TOY VOX

管理人VOX6336が昭和レトロな遊びをするだけのブログです。スマートフォンでの閲覧推奨。

ワーテルロー 65

2023-01-15 22:39:00 |  ナポレオニック
メイトランド艦長との第2回会談は、4日後に再開された(7月14日午前4時)。艦長はホーサム提督からの指示が未着であると欺いたうえで、後日まで問題視される発言を試みた。

「イギリス政府が皇帝のアメリカ渡航を認めるとは思わないが、しかし小官としては自己の責任において本艦上に迎え、イギリスに送ることができないわけではない。だが皇帝がこの案を容れるとしてイギリスでいかなる待遇を受けるかについては、どのような約束もできない。この申し出そのものが政府の承認を得ておらず、全くの個人的な責任でしているのだから」

確かにこれは考え抜いた言い廻しであり、ナポレオンに対するイギリスの冷厳な姿勢をかくしながら、当人の身柄の抑留をねらったものである。

戻ってきたラスカーズの報告をきいたところで、皇帝は随員一同の意見を徴した。ラスカーズ、グールゴーはじめ大勢は相手の「誠実な申し出」を受諾すべきだと述べ立てた。皇帝はついに決断をくだす。



ナポレオン「私は休息のみを求めており、イギリスでそれが与えられるなら受諾してもよい。私は摂政殿下を知らないが、その人柄は信頼すべきものと思う。殿下宛に書簡をしたため、明朝夜明けとともにイギリス艦に赴くとしよう」



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ワーテルロー 64

2023-01-15 12:43:28 |  ナポレオニック
後を追ってイギリス巡洋艦隊長官からも重要な訓令が接到した(7月7日)。
「イギリス政府は6月30日夜、ボナパルトがアメリカに赴けるよう安全通行証を発給されたしとのフランス臨時政府首脳よりの要請を受けた。小官としてはボナパルトはロシュフォールに向かったものと考える。その逃亡を阻むため最適の手段を講じることは貴官の責任であり、その逮捕には欧州の安寧がかかっている。」

あらかじめ事態を充分に把握していたメイトランド艦長は、赴いてきたフランス使節に対しきわめて慎重に応対した。かれらの来訪でついにボナパルトの所在が確認されたからには、イギリス艦艇の増援を求める必要が生じ、そのための時間をかせがねばならない。



フランス使節側は安全通行証は交付されるのかを確認しようとした。艦長はイギリス政府の真意はかくしながらも、「フランス側の照会は上司に伝えるが、 通行証は交付されるとは思わないし、通行証なしの出航は認められまい」と暗に投降をすすめた。


(参考文献:両角良彦『セントヘレナ落日』)


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ワーテルロー 63

2023-01-15 11:09:54 |  ナポレオニック
一行はさほど急ぎもせずに移動し、事故もなくロシュフォール(英海軍により封鎖中)に到着できた(7月3日午後8時)。港には皇帝をアメリカに運ぶはずのフリゲート艦2隻が出航準備を整え待機していた。

フーシェは「あらゆる実力手段に訴えて」皇帝を直ちにラサール号に乗艦させること、またフランス国土への再上陸は禁止する旨を指示してきた(7月7日夜)。かくては皇帝は言われるままに、艦に移るよりほかはなかった(8日午後7時半)。

翌7月9日、パリより新たな訓令が届き、もしイギリスに赴く意向ある場合にはイギリス艦との交渉を許し、アメリカ行きの場合には従来方針に変更なしという。

ナポレオンも事情は知らぬながらも気持ちが動き、沖合に停泊しているイギリス艦と接触し、相手国政府の意向をじかに質そうと考えた。まさにその使命を帯びてラスカーズ侍従はベレロフォン号を訪れ、メイトランド艦長と会談に入った(7月10日午前7時)。



フランス使節はなにも知らなかったが、メイトランドの手許にはイギリス政府より、ボナパルトの逃亡を阻止するため船舶の臨検を強化し、本人を捕らえた場合には最寄りのイギリス港に連行せよとの内密の指示がすでに届いていた(7月1日)。

(参考文献:両角良彦『セントヘレナ落日』)
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