新しいフルインクルの話(メモ4)
《私のイメージする「フルインクル」の学校》
あなたが抱く夢やあこがれ、
学びたい、歌いたい、走りたい、奏でたい、
遊びたい、知りたい、冒険したい、世界をみたい、
そういう意欲に応えるための、お手伝いをしたい。
私たち自身が、敬意を払われ、見守られ、与えられた安心と自信を、
次の世代の子どもたちにつなぎたい。
そういう学校を、私たちは作りたい。
◇
そのためにまず、語りあえる言葉を確かめたい。
なぜなら、私たちの子ども体験には、「敬意」のないことが無数に混じっていたから。(※1)
◇
50才を過ぎてようやく私が気づいた、確かなこと。
6年の人生で、私の知らない世界を体験してきた子どもたちがたくさんいるということ。
普通の大人が50年100年生きていても全く知らない世界を、
6年も生きていれば、十分に体験できるということ。
超未熟児として生まれてきた子ども。
何度も呼吸が止まり、心臓も止まりかけて、生き延びた子ども。
障害をもって生まれてくる子。
病気と闘い続ける時間と、生きている時間が同じ子ども。
6才になる前に力尽きてしまう子ども。
親に殺されてしまう幼い命。
親が殺されてしまう幼い命。
親に傷つけられることで刻まれる障害や病気。
貧困も暴力も犯罪も、戦争も奴隷も、すべてはいつも子どものそばにあるということ。
そのひとつひとつの体験が、子どもを「孤立」「孤独」に閉じ込めてしまうことがある。
まだこの世の新入りだから。
身体も心も未熟だから。
まだ言葉を知らないから。
自分の状況を語る言葉をもたないから。
守ってくれる味方がいないから。
子どもだから。
「起きる」ことを変えられない、現実がある。
「起きた」ことを変えられない、現実がある。
私たちに何ができるか。
無条件に、子どもの味方であること。
「起きた」ことを消せなくても、「孤立」させないことはできる。
「起きる」ことを止められなくても、「孤独」にさせないことはできる。
そのために、必要なことは、「無条件」であること。
フルインクルの学校は、子どもたちがさまざまな体験を通り抜けてきたことへの無条件の敬意を前提におく。
フルインクルの学校は、6才まで生き延びてきた命への敬意と、これからもここで生きていく希望を抱く仲間への祝福からはじめる。
未熟な新米に、この厳しい社会のルールを教えるとか、
競争に勝つための知識技術を伝授するとか、
利用する、支配する気持のないところから始まる。
まずは子どもが抱えている危機を、困難を、すべて丸のみするところ=フルインクルから始まる。
条件はない。
子どもが生まれてくるときに、何一つ選ぶことなく、無条件でこの世界を信じて生まれてきたのだから、いま生き延びている私たちは、生まれ来るすべての子どもたちを無条件で受けとめる「義務と恩義」がある。
同じ地域、社会で生活し合う共同体の一員である子どもにつける条件はない。制限もない。
そこから始める、子どもとの関係を、フルインクルという。
※1(アリスミラーの話をすると長くなるので、これは別の機会に)
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