金足農に欠けていたもの

泣くな吉田!魂の881球…今夏初めて途中降板 涙止まらず

 100回目を迎えた今年の夏の甲子園は春の優勝校・大阪桐蔭が
金足農に13-2で快勝し、史上初となる2度目の春夏連覇を達成
した。

 世間は東北勢および農業高初の優勝を期待する声があったし実際
終盤まで競れば場内の声援が金足農応援に回りそうだったのだが、
正直言って百戦錬磨の大阪桐蔭相手にそれは厳しいと思っていたの
で予想通りワンサイドになってしまった。

 ただ個人的には今回の金足農の快進撃には違和感を持っており、
秋田の方々には申し訳ないが‘優勝しないでくれ’とも思っていた。

 最大の理由は金足農のスタイルはエースに全てを託し9人のみで
戦いきるというもので、1アウト1塁からバントで2塁に進めたり
スクイズの多用など昭和の香り漂うもので高校野球の進化につなが
るものではなかった事。

 基本的にマスコミは保守的だから今回の金足農の戦いぶりはノス
タルジックな郷愁溢れるものがあったので余計に支持を受けたのだ
ろうが、正直言って何事も勝ったチームのスタイルが流行るのを考
えると金足農の優勝でエースに全てを託した9人野球が肯定される
事になりかねないと思ったのだ。

 10年前BS朝日の中継でゲスト解説をしていた帝京の前田三夫監
督が‘前年に佐賀北が継投で優勝したので継投をするチームが増え
て来た。強豪私立が新しい事をやっても流行らないが公立校が新し
い事をやれば多くの学校がマネをする’と語っていたのを思い出す。

 実際に高校野球が投手を中心に守り勝つスタイルから現在のよう
なパワー野球に変貌したのは公立校である池田が夏春連覇を達成し
黄金時代を築いたからで、これをPLや帝京などが始めても絶対に
流行らなかっただろうというもので大いに納得したものだった。

 つまり佐賀北の優勝は右のエースではなく左の変則投手を先発さ
せる事で相手の目を狂わせ途中から本格派の右投手を投入する事に
より、相手のアジャストを遅らせて逃げ切るスタイルで優勝したわ
けで公立校でも複数投手制で戦って優勝できる事を証明したのだ。

 金足農の吉田輝星は佐賀北の久保よりも素晴らしい投手だから、
それゆえに金足は吉田に全てを託そうという事になったのだろうが
全ては監督の考え方ひとつ。

 1枚エースに全てを託すメリットは鹿児島実の久保克之元監督ら
が主張するように、大黒柱をみんなで支えようとするなど団結力を
呼び起こす力があるのは確かだが先日行なわれた女子ソフトボール
世界選手権で上野由岐子に依存し過ぎて優勝を逃すなどレベルが上
がると勝てないようになる。

 どんな競技にもいろいろな価値観があるので監督以下選手全員が
それを信じて戦えば十分活躍はできるだろうが、やはり優勝となる
と昭和とはレベルが上がった現在金足農のようなスタイルでは無理
ではないかと思うのだ。

コメント ( 16 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
そんなのは無い物ねだりだよ。 (テコンドーを五輪から除外しろ!!)
2018-08-21 23:58:05
そもそも秋田県は硬式野球部のある私立校が僅か2校しかなく、受け皿が少ないから優れた人材が他県に流出している地域だよ。

金足農業は秋田県内では強豪だけど、公立の農業高校だから自ずと人材獲得の面では全日制の普通科の学校に比べて限りがあるのだから、池田や佐賀北とは事情が異なる。
ましてや、大阪桐蔭のような私立の野球学校とは明らかに物量の差があり過ぎる。

戦力に差があるのだから、チーム作りや戦い方も違って当然だ。
何も1枚エースに頼っているのは好きこのんででやっているのではなく、現状の金足農業の戦力で大会を勝ち抜くには誰が監督をやっても“弱者の兵法”をせざるを得ないと思うけど。

各チームが抱えている事情を一切無視して「昭和スタイル」だと決めつけて扱き下ろすのはフェアじゃないよ。
 
 
 
Unknown (imapon)
2018-08-22 06:51:59
公立とかチーム事情もあるだろうけど、こーじさんの言うように監督次第と思います。
甲子園に出てくるほどの強豪なら投手は2人以上作って臨むべき。打川選手も居るじゃない。
吉田投手の決勝での疲弊ぶりはあまりにも痛々しかった。
準優勝に終わっても、監督は「やってきたことに間違いはなかった」って言ってますね。
今大会は一人エースの学校の活躍もまた目立った大会だったように思います。
才能あるエースの酷使はもうやめた方が良い。
 
