ボクシングの世界戦を かすませたもの

　昔ボクシングの世界戦は、一大イベントだった。
　世界戦が行われる10日ほど前から指折り数えて楽しみに
していたのである。
　26年前の今日行われたWBCバンタム級タイトルマッチも
本来は指折り数えて待つイベントのはずだった。
　ところが、このタイトルマッチのルペ・ピントール対
ハリケーン照の一戦は試合前から私的にノリが悪かった。
　カード的には申し分ない。
　れっきとした黄金のバンタム級の世界戦で’ファイティ
ング原田以来の世界バンタム級王者の誕生か’と期待され
た一戦だったのだ。
　というのも挑戦者のハリケーン照こと照喜納は、日本タ
イトルを取ってから国内のライバル達をことごとく退けて
勢いに乗っている。　
　王者のピントールは前年6月に東洋王者の村田栄次郎と
激戦の末に引き分けたので、勢いに乗った照なら十分勝て
ると踏んでいたし好試合になるのは十分予想できた。

　なのに何故ノリが悪かったか？
　それは6日前に行われた世界ウエルター級王座統一戦を
見たからだった。
　WBA王者のトーマス’ヒットマン’ハーンズ対WBC王者の
シュガーレイ・レナードというスーパースター同士の一戦を
夜中にOAされた録画中継で見ていたのだ。
　当時TV東京系は地元で映らなかったので、見られないはず
が夜中の1：00頃から録画中継されたのだ。
　ビデオデッキなどない時代なので、眠い目をこすりながら
見たのだが、ある意味私がこれまで見たスーパーファイトで
5本の指に入る名勝負だったのだ。
　見終わった後も興奮して眠れなかった。

　当然こういう試合を見た後は、それなりの試合を見ても今
一つ燃えないのだ。
　バンタム級タイトルマッチも、内容的には面白い試合だっ
たが残念ながらウエルター級の統一戦からは、レベル的にも
内容的にも劣ってしまう。
　当時としては好試合だったわりにノリの悪い一戦になって
しまった。

　ちなみにこれは、現在で言えば午前中にMLB中継を見た後に
日本プロ野球のナイター中継を見る感覚だろうか。