日常

山崎隆「奇跡のりんごスープ物語」

2013-09-20 08:17:47 | 
山崎隆さんの書かれた「奇跡のりんごスープ物語」講談社(2013/6/4)を読みました。

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<内容紹介>
世界でただ一人、無農薬無肥料でりんご栽培に成功した木村秋則さん。
その木村さんに惚れ込んで、地元の食材でフランス料理の「スペシャリテ」を作る!
そう意気込んだ著者は、冷製のリンゴスープにトライする。
フランス料理のメインダイニングにおいては、自分の名前を冠したオリジナル料理を提供しなければならないのだ。
地場食材を使ったシェフの創作料理を「スペシャリテ」と呼ぶが、日本一の生産量を誇るりんごこそ、青森の代名詞。
しかし、そこからが苦難の道のりだった。

木村秋則さん夫妻や自家配合飼料での鶏卵や豚肉を生産している長谷川自然牧場の長谷川光司さんなど地元の人たち、
日本を代表するフレンチの巨匠・三國清三さんとの交流。
函館や各地の街おこしに取り組む同業の仲間たち。
いろんな人たちに支えられ励まし合って試行錯誤を繰り広げる。

そしてついに、りんごの実だけではなく、皮も種も芯も残すところなく使った
レストラン山崎のスペシャリテ「木村秋則さんの自然農法栽培りんごの冷製スープ」が完成した。

木村さんとの出会いから20年。この物語は、「奇跡のリンゴ」が生んだもう一つの奇跡の物語である。

<山崎/隆>
1952(昭和27)年、青森県西津軽郡森田村に生まれる。
青森県立五所川原工業高校機械科卒業後、弘前、東京、仙台で料理修業。
82年に弘前市へ帰郷。料理修業のため、たびたび渡仏。
とくに86年には、一つ星「ラ・テラス」にて、ジェラール・アントナン氏に師事。
同年、「ホテル法華クラブ弘前」洋食課料理長に就任。
89年、「弘前フランス料理研究会」を設立し、会長に。
92年、「フランス料理研究会全国連絡協議会」料理講習講師。
94年、「レストラン山崎」を開店。
99年、有限会社「弘前キュイジーヌ」を設立し、代表取締役に。
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自分が無性に青森に行きたくなり、意識の中では既に青森旅行をしていた時期、この本が偶然目に飛び込んできて、一気に読みました。この本に感動してエネルギーが移動してきたのを感じた事も、自分の中で青森行きへとつながる伏線になったのでした。


奇跡のリンゴの木村秋則さんの著作を愛読していたので、いづれ木村さんのリンゴを実際に食べたい!と思っていた。
今回、弘前にあるレストラン山崎への旅でついに実現。それも全部含めた青森への旅は楽しいものでした。
(→青森(2013-09-17)
*昨日、だるまん「火の章」講演会を聞きにいったら、そこの2次会で山田スイッチさん主催の縄文友の会のイベントに出た事がある青森在住の方がおられた。石神神社の事もずいぶん前から気になっておられるとのことだった。ランディさんもお好きだとの事。その奇妙なシンクロニシティーに驚かされました。。。






この著作では、山崎さんの色々な苦労が正直に朴訥と書かれていて、そのまっすぐな姿勢にいたく感動した。


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フランス料理の原則とは、天然、自然の法則を忠実に守ることである。
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本書で書かれてあるように、山崎さんは天然・自然を体現している野菜や料理法を追及する。
ただ、現代料理界ではそういう姿勢は時代に逆流し、なぜか異端児になっうてしまう。その上、色々な妨害を受けたり誹謗中傷を受けたり様々な困難がたちはだかる。木村さんと同じ逆風を進む。


この現状は、現代医学と同じだと思った。
偽物が真実の顔をして鎮座して、真実は偽物のように辺境に追いやられる。奇妙な反転構造。

医療も、本来は人間の自然治癒力を引き出すのが仕事のはずなのだが、今は大量の薬に依存し過ぎている。人間本来が持つ天然自然の力を弱めているように感じる。そして、そういうことを現代医療の現場で遠慮なく素直に言うと完全にういてしまう自分がいるわけで。(^^; 


