うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

分れてもすえに

2006年11月22日 | お出かけ
日曜のお出かけは、桑名。諸戸家庭園と旧諸戸家邸(六華苑)でした。うちのナビは一宮から津島を通って弥富に行き長島から桑名に抜けよと指示。1時間半弱で桑名到着。空は暗く時に雨降りの日曜。諸戸家庭園は人影少なく、ほとんど貸切のような状態。撞球室、高く嵩上げし西本願寺を模したというお屋敷。庭は琵琶湖八景に作ってあり、ドウダンが紅く照っている。運河に続く庭沿いにはレンガの壁。あまりの広大さに人家と鳥は気づかぬように、気ままに鳴いている。諸戸家初代清六は、喰うのに時間のかかる温い飯を自戒し、冷や飯を食べて莫大な富を得た。山林王となった。幾らか商売がうまくいかなくなり気鬱になっていたときに、新築をして厄を払えというようなことを言われ、母屋を作ったと言う。商売がうまくいかなくなって作ったおうちなの、これが!?という煌びやかではないが芯の硬い美しいお屋敷。きっと彼の仕事振りもこのようだったのだろう。くるりと川沿いの道を歩き、2代目が建てた洋館を持つ六華苑へといく。
                         
2代目の建てた洋館は塔を持ち、やはり広大な池回遊庭園を見下ろすことが出来る。そうして明るく伸びやかだ。園内のレストランで食事をとり、少しだけ桑名の街を走ってみた。あらあら、「柿安」さんだ。お肉を売っているようで、たくさんの車が止まっている。はいってみると、小型スーパーのように、野菜やらパンやらデリカやら。色とりどりに盛られたお弁当やら。併設のcafeレストで牛丼も食べられる。おお、残念。さっきの食事でお腹は一杯なんですよ。次回は必ず必ず、ここで牛丼を食べ、お弁当を買って帰ろうと心に決め、お肉やらお野菜(キャベツ100円。桑名まできて、キャベツを買ってしまった・・・)やらお惣菜やらを買った。向かいの路地には鏡花の小説に出てくる饂飩屋、今はその名も「歌行燈」というそうな。しかし、残念ながらお腹は一杯。次回は、牛丼とお弁当とうどんを、必ず必ずと思いながら通り過ぎた。辻を越えると、「歌行燈」の中の宿屋(湊屋)のモデルとなった「船津屋」さんの美しい格子が見えてくる。うちに帰って調べたところ、船津屋さんのお食事は格の高いお札が必要のよう。うーん、仕方ない、次回はやっぱ牛丼とお弁当とうどんだね。お土産は柿安さんで買った食材と、貝新さんの「志ぐれたまり(315円也)」。しぐれの佃煮を作った溜りをブレンドしてあり、しぐれのだしが出ているとのこと。ふむふむ舐めてみると確かにこれはしぐれの味ですよ。今日はハマチのみぞれなべ。この溜りと、ポン酢、2種の味で食べてみよう。
桑名は古いおうちがたくさん残っている。黒い壁の低い軒の細かな格子の。宿場であり、後に海運で栄えたこの町。山林王の欅づくりの商店と、レンガ積みの倉と、空色の洋館。
なぜ、こんなにも近代建築は美しいのだろう。商才で富を築いた往時の人の弾けるような悦びが伝わってくる。退廃にはまだ遠く、己の手の中の富を惜しげもなく、あはあはと笑いながら費やしている。そんな快活な気持ちが伝わってくる。自らの才覚を素直に楽しんでいる。そのわかりやすさを時代も許している。
私の時代のお大尽は後の世に、一体何を残すのだろう。みみっちく隠蔽したりするために、嵩のはらぬ金のインゴットとか、汚い茶碗とかだろうか。紙っキレの株券だろうか。せめて、美術館作っちゃうくらいはして欲しいもんだ。
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