ROOM 402

日々多くを思うものですがその思いはすぐにきえて忘れてしまうものです。忘れられない想いや日々の出来事を書き綴ります。

最近

2007年11月01日 | BOOKS

村上春樹の新刊やっぱり売れているらしい。
先日も知り合いに、最近どんな本を読んでいるか、たずねたら
二人ともこの本を読んでいたのにはビックリした。
かくれ村上春樹ファンというのか、もともと人気があるのかわからないが
私の思っている以上に人気があるんだな。
そういう私は彼の本は9冊くらいしか読んでいない。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」上・下、
「ノルウェイの森」上・下、「ダンス・ダンス・ダンス」上・下、
「ねじまき鳥クロニクル」一部、二部、三部。
思いつくところでは、そんなところかな。
それ以外にもいくつかの短編を読んだ記憶があるが
細かくは思い出せないし、モチロン手元にもない。
それにしても彼の作品はやたらと上・下巻とかが多いなぁ。
購買者に2冊分買わせようという作家と出版社の姑息な策略かな。
売り上げだって2倍になるわけだしな。
村上氏は作品の中でもヘンに正義感をふりかざすところあるから
あながち当たっていたりして・・・。
しかし、この中では、圧倒的に「世界の終わりと~」が良かったなぁ。
この本を読んでいるあいだはどんどん異次元に連れていかれました。
私には、すごくいい感じの読書体験だったのを覚えている。(20年位前かな?)

久しぶりに村上春樹の本を買ったのはタイトルに惹かれて買ったわけだが、
もちろん私の大好きなランニングのことが主軸になっているものの、
かなりの部分をこの作家の創作上の秘密や過去の歴史などが赤裸々に書かれていて
「へー、作家ってこんなもんなんだ」というのが理解できるところも読んでいて楽しい。
まだ、全部を読み終えていないけど、多分明日には終わっちゃうんだろうなぁ。

本日は武満徹の「未来への遺産」を聞きながら書いてます。
1974年の作品だから33年前の作品か、時間が過ぎるのは早いなぁ。
NHKの番組も素晴らしかったなぁ、たしか語りは佐藤慶じゃなかったかな。
もう、このCD聞かないからブックオフかどこかで売ろうとしたら
ナ、ナーント!アマゾンで¥9000で売られているじゃありませんか。
もったいないのでオレも何とか頑張って売ってみよう。やり方知らないけど・・。
最近はタンジェリンドリーム、ピンクフロイド、カン、武満徹とプログレな感じです。

SF

2007年10月26日 | BOOKS

うひゃー!凄いショックだ!
たった、二日ほどちょい食べ過ぎただけで、いつもはいているジーパンが少しきつく感じる。
しかも体重が3キロも増えている!!!
以前はたかが3キロの体重の増減など気にもならなかったが、いまではちがう。もう昔の私ではない。
以前の私なら5キロ太ろうが、10キロ太ろうがまったくお構いナシであったが、
適正体重でいることの心地良さを知ってからはちょっとの体重の変化にも敏感になった。
特に去年あたりからピッタリめのジーパンをはくようになってからは、
少しでも太るとジーパンが痩せなきゃいかんぞ!と警告してくれるのですごく助かる。
しかし、あらためて私は食べると太る体質なんだなぁというのを実感する、少し悲しい。
辛いことだが、私にとってダイエットとは永遠にお付き合いしなければならないお友達なのである。

私にとって食べることは最高の喜びなのだが、当分のあいだ粗食で我慢しなければならない。
うーん、じっとしていても頭は料理のことばかり考えるので本でも読もうということで、
手近にある本を読んでみるのだが、なかなか本の世界にも集中できない。
ならば、音楽でも聴こうとCDを選ぶのだが、何千枚もあるのになかなか選ぶことができない。
ならば、散歩でもするかということでこれから出掛けるところである。

