◆生活環境に影響なし?
事故は当日午前9時半ごろ、JFE環境サービス㈱から委託を受けた防災会社の従業員2名が火災報知機の点検のため地下2階のごみピット排水貯留槽に入ろうとしたところ、折から発生した硫化水素を吸い込み、そこにうずくまったそうです。当該従業員2名は検査のため1名が1日検査入院し、もう1名は3日間入院しています。
JFE環境サービス側はまず排水貯留槽の扉を閉め、硫化水素の外部漏洩を防ぎました。事故の報告を受けた茨城県環境保全事業団(以下事業団)では施設の「維持管理マニュアル」により笠間警察署、笠間消防署、水戸労働基準監督署、笠間市、県および県北地方総合事務所の関係部署に連絡をとったといいます。
その後事故報告を受けた関係機関が続々とエコフロンティアかさまに集まり、事業団とJFE環境サービスから事情聴取、ならびに現場の状況確認を行なったところです。
笠間市の市民生活部環境保全課は次のような声明を出しています。
「今回の事故は安全に管理している場所で発生した事故でもあり、事業団及びJFE環境サービスでは今回の事故を受けて原因究明に当るとともに、作業マニュアルの見直し等を含め、事故再発防止に向けた対策を講ずべく作業を開始いたしました」。
7月4日に至り、事業団はやや詳しい事故の経緯を発表しています。前文には「なお施設外に硫化水素は漏れていませんので、生活環境への影響はありませんし、溶融炉の操業にも支障はありません」と、毎度おなじみのメッセージを入れていました。以下はその全文です。
◆マスコミは取り上げない
「N社(防災会社)が消防設備点検をを行なうにあたりJFE環境サービスのT氏は9時30分より少し前に地下2階に下り、ごみピット排水貯留槽入り口のドアを開けて内部の酸素濃度を測定、異常がないことを確認した。その後、つまり9時30分、火災検知器を検査しようとN社のA氏とB氏が地下2階の貯留槽室に下りていったが、先に入ったA氏がドア入り口付近で配管にもたれて膝をつき、うずくまった。B氏とJFE環境サービスのT氏は直ちにA氏を引き上げ、地下1階まで連れ出した。B氏も気分が悪くなったが、その後応援にきたJFE環境サービスのK氏とともに1階まで全員退避した。A氏とB氏ともぐったりしていたが意識はあり、歩行が出来たことから30分ほど風通しのよいところで休息させ、その後病院に向かった。JFE環境サービスの従業員が地下2階へ下り、硫化水素の漏出を防ぐため、ごみピット排水貯留槽の扉を閉じた」。
不思議なのは被災者が入院までする騒ぎになっているのに地元の新聞が一切これを取り上げていないことです。最近の新聞記者はすっかりサラリーマン化し、土、日、休日等の取材を嫌がります。しかし本年7月1日といえば平日の火曜日で、当然取材に支障はないはずなのに1紙も取り上げないということは「ふじみ湖問題」がすっかり風化してしまったということでしょうか。
笠間市の前市議会議員・佐宗裕子氏にその辺の経緯を含め、当日何が起きたのかを電話で聞いてみました。概要は以下のとおりです。
「本来あの部分(ピット排水関連設備)は強制換気している筈なのに、換気扇が目詰まりを起こして地下2階の排水貯留槽に硫化水素が滞留していたらしいのです。そこへ下請けの2人が火災報知器の点検に入ったとたんにヘナヘナと座り込んでしまった。したがって救急車を呼んで2人を運び出したために事故が公になってしまったのです。だけどどこの新聞もこれを取り上げた形跡はありません。彼らにとっては爆発とか火災があり、死人でも出なければ事件ではないということでしょう。少なくとも笠間には茨城新聞の支局があるのですが、前任の記者が住民寄りの記事を書きすぎたためどこかへ飛ばされ、後任は問題意識など殆どない若い人でした。そのあとリストラで、現在は支局には誰もいないのかな。ほかの三大紙もふじみ湖問題で大騒ぎしたのに、いまはすっかり関心をなくしてしまったようです」。
ちなみに硫化水素は空気より重く、下に滞留するのでA氏は最初から姿勢を低くして現場に入ったと思われます。
◆景勝ふじみ湖を潰して
