ようこそ 2020就学相談会へ(その2)
今年の「相談会」の予定。いま決まっている3つ。
5月10日(日)千葉市きぼーる。13時半~。(高校相談会)
6月28日(日)柏市パレット柏。15時~。(就学相談会)
7月12日(日)千葉市美浜区ボランティアセンター。13時半~。(就学相談会)
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《ようこそ就学相談会へ 2020テーマ》
一年生になって、ぼくはここにきた。初日は最悪だった。「体育館」は大きすぎて、音も大きくて不快だった。いることが耐えがたかった。誰もぼくをみていない所だった。
翌日から「教室」という部屋に入れられた。知らない子がいっぱいいた。先生もみんなも自分のことで忙しそうだった。だからよく抜け出した。のどがかわいたときは水道に。なんだかつまらない時も水道の水をながめる。広い空が見たいときはブランコにいく。砂場もある。
◇
みんなはぼくより、がまんできる時間が長い。でも休み時間になるとぼくと同じ。ブランコや砂場や広い空がみたくなる。廊下で走ったりふざけて先生に怒られるのはいっしょ。みんなとぼくは同じ。
みんなは外に行くときくつを履き替える。だから、ぼくもはきかえることにした。ぼくが教室からいなくなると、みんなはくつを見に行く。外か中か確認してから探しだす。それで見つかるのがちょっと早くなった。でもウサギ小屋にいたときは誰も探しにこなくて、眠ってしまった。
◇
お腹がすくと教室に戻って給食を食べる。見たことのないものもあったし、おいしいものもあった。給食の時間はみんなが笑っていた。空気も音もおだやかだった。ぼくの大好きなみんながうれしそうだった。たのしそうだった。だからぼくも一番安心な時間だった。
お腹がいっぱいになると時間も音もゆったりとゆっくり流れた。みんなの身体と一緒に、ぼくの身体も少しずつ安心を覚えた。そうして「ぼくの先生」と「みんなの先生」が同じになっていく。「ぼくたちの先生」になっていく。このクラスの一員としてのぼくは、みんなと同じただの「子ども」になっていく。
◇
そうして、毎日毎日、途切れることなく、同じ日常がくり返される。毎日くり返されるから、流れも分かる。予測もできる。
毎日くり返される「みんなとの調整」と、「ぼくの調整」がなじんでくる。
みんなの歌声も、歓声も、驚きも、ざわめきも、がっかりも、心地よさも、みんなと一緒に身体で感じる。みんなと一緒にいる安心と安全が、当たり前の日常になる。
◇
この日常、みんなの声、みんなの笑顔。みんなの安心。この感覚があるこの場所は安全。
みんなと同じ安心、みんなと同じ暑い、寒い、うるさい、怖い、お腹がすいたを感じる、身体がいっしょ。内面の変化が一緒。これがみんなと一緒にいるときのぼくの身体、ぼくの内部感覚、みんなの中のぼくだ。
ぼくは何者か。ぼくは誰か。ここでは、ぼくは「障害児」じゃない。ぼくはみんなの中にいる時、みんなと同じ、ひとりの子どもで、やっち・なっち・ゆうきという名前の子ども。ここでだけ、ぼくはみんなと同じただの子どもになれる。
◇
いつもの声、いつもの顔、みんながいる安心。大好きな人たちの笑顔の心地よさは確かな安心が何かを教えてくれる。みんなの安心が、私の身体と心の安心の拠り所。
毎日、ふつう学級のみんなとの間でくり返し行われる相互作用。くり返される日常が、安全と信頼の学びそのものであり、子どもの安心が学びの基本となる場所。
そのふつう学級という場所は、すでにある場所ではなく、この子と作るもの。
◇
みんなと協働して同じ年月、同じ季節をかけて作る安心と安全の記憶。みんなと協働で調整されたふつう学級の日常、という安心。
それは、「できる」子が、「できない」子を思いやっている一方的なものではない。お互いが歩み寄る協働調整」と「自己調整」をくり返した結果であり、その時その場で季節を共有したものたちの間でしか、わからないもの。それを40人の自己肯定感という。
◇
あなたの知っているふつう学級は、そうでないと感じるかもしれない。でも時代は変わりつつある。しかもあなたは一人じゃない。
あなたの知っているふつう学級は、そうでないと感じるかもしれない。でもこの子が作る。
今の教育に適応できない子ほど、新しい可能性を秘めている。
◇
だから、私たちが出会った子どもたちは、どんなに障害の重い子も、どこよりもふつう学級の中で、みんなと一緒にいる時に自己肯定感にあふれていた。
自己肯定感とは、個人の能力を伸ばして手に入れるものではないのだ。
私たちはだれもが、仲間を必要とする。心も身体も安心できる人とのつながりを必要とする。
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