Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「分水工を探る」其の6

2009-12-26 22:42:35 | 分水工を探る

西天竜の「分水工を探る」其の5より

 ■羽北3号

  羽北2号分水工の南60メートルほどのところにあるのが羽北3号分水工である。その5でも紹介したように羽北2号が国道153号線の西側地域を灌漑するいっぽう、国道153号線の東側を灌漑するのが本分水工である。真っ直ぐ東に下って行くと中央自動車道の伊北インターチェンジに突き当たる。もちろん西天竜幹線水路が完成した昭和3年にこのような施設があったわけではない。完成後半世紀近くたってこのインターは完成している。その後インター周辺が工場団地や宅地化されたことは言うまでもなく、この分水工が灌漑していた水田地帯は、現在では見る影もないということだろう。しかし、そうした工場や住宅の間に、かろうじて水田が点在している。東進した水路が国道153号線のインター入口交差点を横断すると二手に分かれる。主は南に分水しガソリンスタンドの下を潜ると工場内を東へ幾筋も分水しながら南進していく。分水工のあるのは辰野町地籍であるが、かんがいしているのは箕輪町沢地籍である。この一帯がインターによって様変わりしたように、農地は点在しているものの農業振興地域からははずされている。

  『西天竜史』によれば灌漑面積は26.2ヘクタールと記載されている。半減どころか数ヘクタール程度しか現在は水田がないのかもしれない。

 

 この分水工の現在を眺めると、不思議な点が浮かぶ。いつもの通り図の上がほぼ西で幹線水路がある側になる。平面図から解るように西側に15個の堰、東側に11個の堰があるのだが、西側に分水された水の行き場がない。そもそもこの分水工は分水工とは言うものの分水工にあらず、前述したように箕輪町沢地籍までは灌漑することなく流下していく。したがって隔壁は必要ないわけなのになぜ2方向に分水されているのかということは大変不思議なことなのである。分水されても水の行き場がなければ元に戻ってくるのだろうが、どういう意味で、あるいはどう現在利用されているのかについては地元の方に聞いてみないと解らない。どちらの側水路にも底に穴が開いていてこれが何か理由があるのだろうかなどと思うがどうも判然としない。西側に分水した水の逃げ場として底に穴が開いているのかもしれない。いずれにしても建設当初は何らかの意図があったものと思われる。

  堰の窓はすべて同じ大きさで幅15センチ、高さ40センチのものである。円筒壁厚は12センチあって天端が両側に3センチずつ張り出す装飾が施されている。東側については堰天端図に示したように下部に張り出しが付いている。装飾のようにも見えるが、後に劣化によって補強したようにも見える。本分水工はかなり劣化しており、西天竜幹線水路にある円筒分水工の中でももっとも痛みの激しい施設の一つである。痛みの激しいということもあるのだろうが、計測も部位によってまちまちで計測値は参考程度である。


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