子供には分からない盗まれたウルトラアイの魅力

 今から50年前の今日68年6月16日にOAされたウルトラセブ
ン37話・盗まれたウルトラアイは、異形の侵略者が登場しないば
かりかセブンは敵の放った弾道ミサイルの軌道を変えるだけという
もので市川森一が担当したセブンの中でも代表的なEPだろう。

 冒頭で少女が運転するダンプカーがウルトラ警備隊の検問を突破
したため追跡するダンが、謎の発光飛行物体から攻撃を受け崖下に
転落しただけでなく気を失ったところを少女によってウルトラアイ
を奪われる。

 ウルトラアイを奪った少女・マヤは母星であるマゼラン星から派
遣された工作員で、故郷では‘狂った星’とされる地球を抹殺する
計画の障害になるセブンに変身させないようにウルトラアイを盗む
という任務を完了したため迎えの要請をしていたのだが発進場所を
突き止めたウルトラ警備隊は受信機のリズムボックスを押収する。

 ここにマゼラン星から‘恒星間弾道弾が既に発射され迎えには行
けない’という返信が来るわけで、これを持って弾道ミサイル迎撃に
出動した警備隊員達を尻目に彼女のアジトに乗り込み迎えが来ると
信じるマヤに返信テープを渡す。

 母星からの裏切りに落胆し‘この星で共に生きよう’というダン
の説得に躊躇しながらマヤはウルトラアイを渡すのだった。

 店内の柱時計が弾道ミサイル着弾予定時刻の午前0時を告げても
迎えは来ずに最後まで母星からの迎えを信じたマヤは、裏切られた
事を認めざるを得ずに絶望し自ら命を絶つ事に。

 戻ってきたダンは床に落ちていたブローチを見てマヤの最期を知
ると共に、彼女を救えなかった無念さを噛み締めながら去って行く
という終わり方。

 正直言って子供の頃に見た時は全く面白くなく退屈極まりない内
容だったが、年齢が上がるにつれて面白く感じるようになった。

 セブンはSF作品ではあるものの、このフォーマットを現代劇に
置き換えても十分に通用する内容で他のウルトラシリーズはおろか
円谷作品でもこういった作品はないので正しくセブンならではのEP
だといえるだろう。

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
わたしの愛したウルトラセブン (餃子少年)
2018-06-16 23:19:55
でも取り上げられていたエピソードですね。ドラマの予算がない事を逆手に取って作り上げた良作だと思いました。
 
 
 
艱難辛苦汝を珠にせむ (こーじ)
2018-06-17 22:05:52
>餃子少年様

 まさしく予算不足という艱難辛苦が名作を生んたと言っていいでしょうね。

 私の愛したウルトラセブンは見ましたけど、それだけ市川森一も思い入れのあるEPなのでしょう。

 
 
 
 
セブン第37話「盗まれたウルトラアイ」について (A-chan)
2020-10-24 00:50:07
こんばんは。
「盗まれたウルトラ・アイ」このエピソードも胸に残る話でしたね。マゼラン星の少女・マヤは狂った星・地球を破壊する為、邪魔になるウルトラセブンの変身アイテム・ウルトラアイを奪い取る為に地球へ送られてきましたが、彼女は少なくとも自分の任務に疑問を抱いていた筈です。本当に地球が狂った星なら、何故セブンは守ろうとするのか?

そして、彼女は見ました。プラネタリウムという文化施設、そこで純粋に宇宙の星々に目を向けている人々、自分よりも年少の少年少女達、他の星々に友好的なアナウンス(自我自尊な言い方にも聴こえますが、他の星々を友人と認めているのは分かります)。
地球人は荒廃的な人間達ばかりでは無い。だからこそセブンは地球を守る。マヤにはそれが分かった筈ですが、母星の上層部に不信感を抱きつつも彼女はそれに従わなければ生きていけない。だから彼女は己を隠して終始無表情を貫いていたのでは。

最終的にマヤは母星(上層部)から見捨てられるのですが、彼女の迎えを求める通信に迎えは無理と返信をよこしたのは彼女に友好的な善良な者だったと思われます。彼女に危機を伝えれば彼女は自分で対処すると見ての事でしょう。
そして、彼女はダンにウルトラアイを返しダンはセブンに変身、恒星間弾道ミサイルの進路は変えられ地球は危機を逃れます。

危機が去ったのを確認した後、マヤは自害してしまいます。同じ宇宙人の自分が他所の星でも生きているというのに何故マヤにはそれができなかったのかとダンは嘆きますが、マヤにしてみれば生きる為とはいえ犠牲にしようとした(冒頭の運転手さんは亡くなったかもしれない)地球の人々の恩恵を受ける訳にはいかなかったのでしょう。
地球がダンにとって「第2の故郷」であっても、マヤにとっては「他人の星」なのです。後に地球人が彼女のような運命を辿らない為には裏切りの無い世界を作らなければいけないのですが、それはなかなかできないようですね。
 
 
 
洗脳の恐ろしさですね (こーじ)
2020-10-25 11:52:54
>A-chan様
 
 このプロットはコテコテの思想教育を受けた工作員が派遣された先で、本当の事を知り自らの国は道具としてしか見てなかった事に絶望し最後は…という形の物語にできますからね。

 予算不足を逆手に取った形での名作でして今のウルトラでは絶対に作れない物語で、さすがは市川森一だと実感します。

 こうしてみると洗脳の恐ろしさを実感しますしね。
 
 
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