tyokutaka

タイトルは、私の名前の音読みで、小さい頃、ある方が見事に間違って発音したところからいただきました。

書評:畠中恵『しゃばけ』(新潮社 2001年)

2006年02月05日 23時50分46秒 | Weblog
(受賞データ:第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作(2001年度))

参考ホームページ:しゃばけ同盟
しゃばけ倶楽部 -バーチャル長崎屋ー

大阪の旭屋本店を見てみると、一階は雑誌と文芸書のコーナーで、入り口を入ると文芸書が置かれているコーナーが出迎える形になる。本書は2001年の暮れの発刊だが、その後、この中に出てきた登場人物を再登場させて、シリーズ化しているようだ。それを知ったのは旭屋本店の文芸書コーナーで面展(表紙を見せて置くこと。平台に置く方法と壁に設置したラックに置く方法の二つがある。)していたからである。自分でも意外だが、大体の文芸書を普通の書店で買う。そしてまた、後々売り払う事無く、手元に置く事が多い。特にこの傾向は、日本ファンタジーノベル大賞の作品に多い。ただ、自分の期待に反して、作品の当たり外れが大きく、最近はタイトルと読み出しで見送って、古本屋で買う事も多い。本書はその一冊だ。ただ、文庫本と同じく、文芸書もまた、版元品切れになる事が多いから、中には古本屋でしか手に入れようがなかったものもある。

さて、表題の本書。

江戸時代の江戸というごく普通の空間を場所として設定している。しかも登場人物は江戸の大店(おおだな)の若旦那(17歳)という設定。ありがちだが金持ちの坊ちゃんであり、体が弱く親を含めた周囲にいつも心配させるという設定。しかし、先にも言った金持ちの坊ちゃんのもう一つの顔、すなわち「いじわる」という性格ではなく、周囲を思いやる心優しいという設定だ。

さあて、彼の周囲が少し複雑だ。実は彼の周囲には、祖父がどこからとも無くつれてきたかなり妖術の強い妖(あやかし)がいて、彼の世話を焼く事を中心に、店の手代として切り盛りしている。他にもいろんな妖がたくさん出てくる。

ある晩、周囲には内緒で出かけた若旦那は、殺しの現場を目撃してしまう。そこから起こる不可解な連続殺人。だがそれは若旦那を狙うための序章に過ぎなかった。犯人は誰か、人なのか、何が目的なのか。が大きなストーリーだ。

選考委員はそのストーリー故に、極めて大笑いできる作品と言うふれこみだったが、それ以上に、読み手を引き込むような魔力を持つ作品となっている。むしろ、幼稚な部分が無いくらいだ。

あと、若旦那の心理描写も細かい。しかし、話の中核は、過保護に育てられてきた若旦那の、自立の過程をかたるものであり、それが事件の解決へと導く流れとなっている。読んでいてスカッとする話。それが欲しくて読んだようなものだ。

本当に人気がある作品だというのがわかる。ファンタジーノベルというよりも、江戸時代を舞台にした推理小説と考えてもらえば良い。本当に面白い話として推薦する。

現在は文庫でも手に入れる事が出来る。