今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

中央アルプス・空木岳

2006年10月12日 | 山登りの記録 2006
平成18年10月9日(月)
空木岳2863.7m

夏山も秋山も少しも行けなくて10月になってしまった。3連休でも真ん中の日曜日は地元の運動会に来賓で喚ばれているのでダメ。でも、最後の体育の日はお天気が良ければ山に行けそうだ。台風崩れの猛烈な低気圧が関東南岸を通り抜けた。金曜は各地で大雨や大風の荒れた天気だったが、土曜は半分晴れ、運動会の日曜日は快晴ながら大風の日だった。そして、月曜日は風も収まり快晴で絶好の行楽日和とのこと…。この夏行きそびれていたアルプス方面に日帰りピストンをする事にした。

大荒れの天候で北アルプスでは初冠雪、猛烈な吹雪になって遭難が多発したようだ。北はダメでも南や中央なら大丈夫。今年の「アルプスピストン予定?」第一候補にしていた空木岳に行き先を決めて支度をした。

中央アルプスには登る機会が無く、昨年初めて登った。木曽駒・将棋頭山・茶臼山の日帰りピストンだったが、標高差の割には歩き易い登山道で思ったほどの事もなかった。でも、今回は違う…何しろこの三ヶ月の間たった1回しか山に登っていないのだ。身体がナマっているから、果たしてアルプス日帰りピストンなんて出来るのでしょうか?
空木岳に直接登るコースはしらび平ロープウェイの直ぐ隣、駒ヶ池の先から池山尾根を辿るものだ。池山登山口駐車場からの標高差は約1,500mでアルプスピストンとしてはそれ程きつい部類ではない、どちらかと言えば楽な方だ。しかし、ナマった身体には応えそうではあるが…。

運動会から帰ってきて昼寝をして鋭気を養い、午後6時に出発する。高速道路を通らないから随分時間が掛かりそうだ。連休の中日のせいか、夕方の道路は混んでいた。昨年中ア初見参の時と同じ、内山・麦草・杖突峠を越える「空いているけど山岳ドライブコース」から高遠・駒ヶ根と順調に来たが、さすがに一般道を250㌔で5時間を回った。駒ヶ根インターや駒ヶ岳ロープウェイの標識を探せばいいので、今回は迷わず駒ヶ池まで来られた。ここから林道に入る入り口がやや分かりづらかったが、なんとか池山口の駐車場まで上った。駐車場は3連休だからほぼ満車だが、数台は停めるスペースがあってどうにか車を隙間に入れた。

満天の星空で少し寒いくらい。駐車場に停めてある車はほとんどが空で、既に山に入っている様だ。3連休なのだし、日帰りする人はやはり少数派なのでしょう。アラームを4時半にセットしてシュラフにくるまって仮眠をした。夜中に到着した車の音や人の話し声がしたりで余りよく眠れなかった。

4時半にアラームで起きる。睡眠は充分ではないが、昨日昼寝したからそんなに眠くはない。パンを囓って支度をし、4時50分にヘッドランプを点けてまだ真っ暗な登山口から山に入る。
明るい月の夜だったから、ランプが照らす足元以外の周囲も結構見えている。30分もすると薄明るくなってきて、もうランプは要らなかった。公園の遊歩道のような階段状の緩いジグザグを終えると「鷹打ち場」のプレートを見て、更に緩く上った先が池山小屋分岐で水場があった。ここで水を補給。少し開けた笹原の向こうに池山小屋とおぼしき屋根が見えた。

