【ワシントン=山本秀也】米国土安全保障省は、軍需メーカーのノースロップ・グラマン社に開発を委託した民間航空機に搭載するミサイル防御装置の運用実 験をこのほど開始した。武器の闇市場を通じて世界に広がった携帯式地対空ミサイルに対処するためで、旅客機や貨物機も軍用機なみの防御能力が求められてい る。
「ガーディアン」と名づけられた防御装置は、国際運輸サービス大手「米フェデックス社」のMD10型貨物機に搭載。今月16日、機体の腹の部分にカヌー型のポッドに収まった装置を付けてロサンゼルス空港を飛び立った。
グラマン社によると、この装置は(1)離着陸時に地上からのミサイル発射を感知するセンサー機能(2)ミサイルの「目」にあたる目標追跡機器にレーザー光線を照射する防御機能-をもつ。「目つぶし」に遭ったミサイルは、目標を見失って墜落する。
軍用機の技術を民間転用したものだが、軍事筋では「民間機の場合、機体構造や見張り要員がいないことで、離着陸時にミサイルの発射を知ることが難しかっ た」として、民間機に特化したセンサー搭載を評価する。これまでの開発段階でも、この感知センサーの精度がたびたび問題となっていた。
歩兵が肩に担いで航空機を狙う携帯式地対空ミサイルは、これまで米国、旧ソ連などで50万基以上が生産されたが、武器市場を通じた取引で相当数が行方不 明になっている。2003年にはイラクでDHL社の貨物機が離陸直後に旧ソ連製のSA7型ミサイルの攻撃を受けるなど、民間機を狙ったテロ攻撃にすでに使 われ始めていた。
イスラエル航空では、02年11月にケニアで同社機が狙われたことで、熱源の放射でミサイルを惑わせるフレアの発射装置を自社機に導入する方針を表明し ていた。試験の始まった「ガーディアン」について、軍事筋では「フレアを予防的、消極的な防御とすれば、ミサイルへのレーザー照射はより積極的な防御」と みている。
「ガーディアン」の開発は、こうしたテロの危険を踏まえ、米国土安全保障省とグラマン社がこれまで3年間にわたり取り組んできた。運用試験で有効性が確 認されれば、同省では米国内の商用機への導入を図るとしているが、米国内を飛ぶ商用機約6800機への装置導入には「数十億ドル」を要する見通しだ。
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