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保守記事。480 自由の国 アメリカ

2019-06-27 11:14:32 | 記事保守

<ポットの中は今…>「私の通勤は小旅行」職場までバスで3時間半 交通費支給されないロス移民介護士

6/15(土) 12:27配信

◇移民家事労働者の3時間半のバス通勤に同行して

 私は5月末までフルブライト奨学金のジャーナリストプログラムで南カリフォルニア大に在籍し、移民家事労働者に関する研究をしてきました。家事・育児を家族以外の人が有償で担うことが、これまで家事労働の主な担い手となってきた女性の生き方にどのように影響しているかをテーマに、家事労働者49人と、家事労働者を雇用する21人にインタビューしました。

 今回は、カリフォルニアの移民家事労働者へのインタビューでよく耳にした、通勤の問題をリポートします。車社会の米国ですが、インタビューした家事労働者のほとんどが車を持っていない上に、交通費が支給されておらず、節約のために公共交通で出勤していました。ロサンゼルスの渋滞はとりわけ悪名高いうえに、バスを使えば、停留所が多く、乗り継ぎも含めて余計に時間がかかります。インタビューを重ねる度に、約20キロの距離をバスで2時間かけて通勤するという家事労働者の話に驚きを覚えなくなる中、約3時間半かけてバスで出勤する介護士、メリーアン・サビ(38)に同行することにしました。

 ◇通勤は小旅行か、ある種のアドベンチャー

 4月のとある月曜日の午前4時10分、待ち合わせ場所のバス停にメリーアンは小さなスーツケースを転がしながら、さっそうと登場しました。夜明け前の、車も人もない道路にメリーアンの「おはよう!」という声が響きます。目は少し充血していますが、声には張りがありました。

 フィリピン出身のメリーアンは週5日、住み込みで80代の男性の介護をしています。月曜日から土曜日の朝まで働き一旦自宅に戻りますが、翌月曜日の午前8時半には再び仕事が始まります。

 「職場」はメリーアンの自宅から約60キロ。車で行けばラッシュの時間でも1時間ちょっとの道のりですが、車を持っていないメリーアンにその選択肢はありません。米国では、同じ方角に向かう車に同乗させてもらい、料金を支払う携帯アプリサービス「Uber(ウーバー)」が広く利用されています。アプリに登録された運転手と利用者がマッチングされ、料金はその時の運転手の供給率とニーズで変動する仕組み。メリーアンが通勤にこのサービスを利用するとすれば、ラッシュの時間と重なり70~120ドルかかります。ラッシュでなくても45ドルほどです。メリーアンはフィリピンに残した12歳の息子に仕送りをしており「週1回の通勤だけど、そんな大金は使えない。時間はかかっても、バスしかないでしょ」ときっぱり言い、「私の通勤は小旅行か、ある種のアドベンチャーだ」と笑って付け加えました。

 私が同行した日の彼女の「通勤小旅行」は次のようなものです。



 午前4時38分 1本目のバスに乗車

 午前4時47分 下車、2本目のバスを待つ

 午前4時55分 2本目のバスに乗車

 午前6時    下車、3本目のバスを待つ

 午前6時7分 3本目のバスに乗車

 午前6時45分 下車し、近くのカフェで朝ご飯

 午前7時40分 4本目のバスに乗車

 午前7時47分 下車し、「職場」まで徒歩

 午前7時52分 到着



 この日は、公共交通機関を使うことで排ガス削減に貢献しようという「アースデー」。そのため一部の公共交通料金は無料となり、運賃は計4ドル。通常でも8ドル25セントで、ウーバーとは比べものにならないほど経済的です。ただし渋滞にかかってしまうと、3本目のバスの到着が7時半~8時になってしまいます。そうなると、カフェで朝ご飯を食べずに4本目のバスに乗り込むのだといいます。メリーアンは「午前5時半には渋滞が始まる。渋滞にはまるバスには乗りたくないけれど、どうなるかは読めない。1本逃しただけで渋滞ということがよくある」と説明しました。

