これはいったい、どういうことだ?さらにロレッタの話を聞いてみよう。
われわれがきつねにつままれたような表情をしているのを見てとると、ふいにロレッタはけたたましい高笑いをあげた。われわれはどうしてよいかわからず、ばつが悪そうにその場でもじもじするほかなかった。するとロレッタは急に笑いをやめ、不満そうに口をとがらせていった。
「あらそう。高尚な趣味に興味がないのね。それならけっこうだわ」
ロレッタは突然立ちあがると、垂れさがった布きれを払いのけながら部屋のなかを歩きまわった。そしてごちゃごちゃとしたものの陰に隠れていた椅子を見つけると、どしんと腰をおろし、用件をたずねた。
「クラレンドさんの死もお姉さまの逮捕もまったく気になさってないようですね」
ロレッタは宙を見つめたまま、長いあいだ黙りこくっていた。
「ガイはほんとに愉快な人だったわ。姉さんはまるでライオンの群れのなかにほうり出された無邪気な子供みたいな人よ」
われわれが質問を始めないうちにロレッタは椅子から立ちあがると、執事を呼んだ。
「ランダール、今夜はちょっと出かけるわ」
そういったかと思うとロレッタは、あっけにとられて立ちつくすわれわれをあとに、さっさと部屋を出ていってしまった。