私にとって散歩といえば神保町界隈である。
ひょんなことがキッカケで小学校高学年から神保町・秋葉原の魅力を知り、
オーディオ・電気関連なら秋葉原、書籍・写真集・雑貨なら神保町へとあしげく通ったものである。
神保町では最初の頃は三省堂、書泉グランデ、書泉ブックマート、東京堂などの
大型書店をはじめとする神田古書店街の常連となって行く。
その後、小さな専門書店の迷宮の世界に足を踏み入れることになる。
なかでも私のお気に入りは美術書・写真集の取り扱いのある源喜堂ブックブラザーである。
当時の私はなぜかSF大好き少年で眉村卓とか光瀬龍、星新一、筒井康隆などを
むさぼるように読んでいたものである。
平井和正とかかんべむさしとかも少しだけ読んだかな。
その後、外国のスペースオペラものへと好みの矛先は移ることになるが
H・R・ハガードとかエドガー・ライス・バロウズとかである。
いずれにせよ中学生の頃の話である。

あー、懐かしくなってきたので今日も行ってこようかなとも思うが、
少しでもカロリー消費するために、今日は家から歩いていってみようかなと思う。

読書法

2007年10月16日 | BOOKS

スペイン人作家、カルロス・ルイス・サフォンの「風の影」を読了。
上・下2巻で830ページもあったが一気に読めた。
昨年に出版された本だが、今のところ私の本年度ナンバー1。
1945年のバルセロナが舞台の歴史・冒険ミステリー。
まるで極上の映画を観ているような素晴らしい人物描写に緻密なストーリー。
読み始めたら止まらなくなり、おかげでここ2日ほど仕事にならず。
読後感もたいへん満足のいくもので当分ヘンな本は読みたくない。
折角の久しぶりに出会えた名作の味わいが穢れてしまう感じがするのです。
この本は私の大好きな一連のロバート・ゴダードと共に私の図書館に入れておくつもり。
娘にも大きくなったら是非とも読ませたい。

「風の影」は読了したが、目下併読している福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだ」がこれまたスゴイ。
基本的には分子生物学の本なのだが内容は口あんぐりの素晴らしさだ。
とても一言では言い切れないのでこれまた読了してレジュメできれば紹介しようと思う。
そして、同時に併読しているのが村上春樹の新刊「走ることについて語るときに僕の語ること」
という相変わらずワケのわからんタイトルだが内容は私の好きなマラソン話と
敬愛するジャック・リッチーの新刊「クライム・マシン」。
他にも読みかけの英語本、JAMES MAYERの「THEMES AND MOVEMENTS」と
ドイツの現代芸術家SIGMAR POLKE(ジグマー・ポルケ)の研究本が
いつも机の上やベッドサイドに置いてある。
私は昔からいつも5、6冊くらいを同時に併読しながら読み進める読書法なのだが、
もう何年もこのスタイルなので慣れてしまった。
もちろん、頭は混乱しない。 
他の人はヘンな読書法かと思うかもしれないが、これが私の読書法。

いつまでもデブと思うなよ

2007年10月08日 | BOOKS

ものすごく売れているようです、岡田斗志夫のこの本。
なんせ1年で117キロから67キロと50キロの減量したのだからスゴイ。
テレビで見たときも別人かと思いましたから。
私も毎日同じようなことやっているので岡田氏のこの1年のつらさ心底わかります。
しかしこの本、読み進めていくとわかるのだが、
これはただの「ダイエット本」ではなかったのである。
この本は単なるデブ親父がどのように過酷な人生と戦い、いかにして最大の敵である
自分自身の精神に勝利したかという戦いの報告だったのです。

それにしても50キロの減量とは凄すぎる。
岡田さんによると、ダイエットを始めた人の大半は最初のうちは成功する。
でも、最終的に減った体重を維持することのできる人はたった0.025%。
なぜなら、楽しくないので(というか辛いので)持続できないらしい。
だから岡田さんはこう訴える。楽しくなけりゃ、ダイエットじゃない!
では、どうすれば楽しくダイエットできるのか。
ここから岡田さんの独創的なダイエット論がはじまるのである。

その前に根源的な問題がある。
いったい、なぜ、人はデブであってはならないのか。
そんなの自由じゃないか、という人だっているだろう。
その質問に対して、岡田さんは簡明に答える。
現代は「見た目主義社会」だからである。
「家柄主義社会」では、その人はどんな家に属しているかが大切だった。
「学歴主義社会」では、どんな大学を出ているかですべてが判断された。
だが、いまは違う。いまはまさに「人は見た目が9割」なのである。
そのとき、デブはただデブであるというだけで、故無き差別を受ける。

