富田高至 編者
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 20 十丁裏 十一丁表
和泉書院影印業刊 65(第四期)
1998年 初版
1997年 第三
左右
十丁裏 十一丁表
◯をかし男、山家にある女を見て、むかへてあひにけり、
さて、ほとへて、親の里へ帰ける、弥生ハかりに麦
手の米おほうおひて、男の元に、米かせと里
よりいひやりけれハ、男
君かため たハえる米は はるながら
かくこそあきの もみちしにけり
とて、籾をなん、やりたるけれハ、つきてなん くれで
とて、女
いつのまに ひきて籾をくれぬらん
君か里には 臼なり鳴らし
十丁裏 十一丁表
◯おかし男、山家に在る女を見て、迎えて会いにけり、
さて、程経て、親の里へ帰ける、弥生ばかりに、麦
手の米 多う負うて、男の元に、米貸せと里
より言いやりければ、男
君がため 束える米は はる ながら
かくこそ秋の 紅葉(もみぢ)しにけり
とて、籾をなん、やりたるければ、つくてなん くれで
とて、女
いつの間に ひきて籾をくれぬらん
君か里には 臼なり鳴らし
たハえる
貯ばえる
ひきて
臼でひいて
臼なり鳴らし
臼がないらしいですね
君かため たハえる米は はるながら かくこそあきの もみちしにけり
はるながら→あき
あき 飽き→ もみちしにけり
つくてなん くれで 掛詞
→いつの間に ひきて籾をくれぬらん 君か里には 臼なり鳴らし
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
君かため たハえる米は よて(ママ はるか)ながら
かくこそあきの もみちしにけり
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
君がためた をれる枝は春ながら
かくこそ秋の もみぢしにけれ
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
いつのまに ひきて籾をくれぬらん
君か里には 臼なり鳴らし
『伊勢物語』岩波古典文学大系9 「竹取物語 伊勢物語 大和物語」より写す
いつの間に うつろふ色のつきぬらん
君が里には 春なかるらし