 
 
流石に (こうちゃん)
2018-08-22 18:44:26
スポーツに精通しているこーじさんと言えど、流石に勝って欲しくないとは、暴言にも程がある。確かに、昨今の高校野球のスタイルは、貴方の考え方が利に叶っているけど、金足農が優勝したから、貴方の考え方が否定される事はない。そういう事情で闘わざるを得ない高校もある。そういう事情の高校に、面と向かって言えますか?勝って欲しくないと。元高校球児の貴方が、金足農の様な事情で甲子園に出ていたとして、この様な暴言を浴びせられたら悲しいでしょ?。貴方のブログだからって、好き勝手に論ずるのは頂けない。今までだって、フェアな見方で論じていたでしょう?。こーじさんらしくないなぁ。
 
 
 
言われている事は分りますが (こーじ)
2018-08-22 22:14:56
>テコンドーを五輪から除外しろ‼様
 実は秋田代表は個人的には80年に地元のライバルチームが甲子園初出場した時に対戦したのが秋田商だった事から応援していたクチですし、98年からの初戦13連敗には心を痛めていたわけですが当時から思っていたのが温故はあっても知新がないなというものでした。

 農業高校で人材的に厳しいというのは分りますが1点取って守り切るスタイルよりも、前半から大量得点を取りに行くスタイルに変えるのは監督の考え方ひとつだと思ってます。

 そうすれば点差を付けてエースをフルイニング投げさせずに済むのではと思っていた次第です。

 何らかの新しい工夫より、昔のスタイルに特化した戦い方では吉田君のような好投手が出て来ない限り甲子園で勝ち進むのは難しいのではないでしょうか。
 
 
 
そうなのですよ (こーじ)
2018-08-22 22:24:59
>imapon様
 鍛治舎巧氏が秀岳館の監督に赴任した時に「熊本代表チームが甲子園で勝てないのは熊本は好投手が入ったチームがエースに過度に依存しフルイニング投げさせ、
攻撃はランナーが出るとバントで2塁に送りタイムリー待ちというスタイルが固定されている」と熊本県の高校野球スタイルを批評してました。

 鍛治舎氏が監督になった秀岳館はそれと真逆のチーム作りをしたわけで、いくら人材を他県から囲っていたとはいえ3季連続ベスト4は快挙ですし氏が退任した後の体たらくを見れば誰が監督をしても勝てるという事はありません。

 ちなみに昨春に秀岳館とアベック出場した熊工は山口という好投手を擁しながら智弁学園に何もできず惨敗したのを見て熊本県産の監督との違いを実感した次第です。

 1枚エースに全てを託すスタイルは秋田だけでなく山口や愛媛など、かつて強かった地域というのも興味深いですね。
 
 
 
問題はマスゴミです (こーじ)
2018-08-22 22:38:06
>こうちゃん様
 まぁ‘勝って欲しくない’は暴言かもしれませんが、
普段高校野球の話題すら取り上げないワイドショーまでが金足農のスタイルを絶賛している事に違和感を覚えての事です。

 本文にもある通り日本の特に高校野球マスコミは昭和の伝統的スタイルが今でも大好きで、高校野球はおろか
日本の野球の進化より伝統のスタイルを守る方にシフトしているのが今回の一件でよく分かります。

 これで金足農が大阪桐蔭にでも勝っていたら‘このスタイルでも勝てる’という世論の後押しができるのは火を見るより明らかですよ。

 金足農に否定的なのはエースの酷使や補欠を一切起用しない9人野球だけでなく、監督が1点取って守り切るスタイルを標榜しているわけで温故はあっても知新のない
チーム作りをしている事ですよ。
 
 
 
好き嫌いなんかで監督を責めるのは全くの筋違いだよ。 (テコンドーを五輪から除外しろ!!)
2018-08-23 00:07:39
監督が目指すスタイルに対して好き嫌いがあるのは構わない。

だけど、選手のことを誰よりも把握している現場の最高責任者が限られた戦力を駆使して強者に対して最も手っ取り早く勝つ為の策を講じ、尚且つ結果も残しているのだから、ご自分の考え方とそぐわないからという理由なんかで否定される覚えなんて一切無いけどな。