すっかり明るくなった笹の下生えの道をしばらく登るとダケカンバの森になり、木の根が出て苔むした山の斜面をぐんぐん登る道になった。この斜面を登り切るとシラビソが出始め、「1970m・尻無」(sirinasiとローマ字でも書いてあったけど、尻無ってどういう意味なんでしょうか?)と書かれた真新しい木製標識がある小広場に着いた。この先は尾根に取り付くが、ヤセ尾根と崩壊地のトラヴァースが続く「小地獄」「大地獄」となる。注意看板が沢山目に付いた。この辺りの木々は紅葉しているが、まだ少し盛りには早い感じ。
ということで、お腹も少し空いたので小休止。登り始めて1時間20分、ナマった身体と思ったが、これまでの所では順調で特に問題なし。きつい登りも無いから当たり前かな?気持ちよく澄んだ快晴で、少し陽射しが暑く感じる。樹林越しに真下の伊那盆地の町並を挟んでシルエットになった南アルプスの連山が高くくっきりと見えていた。湿度が低いのでクリアな視界。今日は大展望が期待できそうだ。

小休止の後、このコースの難所という崩壊地と痩せた尾根を行く。スチール製のはしご段やワイヤーロープ・木製の階段等、充分すぎる程整備されているから危険は全くないが、下を見ると落っこちたらおしまいになりそうな所が続いて気は抜けない。樹間から木曽駒が姿を見せる、正確に言えば伊那前岳と宝剣岳の山並みだが、地元ではこれらの総称を駒ヶ岳(西駒)としているようだ。宝剣岳は至近距離から撮影された姿を良く見るが、こうして遠くから見ると大きな山に生えた小さな岩の突起だった。
難所?を過ぎると南に赤椰岳が高く見えはじめる。この先もしばらくは尾根を進むがなかなかコメツガの樹林帯を抜け出せない。

マセナギノ頭を巻いて見晴らしの良い尾根になり、絡み気味に高度を上げて行く。残るは標高差600m程だ。この辺りで上から降りてくる人たちとすれ違いはじめるようになる。頂上に着くまでに50人程がすれ違った(20人程の団体も含め)。連休の最終日はほとんどの人が下山日のようだ。『頂上に着いたら人が一杯』は無さそうでほっとする。これまでの所、早朝に出発先行した人を2,3人追い抜いてきたが、今日登る人はやはりあまり多くないようだった。辿っている尾根は次第に広まり、空木岳避難小屋がある空木平と駒石がある尾根コースの分岐点に8時40分に着いた。もうここからはハイマツに覆われた空木岳が大きく仰がれる様になった。

分岐から駒石コースの尾根を進む。森林限界を間もなく抜け、周囲に大展望が広がってきた。背後には伊那谷を挟んだ南アルプスが北の鋸岳から南の光岳・深南部に至るまでくっきりとパノラマで、地図ソフト「カシミール」で作成したカシバード画像そのままの現実には見えそうもない様な眺めがあった。八ヶ岳やその向こうの浅間山まで霞一つ無く見えている。行く手に花崗岩の目立つオブジェ「駒石」が近づいてくるが、この辺りに来て大分疲れてきたのと、高度障害が出ているのかペースはぐんと落ちてきた。早朝から登ってきてこの日初めて後発の若者に抜かれた。競争をしている訳ではないが、最近のブランクと体力の低下を実感。

駒石は近くで見上げると、高さ6m程の方形の花崗岩を幾つか抱き合わせた様な突起物だ。行き過ぎて振り返ると合掌する観音様の手のような格好に見えた。抜いていった若者は余裕で駒石のてっぺんに上って、降りてくると再び抜かれてしまった。ヤレヤレ。

駒石から更にペースダウンし、少し進んでは呼吸を整えながら登る始末。駒峰ヒュッテに着くまでの間にも降りてくる人に沢山すれ違う。駒峰ヒュッテの脇を通り抜け、いよいよ最後の100mということだが、これが長くてなかなかそこに見えている頂上に着かない。木曽駒ヶ岳から空木岳に続く主稜線はほぼ同じ高さになっている。

