2021年8月6日(金)晴れ。オリンピックが日本で行われている中での広島原爆の日です。今日は8:15黙とういたしまして1日がはじまりました。
夕暮れ。暖かい風でも熱風の昼間とは違い、涼しく感じる。
〇もう一人の研究者の存在
イベルメクチンがオンコセルカ症に使われたのは、大村博士とともに2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞したドリュー大学名誉研究フェロー・ウィリアム・キャンベル博士の存在がある。
大村博士が米国メルク社との共同研究をしていた時、アメリカ・ニュージャージー州にあるメルク社の研究所で同じ研究をしていたのが彼だったということです。
キャンベル博士は、共同開発している薬が人間の寄生虫にも効くのではないかと考え、研究所の責任者(ロイ・バジェロス上級副社長)に、ヒト用の医薬品を開発したいと申し出たそうです。
研究には数年かかるし、研究費だけでも数百万ドルと多額になる。アフリカでの臨床試験も必要になるし、患者のほとんどは薬を買う金がない。利益が出ないことはしない、としても致し方ないかもしれないが、なんと!その当時の責任者はGOサインを出したそうです。
何があったのかは分かりません。社内でも困難な事が多々あったと思いますが「医薬品は人々のためにあるのであり、利益のためにあるのではない」というメルク社の原則に立ち返ったらしい。
そして、ヒトへの効果を可能にするため、抗寄生虫活性を高めたり、副作用をさらに低減するための有機合成等の手法などを試しながら改良していったようです。
この時の勇気ある決断が後に、多くの人を絶望の淵から救い出すことになる。
〇臨床試験と無償提供
新薬の臨床試験は、アフリカのセネガルで行われました。微量の薬を投与しただけで2、3週間後、患者の身体から大部分の寄生虫が駆除されたそうだ。
1983年以降、ガーナやリベリアなど4カ国の1200人にも追加試験を行い、年に1回、1錠の薬で寄生虫がほとんど駆除できることを証明したという。
ついにオンコセルカ症治療薬として販売の認可を申請した。
しかし、認可されても、年間数千万ドル以上とみられるコストがかかる。スポンサーを求めて世界中を訪ね歩いたけど、どこからも協力は得られなかったそうだ。
そしてついに無償提供を決断する。道なき所に住んでいる住民に薬を与えるだけでも大変な作業となるのだ。
世界保健機関(WHO)はこの薬を高く評価していた。
「これまで出てきたどの熱帯病薬剤と比較しても、けた外れに優れた効果を持つ。」と期待していた。
多くの人の熱意で1987年から無償で配布がはじまる。年に1回、錠剤を水で飲むだけという簡単な服用法も普及に貢献したようです。
アフリカではオンコセルカ症は急速に減少する。
その後、ダニによる疥癬かいせん症や糞線虫症など重篤な風土病の予防・治療薬になることもわかり、イベルメクチンは世界中に広がっている。
副作用はほとんど報告されていない。
薬の開発・販売には長い月日がかかる。それと多額の資金が必要となる。人類愛で会社をつぶすのか?ということになる。小さな会社では到底無理な事だった。
メルク社は現在、製薬会社として世界売上第3位となっている。
散歩の距離も短めに。夕暮れの中、電車がやってきた。
オンコセルカ症に対するメルク社の対応は世界の人々から称賛される素晴らしいものでした。
イベルメクチンについて、私なりにある程度わかってきました。
寄生虫、風土病に大きな効果を発揮する。ゴルフ場の土壌から放線菌という微生物を発見したことから始まるこの薬が新型コロナウイルスに効果があると注目されていることに何だか興奮するんだけど・・・。
注:メルク社は、アメリカ・カナダ以外ではMSD社という名称になる。