酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

ある日テレビをつけてましたら

2008-09-22 09:51:15 | スコッチウィスキーの話
NHK「世界一周!地球に触れるエコ大紀行」をさり気に見ておりました。
想像できましたけれど、「アイラ島より、遥かに厳しい自然の様相」でした。
こんなにも厳しい地形で、厳しい自然環境に「スカイ島」が置かれているとは知りませんでした。
番組進行者が「地球の肌が剥き出しになっている」と表現しました、城壁のようにそびえる岸壁。果てしなくつづく、岩盤とわずかばかりの草原。そして、スコットランド特有の灰色の空。一番驚いたことは流れる川の色。茶色なのでした。
泥炭が溶けて川に流れ込んで、このような色になっているのでした。
「ピートがなければ、スコッチではない」と言う酒造りはおります。(実際ピートを焚かないのもございますし、「アイリッシュ」は基本的には使っておりません)
ですが、石炭のなりそこないを、有効的に使う事はむずかしいと聞きました。
やはりNHKの番組でしたが「スコッチの故郷 アイラ」という番組を見た事がございます。やはり、アイラ島の自然も紹介されておりましたが、「アイラ島」はまだやさしい顔をしていたように思います。
スコッチの蒸留所の名前をそのままシングルモルトのブランド名にしている話は以前に語りました。ハイランドの銘酒「ロイヤル・ロッホナガー」はゲール語で「岩の露出した湖」と言う意味ですが、スカイ島の観光名所には英語とゲール語でその案内が書かれております。これもまた、この土地の歴史を物語るものなのです。

このスカイ島には、唯一の蒸留所がございます。
「Talisker→タリスカー蒸留所」です。
一度、語っておりますが、スコッチの分類の中で、どちらかと言えば「アイラ島」の他は、「アイランズ」といったカテゴリーになります。が、一つとは言え、島々によって、その風味の個性は強いものがあるのでした。例えばアイラ島より北。「ジュラ島」で造られております「アイルオブジェラ」は、ほのかにフルーツの香がするような甘口が特徴ですし、「アラン」は1995年に復活を見た、「アラン島」のモルトです。このお酒も女性が好むような甘い香りが特徴です。
ですが、「タリスカー」は全く逆。「爆発しそうな香」と表現いたしましょうか。
本当は、「お酒には辛口も甘口もない」と持論しております酔漢ではございますがこの「タリスカー」は別。アイラモルトの特徴を「気の抜けたコーラにヨードチンキをたらしたような味」とお話しましたが、タリスカーは「ウィスキーに味塩コショウをふりかけたような味」といたしましょうか。(かなり誇張をさせております)ハードボイルド的なお酒です。水割りではなく、ニートで飲んでおります御仁を見かけられましたら間違いなくそいつは「のんべぇ」です。

テレビを見ております。スカイ島の全景が写されてました。港は小さく不便そうですし、交通手段も発達しているようでもありません。島自体は大きい(佐渡島のほぼ2倍の面積らしい)のですが、平地も少なく、急変する天候。
「ここでよくウィスキーを造っていられるな」というのが本音です。
やはり、中央から隠れて酒を作らざるを得なかった当時の背景があったのでした。
1644年、英国政府はこれまで余った農産物から作られていたウィスキーに突然過大な税金をかけます。「じょうだんでねぇべ」と酒つくりに従事していた農民は、あるものはスコットランドの山奥へ、あるものは、島々へ移り住み、密造を始めるのでした。タリスカーもその一つ。「『スカイ島』まで来たから大丈夫だべ」と独自の製法でモルトを造り始めたのでした。
番組では紹介されておりません。ですが、非常に気になりました。
「スカイ島最終話」島を尋ねておりますNHKのアナウンサーが、地元の女性と朝の散歩をいたしております。
「こんなの散歩じゃねぇ。登山だぁ」と言ってしまいました。「妖精の丘」への案内です。
「この辺の妖精ってっしゃ、悪さばかりするんだおん」と話しております。
「ストラスアイラ」(シーバスリーガルの核モルト。スペイサイドの逸品です)このウィスキーの仕込み水は、近くにございます「ブルームヒル池」のを使っております。この池の妖精は、「旅人をだまして池に引きずり込む」のだそうです。
こんな話も思い出しました。
日本の妖怪に通じる感覚だと考えましたし、道祖神的な発想と同じような気もいたします。アイルランドもクルド人文化ですが、多種多様の「トロール伝説」がございます。これは日本の大入道的なものと共通するように思えます。

番組の終わり近く、「ななかまど」の木を紹介する地元の女性。
「ななかまどの木は、厄除けの意味があんのっしゃ」と。
日本と同じだと思いました。風水では、玄関先へ植えられる木として知られております。地形、風土は違うのですが、どこかその自然感は、日本と共通しているところが多いような気がしました。とくに、ここ東北と。
スコットランドの人達の宮城語も様になってまいりました?
「スカイ島」は「SKY」ではございません「SKYE」なのです。これもゲール語の流れです。「鳥の翼の形をした島」という意味です。イングランドの人達はこの島を別名「ミスティ・アイランド」と呼んでおります。「霧が常に立ち込めていて島の形がよく見られない」という意味なのでした。

ブレンディッドの話をしていて、再びシングルモルトへ話題が移ったようでしょうが、この「タリスカー10年45.8度」は、ウィスキーへの調味料として使うと面白い。
刺激の少ないブレンディドウィスキー、例えば「オールド」とかに、少しだけこのタリスカーを入れてみますとね、程よい刺激臭が鼻につくようになります。
この味、結構いけます。(邪道は邪道なのですが)

番組をみて、「タリスカー蒸留所」の方が気になりました。
そして、実はもう一つNHKがらみで思い出した事がございます。
山崎務が主演をしてました城山三郎原作のNHKドラマ「ザ・商社」は「安宅産業」合併の背景をドラマ化したものですが、「タリスカー」の輸入元がこの「安宅産業」だったのでした。


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4 コメント

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僕のセーターはサイン入りのアランセーター (クロンシュタット)
2008-09-22 12:49:03
思い出しました。
私の大学の卒論はアィアランド=ゲールに関する内容でした。

アィアランドの歴史と地理には思い入れがたんまりあります。
ありすぎて、なかなかコメントに生かせませんでした。
丹治さんのドイッチェラントように、ダブリン「留学」も真剣に考えていた学生時代でした。

これからは、ちょくちょくアィアランドネタにも絡んでいきますね・・・
アイリッシュは (酔漢です)
2008-09-24 08:23:55
クロンシュタット様へ
スコットランドより早く、ウィスキー作りが始まった土地ですね。
最古の蒸留所が「ブッシュミルズ」です。
いろんな伝説が残る土地ですよね。
昨日 (ひー)
2008-09-24 22:19:39
覗いてましたが、コメ入れてませんでした。
酔漢さんのお陰で、酒を見る目が変わって来ましたよ。
その原点を考えてしまいます。
長い歴史を紐解くのが面白そうですね。
今の食品は (酔漢です )
2008-09-25 11:17:00
ひー様へ
今は顔の見えない食品がほとんどだと思うのです。
お酒は、日本酒にしても、作り手が伝わってくるのだと思いました。
ウィスキーの世界にはまりましたのが、やはり仙台文化・宮城文化のおかげだと思います。
ウィスキー消費量が全国一位の県。
呑んでおりまして「氏素性を知りたい」と思ったのが動機でした。
「唯梨庵」マスターも教えて下さったお一人です。就職して食品関係の職に就きましたが、お酒の担当として勉強しなければならない事も幸いいたしました。
もう少し、お酒を語ろうかと考えております。

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