ここで笠間市内有数の景勝地「ふじみ湖」を潰して埋立面積9.7ヘクタール、埋立容量240万立方メートルという日本最大の公共関与方式の管理型処分場ができた経緯を大学生のレポートなみにwikipediaから一部紹介させていただきます。
《湖ができたのは1986年頃。実質的には入会地であった村有林が町村合併の際に民間業者に払い下げられ、採石場となった。しかし湧水が激しく、採石場は放棄され、湖となった。周囲1キロ、水深39メートル。ふじみ湖という名称は、近隣にあった富士浅間神社より、地元の人が通称として名づけたもの。長期にわたって湖としてなじんできたことから、生態系が構成され、トンボなどの生息地として知られるようになった。
その後、産業廃棄物処分場「エコフロンティアかさま」の計画が持ち上がり、2002年10月1日に着工、埋め立てられて消滅した。なお、埋め立ておよび処分場建設については、湖という貴重な自然環境の保護という観点以外に、処分場という性質から地下水汚染をはじめとした環境汚染が懸念されることなどから付近住民の激しい反対・抗議活動が行われ、マスコミ(「噂の!東京マガジン」など)にも取り上げられた。2002年11月1日、ふじみ湖の埋め立ておよび処分場の建設に反対する周辺住民が中心となり結成した原告団が、水戸地方裁判所に対してエコフロンティアかさまの建設工事差し止めの仮処分の申し立てを行った。しかし2004年6月21日、原告団側の主張のほとんどは認められず、この仮処分申し立ては却下された(水戸地方裁判所 平成14年(ヨ)第181号 廃棄物最終処分場等建設差止仮処分命令申立事件)。そして2003年8月1日、エコフロンティアかさまは稼動を開始している》。
◆ごった煮のような廃棄物
この巨大処分場の北西部には前記のとおりJFEのシャフト型溶融炉(145t/日)が併設されました。硫化水素事件はそこで起こったのです。佐宗氏の話はさらにつづきます。
「本来ならごみピットの周りは陰圧(負圧)になっている筈だし、普段は鍵を掛けてあるのですが、その管理がかなりいい加減だったようです」。
行政がいったん民間業者(ここではJFE環境サービス)に運転を委託した場合、どうしても隅々まで目が届かず、責任感も薄くなるようです。ではなぜごみピット排水から硫化水素が発生したのか。現在も実態究明が行なわれているようですが、佐宗氏は次のように推測しています。
「例の鳥インフルエンザ騒ぎ(2005年12月9日、茨城県では新たにH5型の抗体陽性が確認された)の最中、茨城県内から集めた大量の卵や鶏の死骸をピットに投げ込んでいます。素人考えですが、入るのは乾いたごみばかりではありませんから、硫化水素発生の可能性は十分あったと思います」。
エコフロンティアかさまのシャフト炉が受け入れる廃棄物は(廃酸・廃アルカリ、爆発性・放射性物質等を除く)13種類の産廃と笠間市内から出る一廃及び特別管理廃棄物(産廃・一廃)など多岐にわたっています。 05年9月からは廃アスベストの溶融処理も請負っています。wikipediaでも「人為的な発生源には石油化学工場があり、また下水処理場、ごみ焼却施設などでも硫黄が嫌気性細菌によって還元され、硫化水素が生成される」とあるようにごみピット内は“ごった煮”状態ですから、いつ硫化水素が発生してもおかしくなかったといえるでしょう。
◆情報開示はしない
廃棄物処理技術が進化したということはそれに伴ってリスクも増えるということです。清掃工場は何が入ってくるかわからないという意味で化学工場と同等、もしくはそれ以上に潜在的危険の度合いが大きいということなのです。
では現在の状況はどうなっているのでしょうか。
去る25日(8月)、エコフロンティアかさまの篠崎克己副所長兼施設課長に電話を入れ、事実関係を聞いたところ、次のように答えました。
「硫化水素がどのような経緯と状況で発生したのかは目下調査中です。しかしそれがまとまってもあくまで内部資料ですから一般の方に公表する予定はありません」。
本気かよ!というところですが、それだけにこの問題は同施設にとっての大きなダメージになっていることを物語っているでしょう。
