おじんの放課後

仕事帰りの僕の遊び。創成川の近所をウロウロ。変わり行く故郷、札幌を懐かしみつつ。ホテルのメモは、また行くときの参考に。

街なかを離れて(1

2023年02月09日 | 道央のホテル

今日もまた、

「ひので」から始まるわけだが。

昨日は、悲しいことがあったので。

その街なかを離れたくて。

仕事のスケジュールと、

時間の制約とから、

選択肢は、

定山渓方面に、限られるわけだが。

にしても……

定山渓温泉郷の、無惨さよ。

 

ここ数年で、

定山渓温泉郷は、滅んだ。

 

きっかけは、

数件の旅館の、改装だった。

どの旅館も、

改築、改装の時期を迎えていた。

改装を終えた旅館から、

宿代を、高価格帯へと移行した。

それを見て、我も我もと、

既存の旅館もまた、

こぞって高価格帯へと移行した。

移行に耐えないと思われた老舗は、

次々と、経営を放棄せられた。

なかには、経営者が逃げたあとも、

客に申しわけないと、

従業員が、場合によっては無給で、

予約を全うした老舗もあったという。

結果、足元の価格帯はガラ空きとなり、

わずかな富裕層を、

十数件のラグジュアリー旅館で、

奪い合う形となった。

しかし、

この不況のさなか、

富裕層は、どのくらいいるのだろう。

そのうちのどれだけが、

定山渓などへ来るのだろう。

バスから眺める、

現在の定山渓温泉郷の景色を見て、

客は困惑するだろう。

きらびやかで壮大な、

新装の建物の脇からは、

今や廃墟と化した老舗旅館の影が、

そこここに望まれる。

道路は掘れ、道草は荒れ、

道端には、撤去途中の瓦礫。

そのなかから、壊れた土管が、

虚しく天に伸びる。

 

デストピアとは、このことか。

 

そして、開け放たれた、

足元の価格帯へは、

今、中華企業が、手堅く、

実に手堅く、進出をキメている。

終わった。

定山渓温泉郷は、間もなく、

ティンシャンケ温泉区とでも、

呼ばれることになるだろうな。

五年前なら、それでも、

インバウンドでザクザク、

稼げただろう。

残念ながら、

中華のこれまでの

悪いイメージのために、

今はまだ、

そうした足元の価格帯の宿は、

ニッポン人からは、

敬遠されているが。

物はいいので、

世代がかわれば、間違いなく、

再発見されるだろう。

何の考えもなく追随して、

もろともに滅び去った、

ラグジュアリー旅館の

廃墟のなかで。

 

もうね、

そんな未来しか見えない

現在の定山渓温泉郷と、

昨日の悲しいこととから、

同じ臭いがするような気がして。

じゃらんの検索結果を、

閉じようとしたわけだが。

探していたのは、

記憶のなかの定山渓温泉。

市民フレンドリー

(定山渓は札幌市南区の一部)な、

ちんまりとした価格帯と、

似合いの風呂と、

畳間の布団。

窓辺のスペース(名前忘れた)。

部屋食がデフォで、

家の食卓よりもちょっと贅沢。

ちょっと皿の数が多いみたいな。

もうね、

今時、定山渓のどこを探しても、

そういう宿はないわ。

騒々しい、背伸びしたまんまの、

大都会を離れて、

等身大の自分に帰る場所は。

悲しく思って、

じゃらんの検索を、

やめようと思ったんです。

そしたら、

書いてありました。

「小金湯温泉」

と。

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