 ◇住み込みがいいのか、通いにすべきか

 アメリカでは、住み込みの介護士やナニー(子守)が多くいますが、住み込みであることで仕事とプライベートの境が曖昧になり搾取につながりやすいことや、家事労働を奴隷が担っていた時代をほうふつとさせることから反対する意見もあります。また、カリフォルニアで2016年に制定された家事労働者の権利に関する法律では、全家事労働者の時間外手当支給がようやく認められました。そのため、雇用主側は長時間シフトを分割し、時間外手当が発生する住み込みをなくそうとする傾向にあります。

 メリーアンは「アメリカは居住地区が人種や年収で大きく分かれている。私のクライアントの家は、白人の中流階級以上が集まったエリア。私が近くに住めるような場所ではないし、職場がいつ変わるかも分からない。車を買って維持するお金はないし、毎日3時間半もかけて通えないから、私は住み込みがいい。クライアントにも、複数の介護士を雇うより1人に介護してもらうことを好む人もいる」と指摘します。

 メリーアンは過去に、住み込み先にオフの日も滞在し、「自宅」としていたこともありました。個室でプライバシーは確保され、オフの日に仕事を頼まれることはありませんでしたが、時折、たった一人になるために1泊100ドルほどのホテルに宿泊したといいます。「周りに人がいる環境には慣れているけど、誰もいない空間でホッとしたい時がある。住み込み先は自分の『ホーム』ではなく、荷物をいつもスーツケースに入れている『ホームレス』だったから」。その経験から、今は週2日滞在するための部屋を個人で借りています。「週2日のために家賃を払うのはばからしいと言う友達もいて、完全な住み込みを好む人もいる。でも私はホッとできる場所がほしい。どっちがいい、悪いとは言えない問題。さまざまな選択肢があって、それぞれにあった交通費の支給や、完全な住み込みをすることで課せられる追加の仕事への正当な報酬があればいいと思う」と話しました。

 ◇介護士の本当の時給は……。

 メリーアンは、長時間通勤を「車で移動しているだけでは知ることのできないロサンゼルスを知ることができる」と楽しむようにしています。

 2本目のバスを待っている時、メリーアンが言いました。「次のバスはディズニーランド行き。でも、この時間に乗っている人はみんな『労働者』で誰もディズニーランドには行かない。よく見ていて。5時半には満員だから」。その言葉通り、バスには蛍光のベストを着てヘルメットを小脇に抱える人、ペンキだらけのズボンをはいた人など、建設現場で働いているとみられる人が次々に乗車し、5時半過ぎには座れない乗客が10人ほどいました。「みんな、遅刻したらクビになっちゃうから早めに行くんだろうね。こういう人たちが社会を支えていると思わない? 私もその一人だと思うと誇らしい」とメリーアンは笑いました。

 メリーアンが午前4時に家を出る理由は、渋滞を避けたいだけではありません。仕事に対する強い責任感があるのです。「仕事が始まる前には心を落ち着かせたい。時間内に到着できるかと不安になったり、時間ギリギリに到着して慌てたりしている状態でクライアントに接すれば、間違いにつながるし、心地よい仕事をしてあげられないから」

 住み込みの場合の給料は、日給で提示されます。時給換算で12~15ドルというケースが多いのですが、交通費や通勤時間などが加味されていないことを考えれば、実際の時給はもっと低いと言えます。

 バスに揺られながらメリーアンの高い意識を聞いていると、他の介護士やナニーたちから聞いた話を思い出しました。2時間以上かけて通勤する彼ら、彼女らからも、休日にクライアントの好物のお菓子を買いに遠出したり、介護・育児技術トレーニングに自費で参加したりといった話を聞きました。「通勤小旅行」を通じて、時給を聞くだけでは見えてこないロサンゼルスの介護士の現実に気づかされた思いです。【石山絵歩、敬称略】

 

保守記事.272-130 変な国。



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