(写真は『オフサイド・ガールズ』先行上演会でいただいた表紙を入れて20ページのパンフレット。結構内容も深く、楽しめる一冊でした。)
オフサイド・ガールズ
アイデア ★★★★★
満足度 ★★★★☆
感動度 ★★★★☆
イランらしさ ★★★★★
話の展開 ★★★★★
面白さ ★★★★☆
台詞やり取りの面白さ ★★★★★
この映画におけるペルシャ語の台詞の抑揚の美しさ ★★★★★
(ペルシャ語を知らない私は、何となく中国語に似た抑揚部分がある遥に感じた。ここの国の言葉も好きだなって、この映画を観て、初めて感じました。)
音楽 ★★★★★
お勧め度 ★★★☆☆
2006年 イラン 92分
監督・脚本 ジャファル・パナヒ
『白い風船』(1966)
『チャドルと生きる』(2000)
脚本 ジャドメヘル・ラスティン
キャスト シマ・モバラク・シャヒ
サファル・サマンダール
シャイヤステ・イラニ
娘と大阪歴史博物館に行き、イラン映画を観た。
この『オフサイド・ガールズ』は今秋、劇場公開予定とのこと。
イランでは女性を保護する意味や、男女同席できないなどの理由で、女性の男子サッカー観戦や男性のスポーツ観戦全般が禁じられている。
イランにおいて女性が直面する問題を正面から扱いつつも、コミカルで微笑ましいシーンが次々と続く。
サッカーを全く知らない私でも、イランをあまり知らない人でも、楽しむことのできる一作品。
法律を犯してまで、スタジアムに踏み込んだ “オフサイド”な少女たちの奮闘を描いた青春映画 。
トイレのシーンは色々とユニークで、イランらしさがかなり濃厚。
男の女に対するいたわりなども、あらゆる言動や事件を通じて伺える。日本との文化の違いに感心した。
トイレのシーンともなると、笑いの平たい場面も多く、会場中は大きな笑いが渦巻いていた。
トイレにこだわって申し訳ないのだが、印象的なのは
①サッカー場には女子トイレが無い
②トイレに行くまでの間、ポスターを面のように女子にかぶらせて、会場のトイレへと進んだ。 ・・・【ここで爆笑】
③トイレに入っている全ての男子を外に出してから、女子を入らせた。
④トイレの壁などを見ないように目をつぶって入れと忠告。
女子曰く、「面もつけているのに、目をつぶれば何も見えない」
・・・【ここで爆笑】
⑤男子のいらぬ会話(下品、汚い言葉)を聞かないように、忠告。
⑥女子が入っている間中、けんかになろうが、他の男性をトイレに入れなかった。
⑦なんだかいやらしい会話が聞こえるので、警備の兵士がどこかを探しあてた時・・・孫と車椅子に乗ったおじいさんだった。すなわち、孫のおじいさん孝行・・・【ここで爆笑】
など。
コミカルで、ユニークな会話の続くこの映画。
始まってすぐにけらけらと笑い転げていたが、まわりの人たちは結構静かで、はぐらかされたような感じ・・・
家族から聞いているイランの様子や やり取りも巧妙に描き出され、そういった意味でも楽しい映画だった。
チケットを買うときの男女差や値の吊り上げ方は、家族から聞いているなじみの光景だったし、イランのサッカー熱は想像を絶するくらいのすごさ。
家族がイランで、
「イランはサッカーが強い。」
というと、大いに盛り上がり、大いに自慢され、大喜びするらしい。
また夕方、輸送バスのラジオアンテナの壊れ方などはかわいいもので、いつも聞いているイランの車の様子が想像できるような一コマだった。
変装を見破られた少女たちはスタジアム外の一角に集められる。
彼女たちはその状況に甘んじることなく、警備の兵士たちに
「なぜ女性がスタジアムに入れないのか」
と食ってかかる。
「父親や親戚と一緒なら良いのか・・・」
すると警備の兵士曰く、
「お前の親父も他人からすれば、普通の男だ。」
は笑いの壺にはまってしまった。
全てにおいてイランの建前社会が描きつくされている部分もまた魅力的だ。
「日本人女性なら観られたのに・・・」
「ペルシャ語がわからないから、汚い言葉もわからない」
「日本人なら良かった・・・」
の言葉にはぐさりと来るものがあった。
なぜなら、イランのワールドカップ出場がかかった『アジア予選の対バーレーン戦』の時も、日本人女性解説者やレポーターなどが、多く詰め掛けているからだ。
イランのお国柄や事情を考えると、いくら法律で禁じられていないとしても、少しは配慮すべきではないのだろうか・・・イランの考えや法律が正しいか否かは別問題として、現時点の原事情を考えると、難しい問題に直面する。
多くのイラン人の感情を考えることなく、日本は少し営利主義に走りすぎかもしれない。少し恥ずかしい思いがするのは私だけか。
バスに乗る女の子の中、爆竹などを持っていた容疑でつかまった男子一人、
「お願いだから女と一緒のバスに乗せないで。」
「人に観られたら、恥ずかしいよ。」
の言葉は印象的。
バスの中でイランのワールドカップ出場が決まり大喜びする女の子たち。
決まった瞬間、涙を流し、肩を落としていた女の子がいた。
以前のサッカー観戦で押し倒され、下敷きになった七人。
そのなかに友だちがおり、変わりに或いは一緒にサッカー観戦したかったのだという。
女の子は、爆竹や花火を持った男の子に、七本の花火をつけて、七人と共にイランチームのワールドカップへの出場を祝う。
ここで、私の琴線は切れる。
この映画は実際にイランのワールドカップ出場がかかったアジア予選の対バーレーン戦が行われるアザディ・スタジアムの様子と同時進行させたものらしい。
キャストも素人を多く起用し、キアロスタミ監督の映画の作り方にも似た部分が感じられる。
話の展開は緻密で抱いたんだが、あの
「取れない、取れない・・・・・・取れた」
で印象の残る、簡単なあらすじのイラン映画『鍵』(イランの中では結構好きな映画)をも思い起こさせるのはどういったことだろうか・・・
イランの郷土愛や本質的な優しさ、情熱などの触れることのできる秀作の一つだと感じた。
それにしてもイラン女性は美しい人も結構多い。
うらやましいじゃありませんか・・・
『オフサイド・ガールズ』公式HP ↓
http://www.espace-sarou.co.jp/offside/