今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・北八ッ 茶臼山・縞枯山

2006年08月24日 | 山登りの記録 2006
平成18年8月20日(日)
(茶臼山2,384m 縞枯山2,403m)

 今年の夏は天候不順に加え、公私ともに忙しくて子供を連れて恒例のアルプス登山もできない。というか、この2ヶ月近く山に行けないでいる。梅雨明けが遅れた事と、相変わらずの天候不順。晴れれば猛暑と台風の連続。休みの日がうまくこの不安定なお天気と合わずに長いブランクになってしまった。

 もう夏山はおしまいかな。しばらく登ってないから、身体もなまってしまったようだ。ようやく20日に、日帰りだけど山に行けそうになった。脚がなまっているから軽い山、でも、この猛暑だから標高が低いと暑くてかなわない…。そんなところを巧くカヴァーできる所と言えば、八ヶ岳方面かな?北八ッで未登の所があった。麦草峠と北横岳の間、茶臼山と縞枯山にはまだ登ったことが無い。
 陸上の関東大会に出てから、受験生のくせにまだ気持の切り替えが付かないで家でごろごろしている長男に渇を入れてやろう?と思って山に誘ったら、すごく嬉しそうな様子。ったくもう。

 前夜発で麦草峠の駐車場に0時半に着いた。快晴で満天の星空。天の川が大きく頭上を限っていた。駐車場には4台ほどの車があったが、お盆休み直後の週末だから、案外山は静かなようだった。シュラフにくるまって車中で仮眠した。

 5時半に起きると気持ちの良い青空が広がり、すぐそこに茶臼山が丸い姿で見えた。朝食を済ませ、山支度をしている疎らな登山者を後に6時に駐車場を出発した。長男は久々の山登りで楽しそう…キミは受験生なんだけどね。
 麦草ヒュッテと向かい合わせた国道の入り口から登山道に入った。すぐに右手にきたならしい水たまり、「茶水池」という看板がある。成るほど、茶色の水が少しあって、周囲に木道があった。

 シラビソの森に入っていくと、特有の樹脂の香がして山に来た気分が満ちてきた。晴れてはいるが、佐久方面からガスが峠を乗り越えてきて、周囲は霧に包まれてしまう。まあ、山頂は晴れているだろうから、展望が無いという心配はないだろう。濡れて滑りやすい丸くなった石の上を伝うように緩い登りが続いていた。シラビソは以前向かいの丸山・中山方面に登ったときと同じで余り太いものは見あたらない。今登っている茶臼山の向こうの縞枯山は縞枯現象で有名な山だ、帯状に世代交代しているシラビソが特有の縞模様を作っている。言うまでもなく、こういう現象が見られるということは巨木には成り得ない条件がここに存在すると言うことに他ならない。

 樹林帯の、いかにも「北八ッ」らしい苔のカーペットに覆われた樹床にはギンリョウソウや夏のキノコ・テングタケなどが見られた。ゴロゴロした溶岩の上に薄く堆積している土にシラビソは生えている。だから、必要にして充分な栄養を根から得られず。台風などの強風時にはしっかり根が張れない森林だから、根こそぎ倒される事も多い。決して強い樹でないシラビソは、みんなでスクラムを組んで生きているのだ。大木になれないうちに世代交代していく、縞枯はそれを象徴している。

 少し登ったら岩ゴロのでっぱりに着いた。「中小場」と書かれた標柱が立っている。丁度この辺りは茶臼山と丸山の間、麦草峠を最低とする大きな鞍部の一部なので佐久方面から乗り越えてくる白い霧の通り道になっていた。長男と2人、立ったまま少し休んだ(呼吸を整えた)。まだ、登り始めてから30分も経たないが久しぶりの山登りだから息が切れてしまった。ここからは傾斜もきつくなって一直線に登り、6時55分に樹林に囲まれた茶臼山山頂に着いた。

 茶臼山の山頂には三角点も無く、山名の書かれた標柱があるだけ。その山名も薄れて読めなかった。指道標の指すまま、展望台と書かれた踏み跡を進むと西側がぱっと開けて素晴らしい眺めが広がった。茅野の街を下に遠く見て、八ヶ岳の裾野が広がっている。南に南八ッの峰々、赤岳を中心にして硫黄岳と阿弥陀岳、手前に天狗岳の双耳峰・中山と丸山がくっきりシルエットになって浮かび上がり。その右手に南アルプスの甲斐駒・仙丈ヶ岳と北岳、遠くに中央アルプスの連嶺、北に目を転じて御嶽山に乗鞍岳、そして穂高を始めとする北アルプスの山々が薄っすらと見えた。素晴らしいパノラマだった。西側は快晴だが、反対側は雲に包まれていてその雲の端切れがガスになり、少しずつこちらに乗り越えてくる。赤い火山性のレキが広がる露岩の上に腰掛けて、しばらくは2人でこの大展望を楽しんだ。

