子宮移植して出産、実施を模索 慶大など指針案
阿部彰芳
2014年4月10日08時22分
子宮がなくても出産を望んでいる女性のために、子宮移植を研究している慶応大などのグループが、国内での実施に向けた指針案をまとめた。提供者には脳死の人や性同一性障害の人も想定している。関係学会や患者団体、市民の意見を聞いて指針を完成させ、実施を目指すという。
子宮移植は1999年以降、海外で10例ほど実施されているが、いずれも出産には至っていない。国内では慶応大と東京大などのグループがサルで実験を重ね、勉強会を開いてきた。このグループが中心となって研究会を立ち上げ、指針案を明らかにした。研究会には日本産科婦人科学会や日本移植学会の理事長も顧問として参加している。
指針案では、移植を受けるのは、子宮が生まれつきなかったり、がんなどの病気で摘出したりした女性を想定。ただし、卵巣があって、体外受精をする際に自身の卵子が使える場合に限った。
子宮を提供するのは、移植を受ける女性の親、姉妹のほか、心臓死や脳死になった人、性同一性障害で子宮摘出を望んでいる人も検討するという。臓器移植法では現在、提供できる臓器に子宮は含まれていない。
研究会によると、生まれつき子宮がない女性は20~30代で推定3500人。がんで子宮を摘出する女性はこの年齢で年に約2500人いる。日本では代理出産は認められておらず、子宮がない女性が子どもを得るには養子縁組しかない。
研究会の木須伊織・慶応大助教(産婦人科)は「子宮移植が選択肢の一つになるように取り組みたい」と話す。
子宮は生命を維持するのに必須の臓器ではなく、臓器移植をすることが妥当なのか倫理的な問題もある。
子宮移植はサウジアラビアやトルコで試みられたが、出産に至らなかった。スウェーデン・イエーテボリ大のチームは2012年秋から9人に実施し、7人が移植に成功した。うち4人は、2月に体外受精へ進んでいるという。(阿部彰芳)
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