事故は当日午前9時半ごろ、JFE環境サービス㈱から委託を受けた防災会社の従業員2名が火災報知機の点検のため地下2階のごみピット排水貯留槽に入ろうとしたところ、折から発生した硫化水素を吸い込み、そこにうずくまったそうです。当該従業員2名は検査のため1名が1日検査入院し、もう1名は3日間入院しています。
JFE環境サービス側はまず排水貯留槽の扉を閉め、硫化水素の外部漏洩を防ぎました。事故の報告を受けた茨城県環境保全事業団(以下事業団)では施設の「維持管理マニュアル」により笠間警察署、笠間消防署、水戸労働基準監督署、笠間市、県および県北地方総合事務所の関係部署に連絡をとったといいます。
その後事故報告を受けた関係機関が続々とエコフロンティアかさまに集まり、事業団とJFE環境サービスから事情聴取、ならびに現場の状況確認を行なったところです。
笠間市の市民生活部環境保全課は次のような声明を出しています。
「今回の事故は安全に管理している場所で発生した事故でもあり、事業団及びJFE環境サービスでは今回の事故を受けて原因究明に当るとともに、作業マニュアルの見直し等を含め、事故再発防止に向けた対策を講ずべく作業を開始いたしました」。
7月4日に至り、事業団はやや詳しい事故の経緯を発表しています。前文には「なお施設外に硫化水素は漏れていませんので、生活環境への影響はありませんし、溶融炉の操業にも支障はありません」と、毎度おなじみのメッセージを入れていました。以下はその全文です。
◆マスコミは取り上げない
「N社(防災会社)が消防設備点検をを行なうにあたりJFE環境サービスのT氏は9時30分より少し前に地下2階に下り、ごみピット排水貯留槽入り口のドアを開けて内部の酸素濃度を測定、異常がないことを確認した。その後、つまり9時30分、火災検知器を検査しようとN社のA氏とB氏が地下2階の貯留槽室に下りていったが、先に入ったA氏がドア入り口付近で配管にもたれて膝をつき、うずくまった。B氏とJFE環境サービスのT氏は直ちにA氏を引き上げ、地下1階まで連れ出した。B氏も気分が悪くなったが、その後応援にきたJFE環境サービスのK氏とともに1階まで全員退避した。A氏とB氏ともぐったりしていたが意識はあり、歩行が出来たことから30分ほど風通しのよいところで休息させ、その後病院に向かった。JFE環境サービスの従業員が地下2階へ下り、硫化水素の漏出を防ぐため、ごみピット排水貯留槽の扉を閉じた」。
不思議なのは被災者が入院までする騒ぎになっているのに地元の新聞が一切これを取り上げていないことです。最近の新聞記者はすっかりサラリーマン化し、土、日、休日等の取材を嫌がります。しかし本年7月1日といえば平日の火曜日で、当然取材に支障はないはずなのに1紙も取り上げないということは「ふじみ湖問題」がすっかり風化してしまったということでしょうか。
笠間市の前市議会議員・佐宗裕子氏にその辺の経緯を含め、当日何が起きたのかを電話で聞いてみました。概要は以下のとおりです。
「本来あの部分(ピット排水関連設備)は強制換気している筈なのに、換気扇が目詰まりを起こして地下2階の排水貯留槽に硫化水素が滞留していたらしいのです。そこへ下請けの2人が火災報知器の点検に入ったとたんにヘナヘナと座り込んでしまった。したがって救急車を呼んで2人を運び出したために事故が公になってしまったのです。だけどどこの新聞もこれを取り上げた形跡はありません。彼らにとっては爆発とか火災があり、死人でも出なければ事件ではないということでしょう。少なくとも笠間には茨城新聞の支局があるのですが、前任の記者が住民寄りの記事を書きすぎたためどこかへ飛ばされ、後任は問題意識など殆どない若い人でした。そのあとリストラで、現在は支局には誰もいないのかな。ほかの三大紙もふじみ湖問題で大騒ぎしたのに、いまはすっかり関心をなくしてしまったようです」。
ちなみに硫化水素は空気より重く、下に滞留するのでA氏は最初から姿勢を低くして現場に入ったと思われます。
◆景勝ふじみ湖を潰して
