検証！北京五輪・野球偏

　北京五輪検証シリーズのラストを飾るのが野球。
　既に、いろんな方面から言われているので‘今更・・・’という感じが
するが、あえて記しておこう。

　巷でよく言われるのが‘女子ソフトの選手達の気迫に比べて・・・・’と
いうもの。
　ソフトボールは五輪が最高の大会だったので‘復活のためにはアメ
リカ以外の国が金を取るしかない’というモチベーションからのオーラが
ビンビン伝わってきていた。

　一方の野球はMLBの選手達が参加しない限り復活はない。
　ただMLB側はWBCという舞台を作ったので、いよいよ五輪とは距離を
置くスタンスを取っていた。
　つまりソフトは8年後に復活する希望があるが、野球は今回が本当の
最後になる可能性が かなり高かったのだ。

　にも拘わらず選んだのは若手が多かった。
　ここにプロ参加の負の遺産がある。
　プロが参加したおかげで五輪の経験があるアマ出身の選手達は赤星や
渡辺俊、阿部慎之介らが最後。　ところが阿部も現在30歳となっている。

　つまり現在20代半ばでアマチュア時代に五輪を

経験した選手がいないのだ。　

　西岡や川崎、新井や里崎に青木らはWBCは経験していても五輪は
経験していない。
　WBCは期間が3月3日から21日まで18日間で8試合を行ったのに対し、
五輪は11日間で9試合と密度が濃いため異質の大会になる。
　今回で事実上終わりならアトランタやシドニー、アテネの経験者で
固めた方がチーム作りもやりやすかっただろう。　

　結局は星野仙一監督以下の首脳陣が、真剣勝負の国際試合の経験が
ないという事が間違いの始まりだった。
　ロスを経験した伊東昭光や荒井幸雄に広沢克巳、ソウルを経験した
古田敦也や野村謙二郎に野茂英雄・潮崎哲也らがスタッフに入らないと
いけなかったのでは?と今更ながら思う。

　ロス五輪の金メダル監督・松永玲一氏が‘国際試合で通用する投手は
140㌔半ばのストレートと確実に空振りが取れる変化球を投げられると
いうのが最低条件’と語っていたが、投手陣の中に基準を満たした者が
何人いただろうか？

　メンバー的に長打が望めないので機動力を使おうにも西岡や川崎は
ケガを抱えて走るどころではなかった。
　ではケガ持ちの西岡や川崎を なぜ選出したのか?
　首脳陣は12月に台湾で戦ったメンバーに対する信頼感とシンパシーを
大いに持って信頼していたのだろうが、少しでも体調が悪い者は代表に
呼んではいけないというサッカーのオフト・ジャパンがやった失敗を星野
ジャパンが繰り返した事になる。

　キューバや韓国は五輪前に親善試合をこなしていたのに対し、パ・
リーグ選抜とセ・リーグ選抜との花試合でお茶を濁して臨んでいるから、
私的には予選リーグは‘キューバと韓国相手には負けても仕方ない’
と思っていた。
　だから最初の4試合でキューバと韓国に負けの2勝2敗でも心配して
なかったし‘ピークはトーナメントに入ってから’と考えていたので ‘さぁ、
ここからが本番だ！’と考えていたのだ。

　しかし星野監督以下・首脳陣は、そこまで割り切れてなかったようで
負けてガックリきていた。
　ここにアテネでの反省から‘全勝する必要はない、2敗まではOK’と
言っていたにも拘わらず少なくともキューバに全力で勝ちにいって負け
たのが最後までリズムを作れなかったようだ。

　五輪は今後MLBのシーズン中に行われるケースばかりになる可能
性は高い。
　こうなるとメジャーリーガーの参加は絶望的、そうなると復活は無理
だろう。
　これからはWBCのみが世界一を決める大会になる。

　当面は来年3月に第2回のWBCが行われるが、五輪と違い今度こそ
言い訳は通用しないので今回の失敗を いい薬にしてWBC連覇を目指
さないとファンは納得しないだろう。