乱鳥の書きなぐり

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何度通った事哉、懐かしや♩「ラ ヴァチュール」のタルトタタン   京都 岡崎(平安神宮 薪能の日に)

2018年06月13日 | お出かけ


   何度通った事哉、懐かしや♩「ラ ヴァチュール」のタルトタタン   京都 岡崎


   

 学生時代は、カウンターが好きだった。

 蝶ネクタイにベストの紳士の店主と、品の良いご婦人のお店のお二方に会いに行く「ラ ヴァチュール」

 頼むのはいつも、タンタンタンタン♩タルトタタン

「タルトタタンはブラックで!!!」
が口癖の蝶ネクタイの主は、少し濃いめの重厚なコーヒーを手がける。

 少し理屈っぽく、京都の男性といった感じがたまらなく魅力的であった。

   

 ある日いつものようにカウンターに座ると、店主曰く、
「ケーキの果物は何かわかるかい?」
と。

 私の心はまるで京都の丸善の檸檬のような衝撃的な収穫と色彩感覚に研ぎ澄まされた小説に溶け込んだような感覚に襲われた。

   

 その頃の私、タルトタタンは作り方を知っていた。

 しかし、彼の言い分を聞いてみたい。

 私はほくそ笑み、店主の顔を見返した。

 彼は得意になって紳士的にゆっくりと述べる。

「あははは、林檎だよ林檎。」

 彼の口から放たれた「リンゴ」という言葉は、丸善の「檸檬」のように、漢字で表記する方が似合ってる。

 一緒に訪れた友人と、顔を見合わせて大きく頷いた。

   

 私が初めて食した「ラ ヴァチュール」のタルトタタンは、リンゴが塊であった。

 もっとも、タルトタタンは本来りんごを二つ切りか四つ切りくらいにし、皮をむいてダッチオープンなどの鍋やフライパンで焼く。

 鍋に砂糖を散ばしリンゴに砂糖とバターをまぶした物をを敷き詰める様に並べ、ほんの少しの生地を流して焼くのだから随分と焦げやすい。

 焦げやすいそんな素朴で綱渡り的な焼き菓子だから、うまい。

   

 卒業後、おばあちゃま(当時のご婦人)の体調がすぐれないとのことで、一グループに立つとたたん一個限定という事もあった。

   

 現在、故おばあちゃま(当時のご婦人)からお孫様に受け継がれたというタルトタタンは、以前に比べ、甘さが少し控えめ。

 おリンゴも細かく切り刻まれて、ケーキの中に入っている。

 フライパン側の表面の後げ目は以前よりも濃いように感じる。

 大きさは、2/3位になり小ぶりでお上品。

 ヨーグルトがミルクカップくらいの大きさで添えられているが、これも以前は無かったものである。

   

 そんなにお高くもなく、美術館に行っては食べることが多かった、普段使いのタルトタタン。

 今は少し値もはり、甘酸っぱさが影をひそめる。

 昔カウンターだった場所にはケーキが並べられ、席は無い。

 店主紳士の存在感も大きかったが、店に並べられた写真は、晩年のご婦人のものだけであった。

   

「タルトタタンはブラックで!!!」

 あの言葉は、良質の小説を読むように心地よく響いたことを今も覚えている。

 せめてカウンター席があれば、昔の思い出に耽りながら、甘酸っぱさを口いっぱいに感じたかもしれないなと、店主のいない店内でほくそ笑む。

   


 

 
 


「ラ ヴァチュール」名物のタルトタタン。
 タルトタタンとは19世紀末にフランスで誕生した伝統菓子のこと。
 焼き型の中にバターと砂糖でキャラメリゼしたりんごを敷きつめ、その上にタルト生地を被せて焼き上げます。
 食べる時はひっくり返して、りんごを上にしていただきます。

   

 最後までお付き合いくださいまして感謝申し上げます。

 ありがとうございます。

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4 コメント

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Unknown (小父さん)
2018-06-13 23:52:56
「ラ・ヴァチュール」って下ですか?
      ↓
https://www.asahi.com/and_travel/articles/SDI2017110970061.html