ただ、料理に素人の自分が山崎さんの本を読んでいると、「そうだそうだー!」と思い、山崎さんの考えが至極当然に思える。料理世界の常識を知らない分だけ、色眼鏡なく素直に考える事ができる。基準は『天然自然』。
専門分野というある閉鎖空間では、前提自体が疑われなくなるのはよくあることだ。だから、一度ルールさえ作ってしまえば勝ちだ、と思う不届き者も出てくる。

だるまんの陰陽五行で言えば、「土」が持つ悪い側面(常識や固定観念)が負の吸引力として働くのだろう。だるまんでは、「土」の状態を脱して「水」(自我や自由)の状態に相克ルートで進化して進んで行くには、「金」という触媒が不可欠だと示唆するわけですが・・・あまり書くと本書からは脱線なのでこの辺で。(→堀内信隆「だるまんの陰陽五行シリーズ」(2013-06-18)



本書の中で、
『肥料は点滴、農薬は抗生物質の役割を果たす。』
と、現代医療が悪いメタファーとして喩えられているように、薬で人為的に育てた野菜は天然自然の力を十分に発動できない。自然に対応できない温室育ちの弱弱しい野菜に育ってしまう。人間も野菜や果物も、自然という観点から見ると同じ地平線で語れる。





本書で出てくる木村さんの野菜に対する洞察の深さにも感動する。


例えば。

・アンデスのトマトは石ころだらけの土に長く根を張る。土のわずかな栄養分を探してずっと伸びる。普通栽培のトマトは水をやるから甘くならない。

・大根は十字花野菜と言う。太陽の回る方向に一緒に回りながら育って行く。だから、大根を抜くときは逆方向にねじをゆるめるように引っ張る。

・お米を水の中に常温で3カ月置く。
無農薬米は甘酸っぱく発酵したいい香りがするが、農薬や肥料をつかったお米は茶色からどす黒く濁り、鼻をつくような腐敗臭がする。

その理由は、自然栽培のものは細胞分裂で大きくなるが、肥料や堆肥で育てた刊行栽培のお米は水膨れで大きくなる。
水膨れした細胞は、細胞壁がゴムのように伸びて薄く裂けやすくなり、菌が浸透しやすくなる。


などなど。


自然を客観的に深く観察した人だからこそ、既存の常識に縛られない本質を洞察しているのだろう。




木村さんとの交流以外にも、四ツ谷「ホテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三さんとの交流にも熱いものを感じた。
三國さんもフランス料理を普及する使命を感じておられる方のようで、山崎さんと利益度外視で様々なイベントに協力されているようだ。










木村さんは、世界初となる無農薬のリンゴ栽培が成功するまで8年間、りんごは実らず収入はゼロ。
サラ金から借金をして夜はパチンコ、キャバレーでお金を稼ぐ。
6年目には自殺を決意して岩木山に行き、首吊り直前まで行く。死の間際で、野生で自生するドングリの木をリンゴの木と見間違い、その自然の現象のあり方にヒントを得て、生き続ける事を決意。無農薬リンゴの成功へとつながる。



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その栽培哲学とは、「育てず、手助けするだけ」。
畑を自然の状態に近付け、りんご本来の生命力を引き出す。
そこには人と自然の魂の対話がある。
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文章で書くと当たり前で易しいことのように思える事だが、当たり前の事こそ難しいのだ。

著者の山崎さんも近い方の突然の死を経験する。死はご家族全員を絶望の縁へ連れて行く。そんな死の体験から現実に復帰できない激しい葛藤が書かれている。読んでいて、そのかなしみが自分のこころにダイレクトに伝わってくるようだった。

木村さんが死の間際で光明を得たように、山崎さんも「死」の体験を通過することで「魂の世界」を垣間見る経験をされるのだ。「霊魂」と書かれた章もある。

そんな死の体験、異次元や異界との接点、それに導かれた魂(霊魂)に触れる体験。木村さんの劇的な反転と似ていると思った。
そして、自分もこの章で思わず涙したのでした。
人間は、上に昇るためには人生から一度落とされる経験を要請されるようだ。
(ちなみに、木村さんはUFOに乗せられ「地球のカレンダー」という地球の寿命を見せられる。自然を取り戻すために時間が少ないことを知る。自然栽培を日本に普及されるべく、木村さんは自分の身を粉にして日本全国を行脚することにつながるのだ。)




