悲しい空が広がっていた。
もうここに立ってはいられなかった。
ポケットからスマホを取り出して、
特急とホテルのチケットを取った。
そういえば、この9月で「パセオ」が閉まるというぞ。
「エスタ」の東側半分は、来年の夏ごろ。
寂しくなるなぁ……
あの要らない北海道新幹線とやらのせいで、
札幌がまた少し、札幌でなくなる。
じゃあせめて、音くらい撮っておこうかと。
列車のなかで、ぼんやりと考えた。
メルキュールホテル札幌の、喫煙室の窓からは、
ホテルの箱庭を通して、お隣のビルの観音像が見える。
カオスとまでは行かないが、
カオスの片鱗のようなものが、ちらり、ほらりと見えるのが、
「すすきの」という街らしいんだろう。
ふんわり、カリッとしたお魚のムニエルを、
今回も美味しくいただいた。
地上階、札幌駅の北口側に、
「パセオ」への入口がある。
なにやら異界への入口のような(笑
現在、あの要らない北海道新幹線のために、
本来ならば写真の左手へと続いていくはずの北口通路が、
閉鎖されてしまっています。
客は南口通路へと押しかける形になり、
荷物をぶつけたり、肩がぶつかったりと大変です。
実はここが、今回最初の音の場所になる予定でしたが。
あの要らない(以下略)のために、音だけ撤去済みだそうで。
ここ一応インスタレーションで、芸術作品なんですが。
もう壊れた状態になってます。
どんなサウンドが展開していたのか。
この風景からは想像もつきませんが……
なにせ、「パセオ」が閉まるという情報で初めて、
こういうところがあるのを知ったんで。
まあ、閉まるというのでなければ、
ここで取り上げることもなかったろうなとは思います。
店内へは、こんな感じでつながっています。
このインスタレーションは、
テルミヌス広場のレリーフと一体なのだそうで。
振り向いたその先に、テルミヌス広場。
現在は、「パセオ」の過去を回想する企画展示がされてます。
ご覧になってお気づきかも知れませんが、
ここは小さなテナントがいっぱい集まった市場のようで。
今年1月に閉店した「4プラ」の「自由市場」が、
もう少しお上品になって、こちらへと広がってきたみたいな。
静かな店内を、ウインドウショッピングのような感覚で、
楽しく見て回れる造りになっている。熟しているなと。
閉店にでもならなければ、
来てみることもなかったか知れないなぁ……
若者、女性の街って感じで、
オジサンはちょっと入りにくい。
テルミヌス(英語のターミナル)広場のレリーフ。
イベント広場として使ってたそうですが、
いえ、なんでもないです。
さて、ここはこのくらいにして、
札幌の音を撮りに行こう。
まず思い浮かぶのは、やっぱ、コレだろうなぁ。
動いてるのに出くわすのが、なかなか難しい。
ガキのころから、札幌へ出てくれば、
このガチャン、チンという音がどこかにあった。
じいちゃんも、子供のころ、この機械を見てたんだぞと、
孫の代まで共有できる、数少ない話のネタですな。
かつては「そごう」が入っていて、
今は「ビックカメラ」が入っている駅ビル。
その地下に広がる「エスタ」にも、
昔からの札幌の音があります。
確か、正午と午後3時に鳴る。
それ以外の毎正時には、
これらも、来年の夏には消えるということのようだ。
「とうまん」屋さんのある西側半分は残るみたいだから、
そこで聞けるかもしらんけど(笑
あちこち歩いているうちに、
気分もようやく晴れてきた。
でももう、汽車の時間だな……
今日はこの駅弁。
シャケ、イクラ、ウニと、海産物の代表が集まったお弁当。
隣の「やまべ鮭寿司」はお土産。
当初はバレン(弁当の仕切りの野原の断面みたいなやつ)だと思っていたが。
この昆布の型抜きした会社、
ちょっと来なさい。
繊維質でヌルヌルで崩れやすい昆布をまあ、
よくもこんな見事に抜いたなと。
しかもそれを駅弁に使うとか、大好きだよ。
ひょっとして、札幌テレビ塔の、
ジオラマお土産作ってる会社さんかな?
(正式名称「3Dペーパーパズル さっぽろテレビ塔ジオラマ(45pieces)」)
あれ確か、レーザー光線で抜いてるんだよなぁ。
こちらもお見事です。
無常にも、鉄道唱歌が聞こえきて、
心地よい食後の眠りから、突然、旭川駅のホームへと追い出され。
事の次第に追いついてない、自分の頭をゆるがすような騒音を発……
あれ?うるさくないな。
こんな近くにスピーカーがあるのに、
うるさくないな。しかも、ホームの端でも、
同じようにちゃんと聞こえる。
だのにこのサイズ。この貧弱な固定具は。
どういう仕組みなのか、見当もつかない。
もはや魔法だな。
昔ならば、メガホンで、力任せにやるところだ。
うるさくて、近くになんかいられない。
メガホンのサイズもまたデカイ。
環境を味方にするなんて発想は、あの当時は無かったなぁ。
たぶん、ホーム全体が共鳴器になってるんだろう。
その中にいれば、どこでも同じようによく聞こえる。
スピーカーの位置が節の位置なのかな?
そこは本体からの直接の音でカバーしてるんだろう。
なんて、にわか知識を振り回して喜んでいる。
ふと見上げれば、ホームの端からは、
あの悲しい空が、大きく大きく広がっていた。