 隣の縞枯山は、ここからは独立した山というようには感じない樹林の塊だった。成るほど、ちゃんと名前の通り枯れたシラビソが帯のように繋がって縞模様を作っている。お菓子を食べながら、その縞や向こうの北横岳と重なって境界がはっきりしない蓼科山方面の丸い山並みを眺めた。それらはびっしりと樹林に覆われていた。多分、ここが今日一番の展望台だから、大して登らなかったのだけど少しゆっくりすることにした。

 7時43分に茶臼山を後にして縞枯山との鞍部に一旦下り、再び直登すると今度は頂上の手前に展望台への分岐があった。茶臼山も縞枯山も頂上からの眺めはないが、頂上部に見晴らしの良い展望台があった。ここは巨岩が積み重なり突起になっていた。3人ほど先着の人が居たが、日曜としては大変静かな山だ。一番高いところの岩に真鍮製の丸い四等三角点のプレートが埋めこまれていた。ここのものは標石ではなかった。

 やはり大して歩いていないが、またここで小休止。今日は休んでばかり。その上休むたびに食べてばかりだ。茶臼山展望台ほどの眺めはもうここには無かった。少しずつ霧が広がって、眺めは隠され気味になっている。15分ほど休んで分岐に戻り、そこから樹林を少しで弓の手状の頂上部になった。周囲は枯れたシラビソが墓標のようだった。8時34分に縞枯山の山頂着。疎らな樹林と枯れ木に囲まれて展望は良くなかった。ここが今日の最高地点。2,402mの山の上は、しかし何だか蒸し暑くて風もなく木陰もないので憩える場所ではなかった。

 うろうろと休むのに適当な場所を見つけてみたが無駄だった。どこも陽が当たって木陰は無い。長男も山頂名の標柱の脇に座って「暑いね…」と言った。2,400mの山の上とは思えないほど風もなく蒸し暑いのだ。何だか日本中亜熱帯かと思う昨今の気候の変化は標高の高いところでも同じ様だ。涼を求めれば、更に高い山に登らなくてはダメなのでしょうか?今朝、車の外に出たときは半袖では寒いと思ったのだが、日中陽が当たると下界の蒸し暑さがここまで上ってくるようだ。降りた下界の暑さに思いやられる。

 余り長居は出来そうもない。もとより展望も良くない縞枯山の山頂を8時49分に下る。雨池峠までは急な上に丸い石が滑り歩きにくかった。下の方で沢山の人の声が聞こえるようになる。ピラタスロープウェイに乗ってやってきた観光客がこの下には沢山いるようだった。
 雨池峠に降り立つとそこは観光地の人混みだった。肩掛けのバッグにスニーカーといった家族連れ等が山支度をしているぼくたちを奇異な目で見ていた。山に来てまで人混みには閉口なので、ちょっとついでに登ろうかと思った雨池山はパスして早々に雨池方面に下った。峠から少しばかり進めば、もうそこは静寂の北八ッの森だ。ひと下りで林道に降り立ち、標識に従って林道を麦草峠方面に向かう。

 林道とはいっても、もう車が走るのは困難な道だった。雨池に下る入り口から更に緩い下りをしばらくで、9時45分に北八ッの数ある池の中では最も秘境ムードの漂う雨池に着いた。白駒池に次ぐ大きな池で、湖といった雰囲気だが、人の気配も疎らで観光地になっている白駒池とは対照的だった。ほんの少し余計に歩かなくてはならないだけで、こうも違うのだ。

 雨池の北端まで半周して露岩が庭園の様に配置された所に荷を置いた。長男は静まりかえっている雨池が気に入った様だった。「ここで、ゆっくりしようよ」と言った。陽射しは少し暑かったが、リンドウの花が半開になってそこかしこにあるこの休み場は、本当に静かだった。11時半にここを出発するまでの1時間半の間、通過した人はわずかに5人だった。
 トンボが沢山飛んでいたが、鳥の鳴き声もあまりしない静まりかえった池の畔でお菓子やカップソバなど食べて長男と2人ぼんやりしていた。何もしないでこういう空間に居るのは何よりの贅沢なんだろうな。

 長居をした雨池からまた林道まで登り、麦草峠までは思いの外長い登りだった。樹林帯は信じられないくらい蒸し暑くて、汗びっしょりになった。
 麦草峠の駐車場は車で一杯だった。これだけの車で来た人たちが山に入っているのに、ぼく達が今日歩いたコースは雨池峠の部分を除けば静寂そのものだった。お昼を少し回った程度で終わった軽いハイキングだったが、ぼくも長男も充分満足。でも、少し歩き足りなかったかもね…。車で少し先の白駒池有料駐車場には車が更に一杯。観光地の人混みだ。

 佐久に降りるとにわか雨が降っていた。車から外に出たら、ここはまだ標高700mくらいの所なのに信じがたいほどの暑さだった。佐久穂町のスーパーでおみやげに地元のお菓子や蕎麦を買い、長男と2人アイスクリームで涼を取る。甘党の親子はいつもこんな風に山登りの後はアイスクリームを食べるのが習慣?なのでした。
 帰りは「荒船の湯」で汗を流し、道路は時間が早かったからか、がらがらで夕方5時には家に着いてしまった。

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