「前半から大量得点を取りに行くスタイルに変えるのは監督の考え方ひとつ」と力説されましたけど、一定水準に達した多数の人材を安定的に獲得する能力があってこそ初めて出来るのであって、そうでなければ繋がりのある“打線”になんかなりませんよ。

サッカーだと「古くさい」「見ていて全然面白くない」「創造性が無い」などの理由で堅守速攻や縦ポンサッカーを忌み嫌っている人と同類だよ。
つまらなかろうが古かろうが、必要に応じて勝機を高める為にやっているだけのこと。
場所、状況、対戦相手、己のコンディション等を全く無視して「自分たちのサッカー」を追求した12年前と4年前の日本代表チームがW杯でどのような結末を辿ったのかご存じでしょう。


私に言わせると本当に責められるべきは、選手の健康に配慮しない日程を課している高野連、杜撰な運営に頬被りして選手の酷使をむしろ美化している朝日新聞、そして複数会場の使用の議論を拒絶している石頭の高校野球ファンだけどな。
 
 
 
だから (こうちゃん)
2018-08-23 06:22:27
金足農の戦い方が他にあるのかな?。何か自分の考え方にそぐわないから、耳を塞いでいる感が拭えない。否定されるのは、過密スケジュールを当然とばかりに天狗になっているマスコミであり、古臭い考え方を崇拝する一部の高校野球ファンが否定されるべき。テコンドーさんの考え方に両手を上げて賛同しますよ。
 
 
 
現実的には (こーじ)
2018-08-23 23:22:23
>テコンドーを五輪から除外しろ‼様

 高野連やマスゴミの罪が大きなのは当然ですが、現実問題として選手達が甲子園のみの開催に拘るのは仕方ないし大会期間を延ばす事ぐらいしか対応はできませんけど、それすら遅々として進まない現状で選手の将来を守るのは1-0で勝つスタイルではなく前半から大量点を取りに行くスタイルを目指すべきではと思った次第です。

 ちなみにこのスタイルは超進学校で練習時間も乏しい開成高校が実践してますから、むしろ金足農のようなチームにできない事はないと思ったわけですよ。
 
 
 
気持ちは分かりますが (こーじ)
2018-08-23 23:32:37
>こうちゃん様
 
 上のレスにも書きましたが高野連を叩いても奴らは全くスケジュールなどを変えようとしないわけで、その間にも有望な選手は潰されるわけですよ。

 だから指導者には現実問題に即した対処法が求められるわけです。

 昔ながらの考えの指導者ほど吉田のような投手がいると「1点取ったら勝てる」とばかりに依存するわけで、
今大会の金足農の試合ぶりを見ていたらそれを実感しました。

 日刊スポーツのコラムにも‘伝統をしっかり守るタイプ’と書かれてましたからね。

 週に3時間しか練習できない開成高校がバッティングに特化し前半から大量点を取りに行くスタイルで夏の東東京大会を5回戦まで勝ち進んだ事例もありますから他の選択肢がないわけではありません。
 
 
 
そうかな? (こうちゃん)
2018-08-24 06:51:04
こーじさんの考え方が、これからの高校野球のスタイルの一つなのは理解できない訳ではない。ただ、マスコミの扱い方に過剰な反応を示し過ぎるだけでは?。金足農の戦い方が気に入らないから優勝しないでは、はっきり言って暴言と言える。暴言以外の何物でもない。子供の好き嫌いとレベルは同じ。そう思っていても、心の奥底に閉まっておく、若しくは他の言い回しが有る筈。エース1人と、固定メンバーで闘い続けて行くスタイルのデメリットも露呈したのは確か。今は変わりつつある高校野球の産みの苦しみがはじまったに過ぎない。監督のコメントは頂けないけど、結果はどうであれ、私は酷暑の中、戦った球児の健闘を讃えたい。この高校には優勝して欲しくない、なんて気持ちで高校野球は見たくもない。
 
 
 
それは奇策の域を出ないね。 (テコンドーを五輪から除外しろ!!)
2018-08-24 22:20:30
超進学校であるが故に練習時間が短いのでバントやサインプレーを一切やらない極端な「打高投低」のケースを持ち出すのは、例えとして相応しいのか大いに疑問に思うけどな。

開成高校の戦法はユニークではあるけど、彼らは決して毎年安定した成績を残しているわけではなく、クジ運に恵まれている面が多分にある。
つまりは、本質的にはギャンブルだってこと。

