東京オペラシティア-トギャラリ-で、1月14日から3月26日まで開催されていた
「project N」は、故・難波田龍起(なんばた たつおき)氏の遺志を受け継ぎ、若手
作家の育成・支援を目的として、1999年12月からコリドールで開催している展覧
会シリーズ、である。
ギャラリー風景
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その中から、私がここで紹介するのは、小林 浩氏の作品である。
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小林 浩
1967年 福島県生まれ
1991年 東京芸術大学美術学部絵画科油絵専攻卒
1995年 ニューヨーク市立大学ブルックリン・カレッジ美術学部修士課程終了
2002年以降、文化庁派遣芸術家在外研修員としてインド、アメリカ、カナダに
滞在、野村国際文化財団芸術文化助成によりオランダに滞在
現在、千葉県在住
個展、グループ展多数開催
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<生き物のぬいぐるみたちと夢の世界>
彼が、ここにあるような作品を発表し始めたのは2004年頃からで、それ以前は
カラフルな花の絵を描いていたという。今ここで観る絵画は、ぬいぐるみであっ
たり、小さなこけしのような人形だったり、あるいは、空想の世界の可愛らしい
動物たちが、空中で躍動したり、浮遊して楽しんでいるかのような、夢の世界、
空想の世界を思わせる絵画である。
<ブルーと光の交錯>
これらがギャラリーの廊下のようなスペースに飾られていると、絵画の中から
飛び込んでくるイメ-ジと、青い色と、光の交錯によって夢幻の空間に誘われ
ているような錯覚を抱く。
<映像の世界の感覚>
しかも、絵画の中から、ふわっとした柔らかい感触が伝わってくるようで、心が
和む。これらの作品は、「絵画」の世界というよりは、むしろ「映像」の世界の
作品と呼ぶ方が相応しいようだ。
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<これらの作品はどのようにして出来上がるのであろうか>
ーーーデジタル映像の世界ーーー
展覧会では説明者が見あたらなかったので、小林浩の解説書を読むしかない
のだが、時代の最先端を行くデジタル映像の世界の作品のようである。
自分で撮った写真をコンピュ-タ-に取り込み、グラフィック処理をして出来上が
ったイメージを、アクリル絵具によってキャンバスに移し変えてゆく、のだという。
その段階では、オリジナルの写真を想像することは出来ないほど変貌している
と書いてあった。
これらの絵画を見ると、先ず、浮遊している。しかし、浮遊の中で、一瞬の静止し
た状態を捉えているように見える。そして、観ている者が息を吸ったり、或いは、
息を吐いた瞬間に、止まっていた時間が直ぐに動き出すかのような錯覚にとら
われる。彼の絵画の中には、デジタル映像を見ながら、一時停止のボタンを押し
たり、再生のボタンを押して止まった映像を再び動かすようなイメージがある。
このような作品を描き始めた当初の作品は、絵画と写真の関係を追求した作品
のように見えたが、現在の彼の作品は、絵画と映像の関係を探求している、と
解説されている。
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<村上隆のポップアートの世界とどのように違うのか>
小林浩は1967年生まれだが、村上隆は1962年生まれだから、村上の方が5年
ほど年上であるが、ともに東京芸術大学美術学部出身である。
小林浩の世界は、先に見た村上隆のポップアートの世界と境界を接しているの
だが、しかし、明らかに、村上隆らが目指している世界とも何かが異なるようだ。
<現代芸術とは>
彼らの世界を表現する言葉も多岐・多様である。
「絵画」という表現、「アート」という表現、
「画家」、「芸術家」という表現、「ア-ティスト」という表現、
「抽象」と、「ポップアート」と、「デジタル映像」の世界の違い、
「展覧会」と云ったり、「アートフェアー」と表現したり・・・・・。
「現代芸術」あるいは「現代美術」という表現を聞くが、この言葉の範疇には、所謂、
伝統的な芸術も入るが、一般人にはガラクタとしか見えない物を並べただけの作品
もそのような表現で呼ばれている。東京都現代美術館で開催されていた「ポーラン
ド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリ-の現代美術」がそれを如実に物語っていた。
もっとも、一番大きなタイトルは、「転換期の作法」と書いてあったので、「なるほど」
と思ったが・・・・。
芸術の世界も、「現代」は、「混沌」の世界なのかもしれない。
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(春 眠)
アクリル絵具、キャンバス
145.6CM×145.6CM 2005
(デッド・ヒート)
アクリル絵具、キャンバス、パネル
150.0CM×300.0CM 2005
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