店の玄関からしてお洒落ですね。
う~ん、現役時代みたいに懐があったかったらすぐにでも行ってみたくなります(笑)

今や落ち目の三度笠で自販でも100円の方のボタンを押して飲んではただただ公園の階段を上り下りするだけ(泣)

タルトタタン(690円)う~ん美味しそう!!!
私はコーヒー好きで、スイーツも大好きなんですよ。
ひと儲けしたら、こんなリッチな気分に浸りたいです。

>鍋に砂糖を散ばしリンゴに砂糖とバターをまぶした物をを敷き詰める様に並べ

う~ん、たまらないです。
味覚もさることながら、頭やハートの中も満ち足りそうですね。

退職してからは、千円が1万円に、百円が千円に思えています(爆)
みみっちいお話ですみません。

いや、このページを読んで、たまには自分へのご褒美も必要だと思いましたね。

どうも有難うございました。
返信する
コメントをありがとうございます。 (小父さんへ 乱鳥です。)
2018-06-14 02:05:32
そうです。リンクしてくださいましたお店が、ラ・ヴァチュールです。
私もお高いと思います>< 学生時代ははコーヒーとで数百円でした。
今の私なら、このお値段ではランチに足が向きます。
子供と一緒でしたので、奮発しました。

おリンゴを焼いたお菓子は美味しいですね。

タルトタタンではないのですが
私はリンゴ3〜5個の薄切り(皮のついたものと皮をむいたもの、半々)、卵3〜4個、小麦粉少々、砂糖多め、バターorオリーブオイルをボールの中に一気に放り込み、ざっくりと混ぜてオーブンで焼きます。
好みでシナモン適宜、レーズンなどを加えます。
リンゴが多いので甘酸っぱく、小麦粉が少ないので、おリンゴ味がしみわたります。
砂糖を多めにすると表面がカリカリとして、美味しいです。(砂糖といっても、我が家ではラカントを使用していますので、体に優しいです。)
アップルパイやタルトタタンよりも簡単でざっくりと簡単に作れますのに、そこそこ美味しいです^^

研修旅行でお疲れのところを、どうもありがとうございました。
感謝申し上げます。
お疲れになられませんように、ごゆっくりなさってくださいませ。
返信する
岡崎は何度も行きましたが (自閑)
2018-06-14 20:35:50
乱鳥様
岡崎は、府立図書館があるので、何度も通い、六勝寺、最勝四天王院、白河南殿跡などを何回も巡りましたが、ご紹介のケーキ屋さんにはついぞ入りませんでした。血糖値が高いもので。(笑)
琵琶湖疏水に、都に見えぬ都鳥(ユリカモメ)が飛んでいるのを見て、大変驚いた事が有ります。隅田川沿いに住んでいたもので。
昔の思い出の詰まった店で息子さんと良い時間を過ごされましたね。
返信する
隅田川 (自閑様 乱鳥です。)
2018-06-15 00:08:13
岡崎の図書館に通われていらっしゃったのですか。
私は美術館二つと、動物園のダチョウ目当てでした^^
私が若い頃は、岡崎アリーナーもあったのです。体育会系ではないのですが、マイシューズを持つくらいに、フィギアスケートはまったことがございます。若気の至です。

京都にも飛んでいる都鳥を 云々
物狂いの代表演目のひとつ「隅田川」
その隅田川の近くにも住まれていたことがあるのですか。
「隅田川」は好きな曲の一つで、DVDを何度となく見たり、バックでかけたりしていました。
私の持っている「隅田川」は観世流で、子供が出てくる演出です。
中には、子供役を大人が演じるものがあるようですが、どちらかというとそちらを見てみたいです。

自閑様の流れるような文
都に見えぬ都鳥
今は京を離れ奈良に住んでいる私にとっては、懐かしさをます嬉しいコメントです。
誠にありがとうございます。


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