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(木村さん)
「野生のものは強いべ。生き抜く力をそなえていないとよ、死んじゃうもんな。
肥料もやらないのは、つまり人為的な栄養分を与えないことで、本来の力を引き出してあげるの。」
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(木村さん)
「笑いは人間だけの特許だよ。ほかの動物は笑わないもの」
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自分は自伝のようなものはとても好きだ。

その人の人生を追体験しているよう。喜びも悲しみも怒りも楽しさもすべて、自分の中に流れ込んでくる。共鳴することで浄化へつながる気がするからだ。

山崎さんの料理への熱く純粋な思い。そして、木村さんとの深い交流。
その全てに深い感動を覚えました。自分のお腹にどすんときた。






そういえば。

レストラン山崎で「木村秋則さんの自然農法栽培りんごの冷製スープ」をいただいた感想。
不思議と「懐かしい」味がした。初めて食べたのにも関わらず・・。
一つ一つの細胞に染み込むような優しさ。


普通のリンゴは甘いのだが、それは人間の味覚に合わせて人為的に加工された味なのだと思う。
そういう単色の人為的な味というよりも、もっと太古の記憶を呼び覚ますような太古の味がしたのです(太古の味なんて味わったことがないにも関わらず)。

これが、天然自然の味、というのかなと思いました。自分のDNAが記憶しているのだろうか。


人間の体は「自然治癒力」という偉大な力が内蔵されている。宇宙や天然自然の歴史や叡智が凝縮されている。
それは人類だけのギフトではなく、自然界に存在する植物や動物や果物も・・・すべて内臓された記憶庫なのだと思う。だからこそ、自然を追及する営みは、壮大な時間軸と共にあるのだ。



今は自然へ敬意や畏怖が失われつつある時代だけれど、宇宙や地球そのものも同じように自然治癒力を持っている。
人間という地球への寄生体が悪さをし出すと、いづれ天然自然は自然治癒力を発動させて、あるべき調和へ戻ろうとするのだと思う。

だから、人間は地球への寄生体として悪さをして不調和を起こすのではなく、地球を耕し共に成長する存在として、自然治癒力と同じような調和の心を大切にしていかないといけない。
そう言ってしまうと、あまりに規模が多きすぎて非現実的な気がしてしまう。ただ、現実的にはそれぞれが自分の目の前にある仕事や生活を通して実践していけばいいのだと思う。医療畑にいる人は医療や医学の世界で、農業をしている人は農の世界で、生活をしている人は日々の生活の中で・・・・。そういう力が合わさると、宇宙の運命を変えうるほど大きな大きな力になりうるのだろう。実際にそうして動き出している人が大勢いるのだから。

やや誇大妄想風になってしまったが、自分ができる範囲で自分もやりたい!と鼓舞された。
そういう風に、色んな勇気や元気を頂いた本でした。

4 コメント

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山崎さんの料理、美味しいよね。(^-^)p (スイッチ)
2013-09-21 11:26:02
スイッチです。
だるまんの会での偶然、びっくりですね!
うちのイベント来てくれて人に会ったんですか~。縄文好きな方なのですね。(^-^)p

偶然って本当に神様からのプレゼントだと思います。
「いなばさん、青森に遊びに来ないかな~」って思ってたら、本当に来たからね。(笑)
私の願いごとはいつもよく叶います。

口に十回出して言うとよく叶うのは、「叶う」という字が「口に十」と書くからなんだと思うんです。
うちのエレキが言うには、いなばさんが来る前に「福島でソウルメイトができたんだよ!」という話を私、10回くらいしていたらしいです。(笑)

そして偶然なのですが、木村秋則さんの家で取って下さっている新聞が、私が地元で「エコハンター」という連載をさせて頂いている弘前の陸奥新報紙で、ある時飲み屋で得意のエジプトカード占いを披露していたら、前に占ったことのある女性に急にお礼を言われたことがあったの。

