年末の大失敗

　今から19年前の話。まだ福岡で修行していた頃だが、店に
よくミカンの差し入れがあった。
　師匠一家では食べきれないため、我々スタッフにミカンが
回ってくるのだが余らせていると溜まってくる。
　19年前の87年はクリスマス過ぎから少し風邪気味になって
いたのだ。
　福岡時代は師匠の自宅にスタッフは寝泊りしていたのだが、
6年目に入り私は店の2階で店番みたいな形で寝泊りしていた。
　師匠の自宅で風呂に入り5分ほどかけて寒空のもと店に戻る
のだがどうやらその時に湯冷めしたようだ。
　‘風邪にはビタミンＣがいい’という話を聞いていたので
溜まったミカン8個ほどを部屋に帰って全部食べてしまった。
それが27日、ところが28日の夕方頃から腹具合がおかしくなって
来た！
　‘これはまずい’と思い正露丸を飲むのだがあまり効き目は
ない。夜に店のブラインド掃除をした頃にはちょくちょくトイレ
に駆け込む始末。
　風呂の帰りに熱いお茶を買って飲むが、飲んだお茶が胃から腸を
通って行くのがハッキリ分るのだ。そして膀胱辺りに来た瞬間もよ
おしてトイレに駆け込む、トイレには正露丸の匂いが残っていた。
　翌29日、出勤してきた師匠の奥さんに「腹の調子が悪いのであっ
さりしたヤツをお願いします」と言うと「アンタこの忙しいのに！」
と怒られた。ごもっともである、特に年末のお昼など買ってきた揚げ
物がオカズになるケースが多かったので揚げ物を食べれないとオカズ
がない。
　結局かまぼこを焼いてもらいご飯のオカズにした。
　考えて見るとミカンをはじめとした柑橘系は体を冷やすので、まして
風邪気味で体力が弱っている時に食べ過ぎると腹を壊すのは当たり前。
　大いに反省しきりという状態だった。高3の時など腐った鶏肉のから
揚げを食べても大丈夫だったからと思ったが過信に過ぎなかった。
　それ以来ミカンの食べすぎには注意するようになった。