だらしないんでしょ、
いつも食べてるんでしょ、
意地汚いんでしょ、
しまりがないんでしょ、
意思も弱いんでしょ、
汗臭いんでしょ、

すべて見た人のイメージにしか過ぎないのに・・・。

中身は違うんだ!と叫んでも無駄なのだ。
そこまで見てくれる人はいないのである。
だとするなら、デブからの脱出は人間の尊厳を賭けた戦いになるのである。
これよりダイエットの実践の話になるのであるがこれまた独創的でとても面白いのだ。
要はひたすら自己の行動を記録するだけ。
詳しくは皆さんも本屋で立ち読みをしていただくとして、
このレコーデイング(記録する)というのが意外に効き目があるんですな。
私の場合無意識に日記を2冊書いており、これが岡田氏の言うレコーディングダイエットに
なっていたようです。偶然だが、私の場合、無意識にそういう行動をしていたのだ。

ひたすら自己の行動(岡田氏の場合は食行動)を記録する。
人によっては自分のあまりに無謀な行動の記録を目の前にして愕然とする人もいるだろう。
これが岡田式ダイエットの根本なのだが私にはとてもよく理解できた。
なるほどな!家計簿と一緒なんだな!と私は思わず手を打ったのです。
恥ずかしい話だが私はここ数年、家計の詳細な記録をつけるようになった。
そうするとなぜか家計における無駄な出費や赤字が劇的に減少してきたのだ。
実のところあまりにアホなことやおバカなことにお金を湯水のごとく使っており、
冷静に日々の私や家族の出費記録を見て恥ずかしくて平常心で記録をつけていられなくなったのだ。
ここが重要なポイント。
逆を考えればわかりやすい。
サラ金で破産する人のパターンは決まっているのである。
それは借金の正確な額を知りたくない人なのだ。
本当の自分、実際上の自分を見たくない人・・・。
すごくシュールな問題だ。
サラ金から借金はしてなくてもけっこうそういう人多そうだし・・・。

自分が食べたあらゆるものを記録する第一段階を過ぎると、
その次には一つ一つのカロリーを計算する第二段階へ、
さらに、そのカロリーを制限する段階へと移行していく。
詳しくは岡田氏のこの本買ってあげてくださいな。立ち読みでもいいけど。
だが、問題の根本は変わらない。
自分が何をしているのかを知ることによって、
無謀な行動がおさまり、あらゆる「借金」(マイナスのイメージ)が
減少していく楽しいプロセスが始まる。

最終段階で50キロも体重が軽くなった岡田氏はスーパーマンになったように感じる。
自分を自由にコントロールできるようになることで、自信がつき、他人からも認められる。
岡田氏はこの時、ダイエットに成功したのではなく、人生に勝利したことを感じたのですね。

偶然にも、岡田氏より少し早く同じことをやり続けた者としてとても共感する部分が多かったです。
私は30キロの減量成功、そして1年たった今も体重の増加がないのですごく精神も安定している。
今の体重で日々すごしていると本当に毎日気分がいいのである。
健康と体重管理はとても大切です。

目下、カルロス・ルイス・サフォンの「風の影」(これも面白い!)と
福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだに」(これはスゴい!)の3冊を併読しているのですが
この本を読み終えるのが一番早かった。
まぁ、それだけ面白かったのですけどね。でも、ダイエットってすごいね。
その後の人生さえ変えちゃうんだからね。
ダイエット馬鹿にしながらも、実は痩せたがってるデブに読ませてやりたいよ。
Mさんのことじゃないですからね。

書店の誘惑

2007年07月11日 | BOOKS
「狂い」のすすめというタイトルの本が15万部を突破したらしい。
近頃の出版界からするとかなりのヒット作であろう。

・人生に意味なんてありません
・「生き甲斐」なんてペテンです
・生まれてきたついでにノンビリ自由に生きる
・流行に楯突いてはいけません
・孤独に生きるのではなく、孤独を生きる
・世間の物差しではなく、自分の物差しを持つ
・「狂者の自覚」を持てば、まともな人間になれる
・人間は互いに迷惑をかけ合って生きる存在です
・老・病・死と仲良くする
・「希望」という名の欲張りになっていないか
・「強者」は会社の肩書きにたよらない

