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「分水工を探る」其の17

2014-09-02 23:48:16 | 分水工を探る

「分水工を探る」其の16より

  ■竜西一貫水路16号分水工

 

 

 前回の竜西一貫水路10号分水工から下流へ2.5キロ。一級河川土曽川から350メートルほどのところにある小さな川(新土川)の左岸側の端にこの16号分水工がある。前回も触れたように、円筒分水専門家である「おざすきぃ」さんのホームページでは、「竜西一貫水路にここだけ円筒分水が存在する」と記されていた分水工は、前回紹介した10号分水工てある。しかし、この16号分水工も円筒分水工と言ってよいだろう。図を見ての通り、幹線水路から横引きされたヒューム管の先に止水するためのゲートが設けられているが、その先は円形の水槽に下向きで流出されている。まさに円筒の中に下向きに吐き出された水は、底板に反射して上へとわき上がる。そしてここでは堰窓の開口で分水されるのではなく、オープンな越流堰で2方向に分水される。約8分の1が地区内への直接水路に、そして残りの8分の7は右側にある新土川へと放流される。

 前回の10号分水工も多くの水は河川へ放流されていたわけであるが、実は竜西一貫水路の分水のほとんどは河川に放流されている。したがって40箇所ほどある分水工のほとんどが河川の脇に設置されているという特徴がある。ようは河川の水量が少ないために天竜川の水を取水して延々と導水しているわけで、河川の補給水のような形式で位置づけられているといえる。したがって利用者にとっては、そのほとんどを川から取水しているため、この一貫水路へ依存しているという意識が低いとも言えそうだ。とくに建設当時にくらべると組合員も世代交代を続け、なおさらその意識が低下する傾向のようだ。基本的には西天竜と用水路建設の意図は同じなのであるが、西天竜は竜西のように河川に放流する分水工は皆無である。支線水路もすべて西天竜土地改良区が管理していることからもそれは解る。複雑に分水する水を公平に分配するためにも、西天竜には多くの円筒分水が仕組まれたわけなのだ。いっぽう竜西は基本的に河川に水を落としているため、幹線水路から分水した水を再び公平に分配しなくてはならないという必要性がそれほどなかったというわけだ。故に円筒分水のような分水工はあまり作られなかった。


 ところでこの分水工、これから先も継続されるかはなんとも微妙である。実はこの分水工のすぐ南側をリニアが通る。通るだけならどうということはないが、長野県駅の建設地に隣接する。もっと言うと、おそらく竜西一貫水路とリニアは高さ的にも交差する位置にあり、この分水工の山側にはJR飯田線が走っている。飯田線に新駅を設置するとなると、このあたりも影響しそうだ。ということで、リニアの建設とともに、本水路も改修されることになりそうだからだ。

続く


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