9時50分に空木岳山頂着、山頂まで5時間掛かってしまった。最軽量に努めた装備と軽い靴にして、通常のコースタイムより若干早い?程度。やっぱりナマっているようだ。
空木岳山頂にこの時いた人は10人くらい、1時間の帯頂時間中に入れ替わった人が20人くらいでしょうか。三連休の最終日は百名山クラスの山でも静かな方だった。花崗岩の砂礫がこんもりと小山を作った三角点標石付近より、少し北に花崗岩が積み重なった辺りの方が少し高かった。花崗岩の日陰には氷が厚く固まっていた。ハイマツのある辺りにもエビのしっぽが崩れたと思われる氷のかけらが冷蔵庫の製氷器で作った氷をばらまいた様だ。

 展望は言うまでもなく、360度の大パノラマで山頂に着いて初めて見えた西側には雪を被った御嶽が近く、遠くに乗鞍や北アルプスが真っ白だった。御嶽の遙か向こうにこれも白い白山があった。木曽谷を挟んだ向こうの山並みは未知の山々で名前も判らなかったが、頂上にいるほとんどの人が関西弁で西に遠く見える山々の同定ににぎやかだった。あれは伊吹だとか言って遙か遠くに見える尖った山を指していた。でも、ここから一番の見応えは直ぐ南の南駒ヶ岳だろう。鋭い襞の切れ込みを見せてなかなか立派な山容だ。その向こうに遠く恵那山が、これはぼくでも直ぐ分かる特徴のある形の山だった。
 空木岳は中央アルプス高峰群のほぼ中央にある。この上ない展望台で飽きるほど展望を楽しんだ。

 恒例のカップ蕎麦や、お菓子を食べて少し眠いぽかぽか陽気の山頂だった。昨日からいる人に拠れば、昨日は強風で山頂は休んでいられる様な状態ではなかったと言うこと…そうでしょうね。でも、いつも人がいる方が珍しい山行ばかりのぼくには、こういうメジャーな山は何となく落ち着かないのだった。これでも随分人が少ない方なんだろうが…。

 11時丁度に山頂を降りた。下りも長いし、何より車でのアプローチに6時間近くも掛かるのだから…そんなに長く山頂にはいられない。帰りは空木平に降りてこざっぱりした避難小屋を覗き、坦々と下った。2,000m付近の紅葉がきれいだが色は今ひとつ。朝から見つけたキノコもベニテングタケとか夏のキノコばかりで、全体にはまだ初秋の山の雰囲気だから季節の移ろいも少し遅れ気味なのだろう。

 下りでも登ってくる人にすれ違うが、それはもうほんのわずかなものだった。危なっかしいヤセ尾根から深いコメツガの樹林帯に降りた辺りで上を見上げると、ほんの5,6㍍上に真っ黒い動物が動いている。またクマか…と、一瞬身構えたが、それは随分と黒い毛をしたオスのカモシカだった。目と目が合ったが、カモシカはこちらには関心が無いようだった。熊鈴をちんちん鳴らしてきたが、その音にも反応しない。人間なんか眼中にない?といった雰囲気で孤高な彼は悠然と笹の葉を食べているのであった。カモシカに出会った直ぐ下でホンドリスがぼくの目の前を横切っていった。ふさふさした尾が印象的だ。振り返って一瞬こちらに視線を向けると飛ぶように森の奥に消えた。一人で山に登ると野生動物に会うなあ。こういう出合なら大歓迎だけどね。この日は車で帰る道中でも、麦草峠で大きなホンドシカやキツネの姿を見た。

 2時には下れると思ったのは甘過ぎで、下りも4時間たっぷり掛かってしまった。最後は脚が上がらないくらい疲れた。ああ、やっぱり体力落ちてる、脚力も…。2時45分駐車場に到着。ちょっと暑いくらいの陽射しだった。

 帰りは高遠の「さくらの湯」で汗を流し、茅野で早い夕食を取り、特に渋滞もなくほぼ順調に走った。それでも家に到着したのは夜の9時を過ぎてしまった。ブランクの後にいきなりアルプス日帰りピストンは少しきつかった。おかげで脚は筋肉痛がひどく3日経った今でもまだ痛いのでした。凹むなあ…。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