等など魅力的なキャツチコピーの数々が読んでみたいなという気にさせる本である。時には肩のこらないこんな感じの本もいい。
著者はひろさちやという人。先日亡くなられた池田晶子さんみたいな感じかな。
集英社新書で¥714なので気軽に買える本だ。
今日でも吉祥寺に行ったついでに買ってくるかな。
本といえば私の敬愛する研究家、鶴岡真弓さんの新刊が出たらしいがそちらのほうは早急に読まないといけないと思っている。鶴岡先生にはケルト関連の時に随分お世話になった。確かエンヤが大流行したときだったかな。
今回の著作もかなりディープな内容のようで興味深々である。
福田和也の「戦争論」も気になっている。いろいろと批判のある人だが
私はこの人の文章が好き。読んでみたいなぁ。
そんなこんなで書店をウロウロしているとどんどん欲しい本がたくさんでてきて困ってしまう。今日は目的の3,4冊と夜の酒のつまみでも買ってサッサと帰ろう。

バラードとイーガン

2007年06月14日 | BOOKS

グレッグ・イーガンの「一人っこ」とJ・G・バラードの「コカイン・ナイト」を相前後して読了。2冊とも深く感銘を受ける。現在のイギリスにおいてイーガン、バラード共に最高の作家であることは疑いようのないことだと実感する。とくにバラードは私の好みの作家、なぜこの97年作の小説をもっと早く読まなかったのかととても後悔する。もっと早くに読んでいれば同時多発テロやイラク進攻も解読できたのにと考えた。それにしても両者の未来を見通す力は凄すぎる。もはや世界中のいたるところで神はすでに死んだのかもしれないが、両者の頭脳の構造を考えるとそこに神が内在しているような気さえしてくる。

吉本隆明 「真贋」

2007年02月12日 | BOOKS
吉本隆明「真贋」を読了。昔はこの人の本難しいなぁと思ったものですが、随分と平易な語り口になってビックリ。おかげで休みながらですが4時間もかからずに読み終える。この連休中読み続けようかと思っていたので、早めにグレッグ・イーガンの「ひとりっ子」読めるのがウレシイ。「真贋」に関してはあまりにもサラっと読めすぎて引っ掛かりのなさすぎが不快。以前なら心の中に多くの反対を唱えながら読むスタイルだったのに、まるで週刊誌の記事を読んでる感覚に近いのがヘンな感じでしたね。やはりこの人とは思考の立脚点が違うのかとあらためて再認識。

文盲 A・クリストフ自伝

2006年10月24日 | BOOKS
私が強く影響受けた海外作家でベスト3に入るアゴタ・クリストフの自伝です。1時間かからずに読了しましたが、その余韻は強大。クリストフ本人の作品は実に少ないのですが「悪童日記」は読まれた方も多いんじゃないでしょうか。私にとっては「悪童日記」を含む3部作は生涯忘れえぬ作品となるでしょう。
クリストフについては語りきれないほどの思いがあるので割愛しますが、この本では個人的に長年クリストフ本についての数々の謎が解明され、それだけでも心の奥の方からスッキリしました。ここのところイジメを苦に自殺した子供の事件、3歳の子にロクに食事を与えず餓死させた母親など、心が強く痛む事件が続発しています。このような事件は今に始まったわけでもなく昔から連綿とあったのだと思います。現在のようにどのような細かい情報でもTVやネットで察知できる時代だからこそクローズアップされているだけなのでしょう。でも、本当は昔からあったことなんです。確かに心痛みますが、私としてはこういう時代だからこそA・クリストフを熟読してほしいものです。