「先日はどうも」 って。
「へ?」と思っていたら、「私、木村秋則の娘です。新聞に自然農法のことを書いていただいて、父の野菜のことも書いていただいてありがとうございました」って
言われたんだよね。

娘さん、同い年くらいだったー。
びっくりしたー。

それで、また偶然なんだけど、森のイスキアでもその陸奥新報紙を取ってくれていて、スタッフの皆さんが連載を読んでくれているんです。私の一番伝えたいことは、「生ゴミは土に還ること」なので、新聞紙上ではよく生ゴミ堆肥をとりあげていたんです。

それで、この間初女さんの「いのちの森の台所」
を読んだら、初女さんが「いのちあるものはすべて、土にかえる。きれいななお花も野菜も、土から育つ」と語られていて。

同じ思想を持っていたことにすっごい感動したんだよね。
土に還るという思想は、最初の頃の初女さんの本には出てこなかったんだけど、今、木村さんの自然農を広める取り組みもあって、やっぱり土から生まれて土に還るっていう気持ちが、たくさんの人に芽生えて膨らんでいるのが嬉しい。

そんな気分なんです(^-^)p

すいっち☆
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さすがスイッチさん!! (いなば)
2013-09-24 20:47:26
>>スイッチさん
そうですよ!!
まさかあんな広い東京砂漠で、そんな縁深い人とお会いするとは夢にも思いませんでした。日本は狭い。でも、なんだかつながってる人はほんと意外な形でつながってますよねぇー。
それを偶然ととるか必然と採るか、そこはロマンの違いですね。

自分の青森行きも、スイッチさんの引き寄せのおかげなのですね!
確かに、やけに直感的に突然青森に行きたくなったわけです。
自分のアンテナの周波数を丁寧にチューニングして手入れしていれば、そういう青森からの通信も無事に受け取れてうれしい。
ただ、あまりこういう話ばかりしていると、「あの人たちって電波系だよねー」って言われますね。笑


ソウルメイトに関しては、木村さんがまさにそのままズバリの本書いてますよね。まあ、これもまたロマンですよね。そういう風に考えた方がいいじゃない!っていう世界だと思います。


あのスイッチさんのよく当たるエジプト占いを木村秋則さんの娘さんにまでいつのまにかやっているなんて・・・・すごすぎます!!今度、いつか一緒に木村さんに会いに行きましょー!レストラン山崎の山崎さんにも連絡したいですね。本をお渡したし、山崎さんのブログでもとりあげて頂いているので、きっと覚えてくれていると思います。(そう期待) 山崎さんからも「木村さんとの連絡は、私が取り持ちますよー」と言って頂きましたし。(そういうことはよく覚えている)

木村さんにスイッチさんがエジプト占いしたら、どんなカードが出てくるのか興味深いです。全部UFOのカード(そんなのない?)が出てきたりすると漫画の世界ですが。

初女さんとも深い部分でつながっていて素晴らしいです。
人間も含め、いのちあるものはすべて、土にかえりまよね。
こういうのは「概念」としてわかっていても、自宅の堆肥にして本当に実践している方は珍しいし、スイッチさんさすがです。

土に還り、天に還り、自然や宇宙に還る。そういう宇宙も含めた壮大な生命観をみんなで共有できれば、時代はどんどん変化していくと思います。実際、すでにそういう方向に向けて、動いているようですね!(^^

いい社会になりますように!と多くの人が祈りつつ、実際に行動を起こしていけば、ある時にマイノリティーがマジョリティーになって、価値観は反転していくはずだと思います!


P.S.
「だるまんの陰陽五行」シリーズの漫画、先日作者の堀内先生にスイッチさんへ、と書いてもらぅったサインをもらってきたので、今度送ります。まだ続編買わないで下さいね。お楽しみに!(^^
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だるまん! (スイッチ)
2013-09-25 16:25:56
サインまで入れて下さったんですか!
恐縮です!

それじゃ、お礼に私のお薦め本送りますね!(^-^)p
うちも本がありすぎてやばいです。(笑)
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水の章 (いなば)
2013-09-27 22:23:22
お楽しみに!!(^^
だるまんは、まだ水の章(おそらく最終章になる)だけが出てないんですが、ほんと楽しみですー。
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