの土地に店を構えて50年以上らしく有り難みのほどはよく分からないが国家認定一級技能士という認定もあるらしい。書いてあった売り文句が素晴らしい。

100年前の時計から現在の時計まで、舶来品でも国産品でも何でも修理オーケー。部品が見つかる限りどんな時計でも直します。




待つこと数分、あっさり電池交換を終えたオヤジはこういった。

「あまり水につけない方がいいよ。ゴムが劣化して始めてるから水が入ると厄介だよ。直すならやるけど．．．。」

特に水につける予定もないのでまた夏前にでも頼むことにした。電池の料金は技術料込みであろう1,400円であった。

それにしても量販店では電池交換さえすぐには出来ないがいとも簡単に交換してしまったこの昔ながらの地元の時計店。なんとなく嬉しさを感じてしまったのであった。