月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

一年一度

2012年10月24日 21時03分17秒 | 仏々相念(住職日記)

ワシ、死ねんようになった・・・

 

お取り越しになるといろんなご門徒にお会いすることができます。

「御無沙汰していま~す!」って思わず出るほどお会いすることのない方・・・

「こちらこそ、すいません、ご無沙汰ばかりで・・・」って気の毒そうにお返事下さいます。

でも、こうやって一年に一度会えますもんね、有難いことです。

 

手には寺報「月のひびき」秋・冬号を携えてお参りしています。

年に三度の発行でありますが、手から手にお渡しできるのはこのご縁だけです。

後は、総代さんや世話役さん、郵便屋さんにお願いしていることです。

でも、これを手にして下さっていれば少しは近くなれているのかな~って思ったりもします。

気持ちほどの写真も掲載しているので、香りや空気みたいなものを感じてくださるかも・・・

 

「オバちゃん、ごめんね!あっちこっちで話していると遅くなってしまいました。」

待ってくれていたのでしょうね、お友達に電話している最中でした、「ご院さん、まだ来んのやけどどうしたんやろ・・・」って。

安心して満面の笑み。

「オバちゃん、月のひびきです。よかったら読んでくださ~い!。裏にも報恩講さんのご案内もしてありますのでお参り下さい!」

すぐに手に取りジッと一面を見ながら、「あ~、月のひびき・・・」

そう呟いたかと思うとおっしゃるのです、「ご住職さん、この日を待ちわびていました。お取り越しにはご縁につけるしご住職さんの顔が見れる!」

そう仰っていただきながらじ~っとこの顔を見て下さる。

いささか恥ずかしくなるほどに・・・

「こんな顔でよかったら、いつでも来ますからおっしゃってください!」

二コッと微笑んでくださいます。

呼吸器系を患っておられます。

二階にある仏間にお参りするのも一苦労。

でも、一緒にお礼について下さる姿は有難いです。

 

あるところでは・・・

「ご住職、孫ができてな~。もう可愛ゆうてたまらんかいな~!」

「え~、それはよかったですね!いつごろですか?」

「つい先日よ!息子も嫁も可愛いが、孫は別格やな~!」

そう仰るご主人の横で奥さんも身体を震わせながら喜んでおられました。

「ワシな~、死ねんようになったで!この子が学校に上がるまではって思うもんな~・・・そしたら結婚まで・・・」

こんなに思ってくださって幸せですね。

「でもご住職、タバコ止めないんですよ!孫が出来たら止めるって言ってたのに・・・」って奥さん。

「なかなか止めれませんよね~!死ねんと言いつつ・・・」

さあ、どちら取りますか・・・

タバコ止めても死ぬけど止めることで少しでも死ぬリスクが減って一日でも愛しい孫と一緒におれると思えば・・・

さあ、どうする・・・

 

また、あるところでは・・・

「ご院さん、息子の夢を見たんです。家に帰ってくる夢でした。

玄関にいる見慣れた格好の息子の手を握ると温かくて・・・

いつもグチグチ言いながらいる私を勇気づけようと思ったんでしょうか・・・

嬉しくて・・・もうグチグチいうの止めようと思います。」

年老いた母の眼から大きな涙が幾筋も流れ落ちます。

指で拭い、指で拭い・・・

生かさせてもらおうと微笑まれる。

なんと尊い姿なのだろう・・・

 

御開山親鸞聖人のご縁をいただきつつ尊いひと時をいただきました。

生の苦しみ・・・

老いの苦しみ・・・

病の苦しみ・・・

死の苦しみ・・・

 

今生にいのちいただいて「オギャ~」って宣言させていただいてからは逃れがたきしんどさを抱えつつ生き抜きます。

一人になればその寂しさに押しつぶされそうになる。

病になればその苦しさに押しつぶされそうになる。

苦しくてしんどくて・・・

その思いを抱え座るお内仏。

 

「大丈夫、ここいおるよ!一緒におるよ!」と親さま(阿弥陀さま)が御立ち向かい。

有難くて涙がこぼれます。

 

御開山・・・

あなたがご苦労してくださったお陰で今ここで安心して泣けます。

安心して苦しき人生を生かさせていただきます。

 

まだまだ始まったばかりのお取り越し、大切にご縁に会わせて頂こう!