それとこの戦法は「雑で大味、選手個々の能力に依存、序盤から大量失点を覚悟」なのだから非常に効率が悪く、攻守にバランスの取れたチームを相手にはまず機能しないだろうね。

コールドゲームが有る地方大会であれば体力温存を図る為に速戦即決が求められるので格下相手には有効な策だと思うし、同等相手でも乱戦に持ち込めば勝機を見いだせるかもしれない。
しかし、それなりに投手力のあるチームと対戦したら打線が空回りするのは目に見えている。

人材獲得の面で不利にある金足農業が、もし打撃特化と引き替えに弱投ザル守備なんかで戦ったら甲子園で上位進出はあり得ないどころか、県予選で外人部隊の明桜あたりに負ける可能性が高いね。

まあ、地方で埋もれた優秀な人材に目を付けているプロのスカウトにとっては、投手の肉体が酷使されないので早期敗退はむしろ有り難いのかもしれないけど。
 
 
 
閉会式で (こーじ)
2018-08-25 00:19:49
>こうちゃん様

 実際に高野連の老害会長が金足農のスタイルを閉会式で絶賛してますよ。

 もし優勝していたら9人野球のスタイルが更に大絶賛されてしまうのは火を見るより明らかで時計の針が一気に逆行する事になります。

 大会前に酷暑の悪コンディションの中での開催や球数があまりにも多いという懸念が決勝進出でかき消されてますからね。

 前時代の遺物としか見えない全員バスターなどで甲子園に臨んだ佐賀商は初戦敗退と、本来なら時代に逆行したスタイルは結果を残しづらくなってますが横浜戦の逆転3ランで一気に勢いが付いた形です。
 
 
 
 
大物食いに奇策上等でしょう (こーじ)
2018-08-25 00:26:31
>テコンドーを五輪から除外しろ!様

 つまり金足農の方が少なくとも開成よりも人材や練習量も恵まれてますし、今日のワイドショーでは合宿所まであるわけですから施設面でも十分充実してますよ。

 開成よりも人材的に恵まれている金足農が打撃練習を重視すれば守備力もおざなりにはならないでしょうし。

 奇策は弱者が強者を倒すための常套手段ですし、公立が強豪私立を倒すにはコレもありだと思いますが。
 
 
 
 
それで (こうちゃん)
2018-08-25 01:03:12
金足農の9人スタイルの野球が気に入らない?。老害会長の言葉一つで、高校野球のスタイルが逆行するものなのか、疑問。現代の高校野球て、その程度の物なのかな?。自分の意にそぐわないのは、分からない訳ではない。スタイルが多様化しているのは、それでは宜しくない、と言う思考の監督や学校が出て来ているからでは?。何年高校野球の大会が打たれて来たのか。その長い歴史で戦い方が変化しないで来ました?。変わって来たでしょ?。老害会長が何時までも居座る事はないし、その考え方は脈々と引き継がれる事はないから、熱くなり過ぎる必要もないでしょ?。金足農の様な、やむにやまれない状況で出てきた高校全てを否定される?。何か変。高校野球をするのも、変えて来たのも、選手や監督、出場して来た高校、そして長い歴史が変えて来たと思う。それと、高校野球ファンなら、優勝するなとは言わないと思う。悪しき伝統は必ず淘汰される。
 
 
 
悪しき伝統淘汰は願いたいですが (こーじ)
2018-08-25 23:53:56
>こうちゃん様

 悪しき伝統が必ず淘汰されるというのは信じたいですけど投手の酷使という最大の問題は、特に地方のチームでは解決せずですよ。

 基本的に昔気質の監督は吉田のような好投手が入ると
投手に気分よく投げさせるように守備を徹底的に鍛え、
とりあず攻撃は1点を積み上げるというスタイルを選択します。

 最終失点を守り切るスタイルでは投手に過度の負担がかかるわけですから、負担をかけないようにするのに大量得点を取れば控え投手を起用するという事もできます。

 別コメにもしましたが週に3時間ほどしか練習できない超進学校の開成が打撃練習中心のメニューで鍛えた結果、5回戦まで勝ち進んだ実例がありますので金足農の戦い方が参考にしないのかと思ったりするわけですよ。

 ちなみにノーサインの常葉菊川など金足農の監督は忌み嫌うのではないかと思います。

 
 
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