独白するユニバーサル横メルカトル

2006年10月20日 | BOOKS
多分、文句なしで今年のベスト1です。今年読んだ他のどの本よりも群を抜いてます。恥ずかしながら著者の平山夢明を知ったのはこの本が初めてなんですが、変幻自在な文章の上手さ、肝心のストーリーにおける構成の巧みさ、溢れんばかりの著者の知性、恐るべき驚愕の内容が実はラストまで読者を飽きさせないという数々の戦略の確かさ・あざとさ、そのどれを採っても鮮やかすぎるんです。全10篇からなる短編集なのですが、これぞまさに宝石ですね。いや、神業と呼ぶべきかもしれません。内容はとても説明できるものではありません。グロ過ぎます。私もそのストーリーのどれもが初体験で驚きの連続でした。この本ばかりは気の弱い方でも無理して読んでみる必要あるでしょう。ただし、読後に人格が変わってしまっても私は責任持ちません。
著者の平山夢明が1961年生まれというのも驚きです。同世代としてこの天才の誕生を喜びます。そして日経の書評欄にこの本が紹介されたことも驚きなんです。あのリベラルな日経がこのような悪魔の書を紹介するなんて通常あり得ないことです。世が世なら確実に発禁本でしょう。今年はこの本と出合えただけでも収穫ありました。でも、多分あと3年は読み返さないだろうなぁ。マジで刺激強すぎっす。筒井康隆を読み漁っていた頃を思い出しました。

八月の路上に捨てる

2006年10月06日 | BOOKS
本年の芥川賞の受賞作。95ページくらいなので40分くらいで完読。読後の印象は強烈なものこそないけれど少なからず考えさせられました。一つは芥川賞について、二つ目は最近のニート、フリーター問題について。芥川賞については数年前から賞自体に失望し続けていたものの、やはりどこかで興味があるのか、その時々の才能の何たるかを読みたくて時折目を通していたものの未だ「これは!」という作品に巡りあったためしがない。今回も同様でありました。それにしても、昨今の作品を読まずしてあれやこれや言う人はダメです。そんな人たくさん知ってるけど、そんな人に限っていつまでたっても使い古しの言い回しの繰り返しばかりで説得力も何もない単なる上辺だけの人、軽蔑しちゃうぞ。どんなにひどい作品でも取り敢えず語る前に読みましょうね。
内容は細かく書かないのでヒマと興味ある人は読んでください。いや、やっぱり少し内容書きますね。八月最後の日、この日で総務課に移る先輩女性ドライバーと、自販機の清涼飲料水の缶ジュースを2トントラックで配送する主人公の若い男性の1日を描いています。女性にとってはきつい肉体労働なんですが、技術と経験の持ち主には晴れ舞台のプライドがあります。仕事納めの記念に六時までに営業所に戻るという前人未到の記録を目指して、女性ドライバーはハンドルを握ります。
離婚歴のある彼女は子供二人を引き取って育てています。一方の主人公は妻と別居中で、明日離婚届けを出す予定です。二人の間には自分のことを包み隠さず話すという習慣が築かれていました。単なる友情とも男女の親密感とも異なる、微妙な相棒意識です。遠慮のない女性ドライバーの質問に答えながら、映画の脚本化を目指していた主人公と編集者を目指していた妻との関係が壊れていった過去が反芻されます。
若い頃の夢がずるずると変質して壊れていく。誰にでも起こることです。それでも日々の生活は維持してゆかねばならない。お金にために仕事を持つ。将来の成功の夢に彩られた晴れがましい職業とは違います。ただその日のきついノルマをこなし続ける仕事です。この小説はフリーター人口が膨大に膨れ上がった現代の労働の現場を反映しています。フリーターとは就職難の産物だけなんじゃなくて、本来の「志」を捨てきれない者が、暫定的な仮の姿として従事してる仕事でもあります。しかし、何が理想の人生なのか?真の自己実現はどうあることなのか?現実との軋轢の中で、「志」はしだいに見えなくなっていきます。その代償行為としてささやかな達成や充足感が、心の支えになっていく。
達観した思い切りのよい女性ドライバーと発展途上の主人公のやりとりがとても現代風です。人生の苦さを含みつつも何とか生きていかねばならない現実の日常を淡々と描いています。一言で言えば今日的なプロレタリア文学なのかな。プロレタリア文学といえば小林多喜二で終わっている人たちにはこの本は無縁です。あくまでも今日的なプロレタリア文学ですから。
しかし、未読の本が読み終わらないうちからこんなの読んでるんだからヤバイです。書斎にはうず高く何十冊も単行本が積みあがってるのに、それでも週に2,3冊気になる本買ってるのですからイカンです。本の買い過ぎに反省。