2009年11月 委ねる守り

委ねる守り


この子には、いつも笑っていてほしい。

迷っても転んでも、
自分を信じて歩いてほしい。
失敗しても泣きながらでも、
人を信じて空を見上げてほしい。

あなたの空にある星を
見失わないでいてほしい。


わたしはこの子の心に
消えない星になりたい。

この子が夢見るまぶしい星や、
大好きな友だちがきらめく空に、
四等星くらいの光でいいから、
ずっと消えない星になりたい。


はかなくちいさいあなたをはじめて感じ、
すべてを委ねられた十月のあいだ。
あなたに信じてもらい、
委ねてもらったあなたのすべて。

たよりない小さなあなたに会えた日。

ほんのわずかな赤ちゃんの日々と、
子どもの日々。
その時間、その命、その魂のすべてを、
わたしに委ね、笑ってくれたあなたの笑顔が、
あなたからもらった一番の贈り物。


あなたに委ねられた、あなたのいのちを、
わたしは大切に育て、あなたのもとに委ね返した。

小さな子どものあなたを、
あなた自身に委ね返した日から、
あなたはずっと自分を背負いきって歩いてきた。
わたしはあなたのすぐそばで、
ずっとあなたを見てきた。

あなたの悲しみも苦しみも、涙も、
時に流れる血も痛みも、
あなたが自分で受けとめてきたのを、
わたしはみてきた。

わたしはもう、何度生まれ変わっても忘れきれないくらい
あなたに笑顔をもらった。
あなたの笑顔は、あなたが出会う人を幸せにする力がある。
だから、自分を信じて歩んでほしい。

あなたが信じて一緒に歩き続ける仲間がいる限り、
わたしが、守りたかった笑顔は、
きっといつもそこにあるから。

あなたは自分の背負った荷物を、
最後まで自分で受けとめゆくことができるから。
あなたはひとりじゃない。


この子には、いつも笑顔でいてほしい。

気がつけばそう願ってしまうことを、
わたしはいつまでたってもやめられない。

それがただひとつ、
わたしが誰にも委ねられない、もの。

この子には、いつも笑っていてほしい。

だけど、この子の人生はこの子のもの。
そう信じたから、わたしはこの子の人生を
この子に委ね返したの。