ここで笠間市内有数の景勝地「ふじみ湖」を潰して埋立面積9.7ヘクタール、埋立容量240万立方メートルという日本最大の公共関与方式の管理型処分場ができた経緯を大学生のレポートなみにwikipediaから一部紹介させていただきます。
《湖ができたのは1986年頃。実質的には入会地であった村有林が町村合併の際に民間業者に払い下げられ、採石場となった。しかし湧水が激しく、採石場は放棄され、湖となった。周囲1キロ、水深39メートル。ふじみ湖という名称は、近隣にあった富士浅間神社より、地元の人が通称として名づけたもの。長期にわたって湖としてなじんできたことから、生態系が構成され、トンボなどの生息地として知られるようになった。
その後、産業廃棄物処分場「エコフロンティアかさま」の計画が持ち上がり、2002年10月1日に着工、埋め立てられて消滅した。なお、埋め立ておよび処分場建設については、湖という貴重な自然環境の保護という観点以外に、処分場という性質から地下水汚染をはじめとした環境汚染が懸念されることなどから付近住民の激しい反対・抗議活動が行われ、マスコミ(「噂の!東京マガジン」など)にも取り上げられた。2002年11月1日、ふじみ湖の埋め立ておよび処分場の建設に反対する周辺住民が中心となり結成した原告団が、水戸地方裁判所に対してエコフロンティアかさまの建設工事差し止めの仮処分の申し立てを行った。しかし2004年6月21日、原告団側の主張のほとんどは認められず、この仮処分申し立ては却下された(水戸地方裁判所 平成14年(ヨ)第181号 廃棄物最終処分場等建設差止仮処分命令申立事件)。そして2003年8月1日、エコフロンティアかさまは稼動を開始している》。
◆ごった煮のような廃棄物
この巨大処分場の北西部には前記のとおりJFEのシャフト型溶融炉(145t/日)が併設されました。硫化水素事件はそこで起こったのです。佐宗氏の話はさらにつづきます。
「本来ならごみピットの周りは陰圧(負圧)になっている筈だし、普段は鍵を掛けてあるのですが、その管理がかなりいい加減だったようです」。
行政がいったん民間業者(ここではJFE環境サービス)に運転を委託した場合、どうしても隅々まで目が届かず、責任感も薄くなるようです。ではなぜごみピット排水から硫化水素が発生したのか。現在も実態究明が行なわれているようですが、佐宗氏は次のように推測しています。
「例の鳥インフルエンザ騒ぎ(2005年12月9日、茨城県では新たにH5型の抗体陽性が確認された)の最中、茨城県内から集めた大量の卵や鶏の死骸をピットに投げ込んでいます。素人考えですが、入るのは乾いたごみばかりではありませんから、硫化水素発生の可能性は十分あったと思います」。
エコフロンティアかさまのシャフト炉が受け入れる廃棄物は(廃酸・廃アルカリ、爆発性・放射性物質等を除く)13種類の産廃と笠間市内から出る一廃及び特別管理廃棄物(産廃・一廃)など多岐にわたっています。 05年9月からは廃アスベストの溶融処理も請負っています。wikipediaでも「人為的な発生源には石油化学工場があり、また下水処理場、ごみ焼却施設などでも硫黄が嫌気性細菌によって還元され、硫化水素が生成される」とあるようにごみピット内は“ごった煮”状態ですから、いつ硫化水素が発生してもおかしくなかったといえるでしょう。
◆情報開示はしない
廃棄物処理技術が進化したということはそれに伴ってリスクも増えるということです。清掃工場は何が入ってくるかわからないという意味で化学工場と同等、もしくはそれ以上に潜在的危険の度合いが大きいということなのです。
では現在の状況はどうなっているのでしょうか。
去る25日(8月)、エコフロンティアかさまの篠崎克己副所長兼施設課長に電話を入れ、事実関係を聞いたところ、次のように答えました。
「硫化水素がどのような経緯と状況で発生したのかは目下調査中です。しかしそれがまとまってもあくまで内部資料ですから一般の方に公表する予定はありません」。
本気かよ!というところですが、それだけにこの問題は同施設にとっての大きなダメージになっていることを物語っているでしょう。